乗鞍〜


報復とカウンターテロ

対テロリズム活動ってのは, その基本になるのは 「暴力と恐怖よりも秩序と話合い」 みたいなコンセプトである. 無論, 言っても解らない奴は射殺したりすることもあるわけでしょうが, それはテロリストの方が軍事組織に近い体裁, 装備, 作戦を使うから, 対応する側も軍隊にソレ用の部門を作ったりすることになるわけで, 空挺部隊に市街戦の訓練を施すことが対テロリズムの全てではない. その基本には, 民主主義に対する正確な理解と信頼があるわけです.

テロへの報復ってのは要するに yet another テロで, 全然対テロじゃない. アメリカもそのへんは判っているようなのだが, どうしても 復讐と対テロの区別がつけられないらしい. そのへんが, アメリカ政府の振舞を見てると面白い.

報復のための軍事行動がどうしたとか, そういう話が盛んに報道されているが, 俺としてはタリバーンとアメリカは 勝手に月でもどこでも行って戦争やってて欲しい感じだ.

自衛隊の後方シエンがモゲ, とか, まじで謎. つうか, 「これ, 武器入ってる?」とかいちいち訊いてから運ぶのか? そんな奴が来ても, マジで邪魔でウザいすぎ. つうか, ダサいから絶対, そういうのはやってほしくないが, あの旧軍にしてこの不始末ってことか.

乗鞍

北アルプス南部を自転車でうろうろしてきた. 一泊二日の行程.

初日は 松本 > 乗鞍 > 平湯温泉 (泊)

松本は 600m で乗鞍は 2700m だから初日の獲得標高差が 2100m であり, これはわしの長い探検歴の中でも自力で登る最大標高差だ. コースは夏に乗鞍で行なわれるレースと同じコースをとったので, せっかくだから, ってことでスタート地点からゴールまでのタイムを 測ってみた. わしのタイムは 1h 28m であり, いくら全行程自走してきて ツーリングの荷物を持っており, 途中で写真を撮りながら走ったといっても, やっぱ全然遅いっす. ガックリ. たとえ, 写真を全然撮らなかったとしても, 5分くらいしか変わんないだろ. ここのコースレコードは 55分らしい. すごすぎ.

てっぺんは岐阜県と長野県の県境. 山小屋が何軒かあり, 駐車場などもあって, けっこう開けた観光地. すぐ近くにコロナ観測所などもある. 出発地点 (1300m) は晴れていたが山は雲の中で, 2000m から 2500m まではガスの中だったのだが, 山頂付近は晴れていて 途中から観測所も良く見えた. 風もあまりなくて, 森林限界から上も快適だった.

ゴールしてから, 「はー. やれやれ」って感じで 手を放して乗ってたら, 排水溝にかけてあるスノコの隙間に落ちて ホイールを壊した. 前輪は全損で, 自力走行不可能になってしまったが, おそるべきことにチューブラータイヤはそれでもパンクしないのであった.

ま, 諦めるのはまだ早い. どうせ後続は1時間くらい登って来ないだろうから, じっくり直してやれ, ってことで, 前輪の空気を抜き, 変形したリム周辺のスポークも抜いて, 曲がったリムを石でドツいて直す.

なんとかブレーキアーチをホイールが通るようになり, 自力で走れるくらいには回復した. なんせ, これから山を降りなきゃいけないわけですから, 無理はできないわけですが.

清水は随分登りも速くなったなあ, と思ってたら, なんてこった. 先に妻が登って来た.

二人とも高度の影響をモロに受けている. 妻は咳が止まらない. 清水は運動能力の低下に加え, ギア比の選択もまずかったので自転車に乗れず, 押して上がって来た. 二人とも長袖を着ている. 普段標高 0m で暮らしている人間が, 激しい運動をしながら全行程の高度を自力で稼ぐというのは, もっとも高度の影響が現われやすい形態なので, たかが 2700m でもこのような結果になったようだ.

この二人に比べると, 半分のタイムで半袖ジャージのまま登って来た俺には 全く何も起きなかったかのように見えるが, 実はそうではない. 高度の影響は運動能力だけでなく, 判断力などの精神面にも現われる. ほら, 手放し運転で車輪壊した馬鹿がここに居ますね.

調べてなかったので知らなかったのだが, 乗鞍スカイラインは自転車通行禁止で, 山頂から平湯温泉に行くにはぐるーっとまわりみちをして 安房峠を通らないといけないことが発覚し, それもウザいので, 通行禁止を無視して突入.

素晴らしい日没の風景を写真にとりつつズバーっと下る. 雲海に白山や穂高連峰が浮かび, 久々に見る天上界の景色である. むう. たまにはこういう景色もみないと人生やってられませんよ.

調子良く下ってたら, 下から道路パトロールの黄色いライトバンが 警告灯を点けてやってきた. ヘッドライトを点滅させながら, こっちに向かって来て停車させようとするが, もう, こうなったらチギって降りるしかないっす.

しかし, 後続は捕まってしまったらしい. カーブの石垣の陰で待っていたが, ちっとも降りて来ないので, しょうがないから登り返した. 3人で登ってたら, 後ろからダンプがやってきて, それに妻が乗っていた. 「荷台に自転車を積め」ということになり, 3人まとめて下界まで 連行してくれるというじゃありませんか.

ダンプに乗って下山. 平湯峠から温泉街までは自力走行したが, 完全に日が暮れていて, 夜間走行の準備はゼロだったので(馬鹿だ), 闇夜のダウンヒルとなった. 俺は夜中でも眼が見えるが, 妻は全然見えないので, 一緒に下った.

宿に 7時ちょっと前に到着. 体力的にも疲れたが, ホイールを破損したり, 連行されたりで心理的に非常に疲れた一日だった. あと, 清水の寝言(うなる)とイビキ(次々と違った音を出す)と歯軋りが 凄すぎ.

次の日の行程は安房峠 > 上高地 > 松本 > 自宅

安房峠の登りは 500m くらいで, 昨日に比べたら無いのと同じだ. 朝から快晴で, 峠から穂高が良く見える. わーい. やっとまともな下りが楽しめるぞ!

大型二輪と下りでバトルじゃ! 舗装が非常に荒れているコーナーで思いきりブレーキかけたら, その加速と振動で水筒がボトルケージからびよーんと発射され, 前方に飛び出して地面に落ちて蓋が開き, 中の水が全部出てしまった. 笑. 当然, バトルも敗北である. こういう雪の多い道の舗装の荒れ方は, 東京近辺の 山道からするとほとんど考えられない必殺さ.

158号から別れて釜トンネルを登り, 上高地へ向かう. 釜トンネルを自転車で通るのは初めてだが, かなりの傾斜だ. 今回のツーリングで一番の傾斜のような気がした. 上高地はものすごい人と車で, なんつうか, 天気は良かったが, イマイチだった. 自転車で散策してみるが, 全面的にダートなんでスピードも出ず, 前輪がぶっ壊れそうであんまり楽しめなかった. 川には20cm以上のイワナがたくさんいて, カゲロウに向かってジャンプしていた.

158号は道幅も狭く, トンネルばっかりで疲れるから, 帰りはバスで帰ろうってことになった. 新島々(しんしましま)までバスで行き, そこからも松本電鉄で松本へ. 市街でソバ食って, おみやげのお菓子を買って, 清水は浅間温泉に行き, わしらはあずさで帰宅.

穂高見たら, 久々に登りたくなった. 俺は極端な前傾壁なんか全然興味は無いが, キレイにつっ立っている壁や峰は登ってみたい. そういうので, 日本で手頃に行けるのは, このへんだろう.

2001/09/24

今日はユキリンで後輪を修理. 前輪があれだけ損傷したんだから, 後輪だって無事なわけが無く, ヘコんでおる. 後ろのリムはトンカチで丁寧に叩いて, 元からある縦ぶれくらいの 狂いまでなんとか直した. 前輪のリムはパァ. これはもう使えません. 捨て.

タイヤより寿命の短かったリムってのもせつなすぎる存在だ. ブレーキ当たり面のアルマイトすら全部残っており, まるきり新品. 悲しい.

いやー. なんか今回は集中力に欠けるというか, ボケてるというか, 全般的にそういう感じで何かやりそうだな, とは思ってたんだけどね. まさか, また自転車壊すとわね. 社長も 「おまえくらいしょっちゅうホイール壊す奴も居ないね」

2001/09/25

全般的に言って, そもそもの間違いは久々に中部山岳地区に行くってことで, 自分を基準に計画を作ってしまったことにある. 例えば, 初日の行程 80km の走行時間を平均時速 20kmで見積もってたし, 通行どめはブッチし, 無理そうなら薮こいで突破じゃ, と思ってたし, 他にもいろいろと.

下界で体力があっても, 登ってみないと実際のところが判らないというのが 高い山の面白いところなのだが, それが今回も当てはまった. 下界で激しい運動をして息が苦しくなり運動能力が低下するのと, 高いところで息が苦しくなって運動能力が低下するのは全然別の生理現象 なのだ. たとえば, 下界で坂道ダッシュを 10 本やっても血中酸素濃度が低下する なんてことはありえないが, 高いところに登れば何もしなくても低下する. 酸素分圧が減るからだ. 下界で強いからといって, 上でも強いとは限らないという事情は このへんに理由がある.

ここらへんを判ってトレーニングしてる奴が, 乗鞍の自転車レース参加者に どれくらい居るだろうか? もしそれが少なければ, 俺にもこのレースで結果を出すチャンスがあるかも しれない.

2001/09/26

登山家は「日本にゃロクな山が無い」と言うこともあるが, 飛騨山脈なんて, 自転車で走る分にはけっこう腹一杯だと俺は思ったよ. ツール=ド=フランスにも 2700m の峠なんか出て来ないように思う. ちょっとヨーロッパの地図を見てみよう. まず, モンブラン山群だ.

む. モンブラン山頂って如実にフランス領なのな. イタリア国境は東のガケだよ. このへんで峠といったら, col du seigne か. これはすごいね. 2516m あるぞ. でもよくみたら未舗装というか, これは登山道だね. 自転車じゃあ通れません. その南に petit st. Bernard 峠がある. これは車も通れる道で, 2188m. ちょうど麦草峠くらいだね.

次は Matterhorn 近辺.

ここは全面的に アイスアックスとクランポンとクライミングロープが必要な地域ですな. 人間が普通に歩いて通れる峠すら無いよ. なんとなく, いつも日本で使っている 1/25000 スケールのを買ったんだけど, もうすこしでかいスケールのも買っておけばよかったな. 街すら載ってない. つうか, ヨーロッパの地図とかいって, これしか持ってないっていうことが 発覚してますね? 笑.

とにかくだ. 日本の山には氷河もなければ標高も 4000m 以下でデカい壁も無い. ヒマラヤはおろか, ヨーロッパアルプスに比べても全然ヘボい. もっとも, 森や沢は日本の山の方がずっと良いけどな. それに比べて山岳の道はヨーロッパにも負けないくらい充実してるってことだ. 環境で既に勝負にならない日本のクライマーに比べて, 自転車の方がまだ恵まれていると言えよう.

いま, 穂高の 1/25000 図と見比べているが, そのサイズと傾斜の違いは 圧倒的だ. 傾斜もサイズも倍くらい違う.

そんな当り前のことより, 面白い事に今気づいたぞ. 日本の地図は岩場の表現が貧弱で「ここに岩場がある」 ということしかわからんのだ. スイスの地図は等高線とハッチングを組み合わせて, 岩場からなる地形がとても見やすい. フランスのは印刷がだいぶプアだが, 岩場の地形も表現しようという 意気込みはあり, あるていど成功している. しかし, 例えば穂高滝谷なんか見ても, ごちゃごちゃと 等高線, 岩場記号, 砂場記号, 崖記号が入り組んでるだけで, 情報量ゼロだ. ある地点が出っぱってるのかヘコんでるのかすら判らん. 実質, 空白地帯である.

俺は国土地理院には常々敬意を払ってやまず, 探検に持って行くのはそこらへんの出版社から出てる 登山地図ではなく必ず 1/25000 地形図を選ぶのである. 道の無いところを歩く, コンパスがちゃんと使える奴には結局, これが一番使いやすいからね. しかし, 岩場だけはダメだ. 国土地理院の地形図は, 岩場に来るとどこに居るのか判らなくなってしまうのだ. 今, その理由が判ったよ. 要するに, 「そこが岩場である」ということ以外, 何も描いてないのだから判らなくなるのは当然だ.

岩場の表現方法は, 是非改善していただきたい.


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