結局、妻にクリスマスプレゼントとして買ってもらった。
これ。
ミリタリほげとか書いてあるが、本当は全然軍用ではない。 多少活動的な、一般民間人向けの製品である。 しかもわりと地味な目立たない顔です(顔が緑じゃなくて黒い方)。
要求項目はだいたい達成しております。
オッサン時計っぽい金属のバンドは、 ゴム素材で水は吸わないが革風というよくわかんねぇベルトに交換した。 おお。えらい落ち着いて高そうな感じになったがな。 swatch と並べてみる。こっちが2万円で swatch 5000円だったら、 2万円は安いね。全然強そうですげぇ高級品って感じです。わーい。
しかもストップヲチつきですよ。 ヲタク用語でいえば、クロノグラフってやつですよ。文字盤に chronographって筆記体で偉そうに書いてありますね。 あとTITANIUMってこちらは大文字で書いてあります。 その下には 200Mともあります。 何が200Mなんじゃろ、とおもったら 20 気圧防水のことなのでした。 すげぇぜ。20気圧防水ですよ。マジっすか。 20気圧かけたら俺様の脳殻なんかヌっ壊れちゃいますよ。 こう、スペックが顔に書いてあるというのは、 むかしの日本車に 5speed DOHC Turboとか書いてあったのと同じですかね。
おっと烈しく脱線した。そう。 chronograph の話でした。 こいつストップヲチにもなるんですな。意外と便利です。 スパゲティ茹でるのに使えます。 しかも針方式のストップヲチって針の動きが面白いよ。 ストップヲチをリセットすると、長い針(ストップヲチの秒針)と、60分計のちっこい針が ツイーっと0位置まで回ってきます。 思わず用もないのに動かしてしまいます。 わはは。 若干レイ〜ジマツモトなちっこい3個のメータは、12h位置のが ストップヲチの60分計。9h位置は時計の秒針。 6h位置のはアラーム時刻表示だがほとんど無用の存在である。 こいつはGMT表示とか 24h計にすりゃいいのにな。これ設計したやつ馬鹿だ。
父親の時分、すなわち俺がガキの頃は、 水晶時計などなかった。だから、父親は機械式のをずっと使っていた。 俺同様コレクターではなく、一個買って来たら、それをずっと使ってた。 しかし、時々新しいのを買ってきた。 理由は風呂場で落すからである。 風呂場で落すと、もう調子は元には戻らないのである。 振り子がチコチコ動いて動作するんだから、 当り前である。 するとしばらくの間は猛烈に不機嫌で、俺は絶対近付かないように心がけたものだ。
新しいのを買うと、調子おかしいのは俺にくれるわけで、 それをバラして遊ぶのは楽しみだった。 といっても、道具が無いのでうまく分解はできなかったが。
クロノメータ検定がどうのこうのとか言ってたような気もする。 当時は機械式時計の精度が日本の時計メーカによって極限までつきつめられた時代であり、 秒間10振動なんていうアホみたいなムーブメントが一般ピープル向けの時計に 搭載されていて一日一秒とかいう、今のダメなクヲーツよりも優れた精度を 出したりしていたのである。
citizen の耐衝撃というのも買って来たが、やっぱりこれも脱衣場で落して壊してた。 「くっそー、耐衝撃のくせに!」とかいって憤ってたのを思い出す。
次に買って来たのが seiko の水晶時計である。極初期の製品であり、 まだクヲーツの水晶マークも存在しなかった時期のやつだ。
いままで見たなかでも最もデカくブ厚く、裏に電池用のフタが別についていた。 電池は直列で2個使用するのだった。 そう。当時のクヲーツはユーザが勝手に中をあけて電池交換できた。 「銀電池だ」と父は得意気に言った。 直列2個で、電池は一年しかもたないのである。
外装も凝っており、極めて正確かつ美しく研磨された、特別な時計であった。 秒針の動きも、今のクヲーツと違って、seiko の誇る秒間10振動、ハイビートキャリバーの 動作を模した、細かい動きであった。 「こいつはな、中に水晶が入っててな。一秒間になんと 8000回も振動してるんだ。」 とか説明してくれたのをよくおぼえている。 多分、価格もキョーレツに高かったと思われる。
一日経った朝の時報と時計が寸分違わず動いているのを確認して 「やっほーい」って感じだったのもよく憶えている。 リュウズは4h位置についていて、 押し込んだ通常位置で本体ケースとツライチになる作りだった。 つまり、「本製品はほとんどリュウズを引っ張りだしたり操作する必要はありませんので、 本体に埋め込んでしまいますよ。悪しからず。」 という精巧舎の強烈なる自負が意匠として表現されておるのである。
しかしながら、こいつもやはり、他の時計と同じ運命を辿った。 すなわち風呂場で落して合わなくなった。 小学校高学年になり、中学受験の塾に行くようになると、 俺も時計を買ってもらった。 機械式のやつである。 ところが、これがどうも動きがいまいち信用できない。 そこで、調子がおかしくなったこのクヲーツの時計をお下がりに貰って それを使った。
当時はクヲーツも徐々に普及しはじめ、動作も一秒運針になっており、 液晶のデジタル時計などもでまわるようになっていた。 その中にあって、 俺のハイビートなクヲーツは、その法外なブ厚さと共にかつての前衛の迫力を漂わせつつ、 間延びした時間を刻んでいた。 まぁ、アレだ。 俺も一秒運針の正確な水晶時計が欲しかったもんさ。 だって駅の時刻表みてギリギリだったとしても、 自分の時計が正しいかどうかわかんねぇから、 待ってれば来るのか、それとも電車が行ってしまったのか判らんのですよ。
父がスペック追求的に時計を買ったのはその前衛クヲーツが最後だったと思う。 いくら良いのを買ってもすぐ壊すんで、 アホくさくなったのかもしれん。俺も同じですね。 もっとも壊さないが、なくすわけですがね。
また事故りましたよ。 アホですよ。 路側の車ドメにつっこんで自爆。 フレーム死亡。
念のため申し添えますと、人間は無事。