アポロ13


おおおおお! 忘れとった. LC2000 で喋り始めるときの挨拶に, 「みなさん, 今日が何の日か知ってますか?」とかいおうと思ってたのだった. なんてこった. すっかり舞い上がってた証拠だね. それで, 4/18 は何の日かというと, アポロ 13号が無事に戻って来た日なのだ. なんとめでたい日付であろうか!

その様子が映画になっていて, 数年まえに公開されたことがあった. コンピュータが TK80 みたいな感じのインターフェース(というのも 憚られる仕様)だったころのはなしで, unix も C 言語も 存在すらしていなかった時代である. 管制センタで軌道計算の検算を計算尺でやってるシーンがある. たまんねえぜ. hp の, ポーランド記法で入力できる関数電卓とかね. そういう, 理系の必須アイテムがありましたっけ. グっと来ませんか? モノによってはコンピュータを使うよりも人が手で積分した方が速かったり したんだろうな. 古来から, 優秀な物理学者, 数学者には暗算の名手が多いからのう.

つうか, 検算ですよ, キーワードは. 検算. 計算ってのは間違えるもん なんすよ. とにかくあの時代の材料と装備で, よく月まで行って帰って来たよな. 「昔むかし, 船が木で, 男が鉄で, プログラムがマシン語でできていた時代の ことじゃ. . . 」って奴ですね.

だから, 4/18 は俺の定めた祝日になっている. みんなも, 4/18 には 「apollo 13」をビデオでみて, それからお祝いをしよう. そうそう, 「apollo13」 は映画だが, NASA のビデオ「宇宙へのフロンティア」 には, 一部 13号のドキュメンタリー映像があるぞ. CO2 フィルタの形が違うんでアダプタを自作するところだ.

この, 「宇宙へのフロンティア」が, ロケット打ち上げまでのところが 最高にカッコイイのだ. ケネディの「We choose to go to the moon」から 始まるんだ. たまらんよ. いやー. やっぱアメリカはすげえわ. このビデオ, 音楽は ブライアン イーノで, ロケットが宇宙に出てからはかなり眠いぞ(笑).

研究の応用に拘る奴等に呪いあれ

うーし. 久々に吠えるぞー. オラー!!

基礎研究をやっていて, しばしばひとに聞かれることに, 「そういうのって, いつか役に立つ時が来るんでしょうね」とか, 「何かの役に立つのでしょうか?」とかいう質問がある. あるいは, 「どういうことに応用できるのか?」みたいな 疑問をね.

火星の大気の組成を調べる研究とか, 他の恒星に惑星があるかどうか 捜す研究とか, 数理システムが矛盾をひき起こさないかどうかの 研究とか, まあ, いろいろありますがな. 金の儲かりそうもない研究が.

そういう研究で何か儲かったり便利になったりすることは, 基本的に, 無い. しかし, 「だから, そういう研究は無駄だ」と思っている奴はアホである. 「いや, そういう研究も, いつか役に立つ時代が来る」とか思っている奴も 残念ながら, 劣るとも優らないと言わざるをえない.

基礎研究は, 役に立つのだ! しかも研究成果それ自体が速攻で即座に直接に 役に立つのだ. 本当だぞ. 役に立つとはどういうことか?それは, 人間の欲求を満たすということであろう. 金が欲しいやつの欲求を満たす, 儲かるアイデアは役に立ち, 速く移動したい奴の 欲求を満たす速度と安全を両立させる技術は役に立つ. そして基礎研究は知識欲. すなわち, 「知りたい」という欲求を満たす. しかも直接にな. これが唯一の成果であり, また, 動機である. まあそりゃいつか商売人や役人の役に立つこともあるかもしれないが, そんなの 知るかよ.

そもそも, 知りたいと思わないか? プログラム一般が停止するかどうかを 判断できるようなプログラムが書けるかどうか, とか, 与えられたタイルの組み合わせで平面を埋め尽くすことができるかどうかを 判断するプログラムが書けるかどうか, とか, 一種類を並べて「くりかえし」のない平面タイル貼りしかできないようなタイルは 存在するか? (*) とか, 宇宙がどうやってできたか?とか, 究極の物質は何か?とか. そういう疑問の答えを知りたくない?

知りたいから研究するのじゃ. 知りたいことがわかるようになるなんて, むちゃむちゃ役に立ってるやんけ. こんな単純な動機/利益も判らねえ馬鹿は散れ. 基礎研究の報告で, いちいち「考えられる応用」みたいな欄を埋めさせるんじゃねえよ. 散れ散れッ!失せろ!ケッ.

そうだなー. 単に知りたい知識を獲得する, というだけでは, じつは 研究の価値を計るのに不十分なんだよね. どういうことかというと, 芸能人をデバカメしてるのと, フェルマーの定理に挑むのは, やっぱり同じ価値があるとは 見なされにくい, という現実がある. やってることが難しくないと, ダメなんだよね. 尊敬されないのだな. 面白いだけじゃあダメなのさ. そのあたりに, 若干いやらしいところがあったりもするのだよね. むー.


(*) プログラム一般が停止するかどうかを判断するプログラムは存在しない. これは Kurt Goedel あるいは Alan Turing の業績である. 同様の理由により, 与えられたタイルの組み合わせで平面をタイル貼りできるかどうかを 判断するプログラムも存在しない. Berger, R., 1964. この証明のなかで, Turing の証明をタイル貼りの問題に応用する手法は見事.

一種類を並べて「くりかえし」のない平面タイル貼りしかできないようなタイルは 存在するか?という問題は 2000年の今も Open Question のままである. 数学にはまだまだシンプルで困難な未解決問題があるのだ.

2個で繰り返しの無いタイル貼りになるタイルの組み合わせは Penrose, R. により 1974年に発見された. これに関しては, X Window Sytem が動く環境があれば, xlock あるいは xscreensaver で実物が見れるぞ. そのものズバリ 「penrose」というのがソレだ. ところで, あるタイル貼りに「繰り返し」が無いというのを どうやって証明すればいい? なんせ平面は無限だからなー.

おもしろいべ?知りたくなるでしょ? こういう問題の答えが わかるようになりたいでしょ? わかったら嬉しいでしょ? え?全然興味無いから, どーでもいい? → ガックリ.


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