大東京計画


うーしししし! 遂に時代があのときの我々に追い付いてきたのだ! 生きてて良かったぜ! ギャオース!

ヒートアイランド現象というものがあるのはご存知であろう. 東京はエネルギー消費が集中しているうえに, アスファルトやコンクリの地面も多いので, 周囲の地域よりも気温が高いのである. これは住んでる人間にはたまらんので, 余計にエアコンなんかを使い, その結果, ますます エネルギー消費は集中するという, まさに画に描いたような悪循環な 状況を指す.

あれは今から 10年以上まえのことじゃ. わしと石川とチヒロの 3人は ゴッサマー設計団 というアホな軍団を結成し, あちこちの設計競技(コンペともいう) に応募しては落選したり入選したりしておった.

作品が出来たときには, 「もう, これを超えるアイデアは 絶対無いね!こいつは絶対 1位確定だね! あー, 賞金の 200万円を何に使おうかねえ」 などと3日徹夜の惚けた頭で考えていたものだが, 入選したのは一回きりで, しかも賞金に絡んだことは一度も無い. (笑)

今回の話は, 賞金がかかったコンペではなく, 東大の学園祭で, 建築学科が都内の他の大学の建築学科に募集した, 東京の未来に関するコンペにわしらが東工大代表として出した, 作品の紹介である. 当時の写真なども資料で残っているのだが, スキャンするのも面倒なので, 文章だけですまんのう.

ちなにみ, 当時のわしらの頭の中の組成を簡単に述べると,

「エロティシズム」のバタイユ 30%
「速度と政治」のヴィリリオ 45%
トロツキー 25%
その他シュルレアリスム 15%

というような状況であり, 簡単に言えばアホ, カッコつけて言えば デコンストラクション ないしは ポストモダン だった. (笑) あー, そこの方. 割合を足し算しても無駄ですよ.

ただし, ここで気を付けてほしいのは, わしらはポストモダンにハマっていたのではないということだ. わしらがポストモダンだったのである. わしらは, 偉大なるモダニズムへの敬意を一瞬たりとも 忘れたことは無い. 一例を挙げれば, ウチの自宅の電話は B&O の Beocom であり, 石川に至っては, 自宅にコルビジェの寝椅子と画を所持している程である.

さて, そういうおかしな奴が自由が丘の「パスキー」で, あるいは 3日徹夜の頭でうだうだ言ってれば, しょうもないことを思い付くものだ.

東京と言えば過密. 首都移転を含めた 分散化が東京の都市計画方面で話題にならぬことはない. というより, 東京の都市計画を考えるならば, もう, それ以外の問題の切口は存在しないとさえ言えるだろう.

しかし, そこでわしらは, かならずしも過密を否定的に評価する必要は無いことに気づいたのである. それどころか, 過密は, もしそれを極限まで到達させるならば, 東京を一個の詩にまで還元しうることに気づいたのである.

計画はこうだ. まず, 現時点で, 広い面積に分散している東京の諸機能, 諸施設, 居住区, パワープラント, 生産設備, 流通, その他いろいろを, 直径 3km のシリンダに詰め込む.

わしらは理系のくせに計算が馬鹿だったので, 直径 3kmのシリンダに詰め込んで, 高さがどれくらいになるのかは, 計算しなかった. なんとなく, 画的にサマになる 1km 前後の高さということにしたのである. 直径 3km は, 首都高の環状線というか皇居というか, そこらへんを 基準にしたとおもう.

当然, シリンダの周囲は, 居住禁止区域である.

中心には原発だ(笑). その真上, つまり, バウムクーヘンみたいに真中に冷却シャフトがある. また, シリンダの屋上(?)は, 空調その他の放熱設備で埋め尽くされる.

シリンダの周壁を第二山の手線が走行する. 勿論, リニアだ.

集積回路でも, 回路の長さを短くすると電気の伝わるのが速いので, 何か知らんが具合が良いと聞いたが(本当に情報科学専攻か?>俺), それと同じで, 小さい空間に諸々の機能が詰め込まれた結果, 集積化された東京は, 生産, 物流, 消費, 全てにおいて, 凄まじい生産性を発揮するようになる.

その結果, エネルギー消費はさらに高まる.

僅かな範囲で集中して消費されるエネルギーは, 最終的に全て, 熱として大気に放出される. 中心のシャフトから, あるいは, 屋上の 放熱設備から, 日々大量の熱が大気中に放熱されるであろう.

狭い範囲に集中的に放出される大量の熱は, 強烈な上昇気流を ひき起こすであろう. こうして, 東京シリンダ上空には成層圏まで達する巨大な積乱雲が 発生するのである.

当然, 毎日, 午後にはスコールがある. シリンダの周囲には熱帯雨林が誕生し, コケとシダの密林となる. 上空に積乱雲を戴く巨大なシリンダと, その周囲に繁茂する 雲霧林. ギアナ高地のロライマ山がそのまま都市になったと考えて戴きたい. これが大東京計画の完成である.

プレゼンテーションは, 段ボールの表面の紙を不規則にムシ って中の芯を部分的に露出させたうえにタミヤの金色を塗ると 何やら「火の 7日間で巨大産業文明が滅んでから 1000年」 みたいな感じになるのを チヒロが発見し, そうして作り上げた台紙の上に 3人でロットリングによるハッチングやら鉛筆デッサンやら コラージュやらで, モノを作って載せた.

主宰者側の反応は, どうだったっけ? 忘れたよ.




なんでも, 近年では, ヒートアイランド現象のため, 東京では, 週末よりも平日に午後の雷雨及び集中豪雨が多いのだそうだ.


これはゴッサマー設計団の活動の, 氷山の一角にすぎないことは 言うまでもないだろう. 他の活動に関しては, またそのうち, ここに書くこともあるかもしれないな. それから, 当該結社の活動の終息は確認されていない.

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