いじくり系 (2004/01/13)


物慾系

と、借りに呼んでおこう。

世間には様々な遊びが存在するが、それらのうち、 所有する事に重点が置かれているタイプの遊びの事である。 どうもそういうのは俺はピンと来ない。

無論、コレクションというものも、モノによっては、 これは大変なノウハウと努力無くしては 達成されない広く深く高度な遊びなのである。 それは判るが、そもそも世の中、俺がそこまでしてして欲しいと思うような物がない、 というのが理由であろう。

最近、ずっと使ってた時計が壊れてイロイロ探してるうちに、 時計趣味に一瞬めざめ、 あっちこっちウロついてみた。 しかしこりゃすげぇ値段ついてますね。大変ですよ。こんなもの集めてると。 メンコやビンのフタとはわけがちがいます。

しかし、時計に関して言えば、 物慾ということ以外にモノがメカだけにそっち方面の遊び方も実は存在する。 これはなかなか楽しいですよ。メカいじり。

時計の機械は、普通の人間がいじくれる、ギリギリのサイズと複雑さである。 おそらく、経験的にこの機能と精度とサイズに収まって来たのであろう。 そこに時計いじりの難しさと面白さがある。 俺はシロートで設備も道具もないから、まさに、極限の視力と集中力と記憶力が必要だ。 懐中時計あたりとは、部品の寸法が違うので、裸眼ではかなり厳しい。 プロは立体視できる低倍率の顕微鏡や、マブタでくわえこむタイプの ルーペを使うが、さすがにそんなもん持ってないし、買う予定も無いからな。

ということで、先日3000円で買ったスヲチのメカに挑んでみた。

いや、最初は分解するつもりはなかったのであります。 なんせ、俺もアホですが、一見しただけでそれくらい判りますよ。 こんなの分解したら後戻りできん、ということくらいはね。 ただ、文字盤が何時か判らない上にガラがダサいのが我慢ならねぇので、 なんとかならないかなぁと思った訳ですよ。

  1. 裏フタをあける。精密ドライバをフタのすき間に突っ込んでこじれば簡単に開く。
  2. さて、メカをケースから抜くにはリュウズを抜かねばならない。 しかしやりかたが判らん。 「機械式 時計 分解」で検索してみたら、 昔の機械はリュウズを止めてるネジと押え板を外したりするらしい。 俺の swatch の機械の型番は ETA の 2842 というやつである。 けっこう最近の機械なので、そんなネジは無い。
  3. よくみると、リュウズの軸の横に、なんかメンテナンス用っぽい穴があいてて その中に小さいボタン状のデッパリがある。 これでピンと来なきゃよっぽど鈍い。果たしてそれをピンで押しつつリュウズを引っ張ると スルリと抜ける。
  4. キカイをケースに固定しているのはネジではなく、なんつうか、 ツメの噛み合わせによるハメコミである。open → とか書いてある。 機械全体をその矢印にしたがって左に回してみたら、あっけなくポコリとケースから 抜けた。わはは。なんて簡単なんだ。さすがに合理的な構造である。
  5. 針をとっぱらって、文字盤を取り外す。 普通は文字盤が無いとケースの深さと中身の厚さが合わなくなるものだが、 こいつはそういう設計ではなく文字盤がポコっとはまってるだけなので、 このウザい糞ったれは廃棄。
  6. さて、それじゃ針をとりつけて箱に入れよう。 こいつはカレンダーがあるのでデタラメに針をつけるとおかしなところで 日付が変わって具合が悪い。 一時的にリューズをつけて、時刻合わせの位置まで引っ張ってグリグリまわし、 日付が変わるところが午前0時ってことで合わせる。
  7. さて、リューズを抜き、箱に入れましょう。簡単です。右に回せばいいんです。
  8. 箱に収まったら、次はリューズを差し込んで、と。アレ?

ガーン!入りません!やっちまったぜ!コンニャロ。くそくそくそ!

とやってたら、うまく入りました。やったぜ。 そいじゃ時刻合わすか… ガーン!リューズが引けません!断固として出て来ません。 本格的にやっちまったらしい。アホだ…

時計の部品ってどれも意外と頑丈みたいで、 鉄の部品もみんなちゃんと焼きが入ってるらしく、 多少無茶しても簡単には壊れません。いじくってても、 部品をぶっこわした感覚はない。 どうも部品の収まりが悪いだけみたいだ。 正しく配列して組み立てれば直るとみた。 これはやるしかないか。

つまり、このあたりをぶっ壊してしまったというわけです。 今回いじくった ETA 2842 には自動巻きと日付がついているので、 これより若干複雑な作りになっておる。

  1. 再びリューズを抜き、ケースから取り出す。
  2. リューズ周りはクラッチ機構がある。すなわち、引っ張り方によって ギアがあっちに噛み合わさったりこっちに噛み合わさったりするわけだ。 しかしながら今厳しいのは、マトモに動くサンプルが無い というところである。 ブっこわれてるのをいじくって仕組みを掴み、正常に動くように組み立てねばならない。 これは辛い。 できるのか? しかし、時刻が合わせられない時計なんて全然使い物になりませんがな。
  3. カレンダーホイールがそのメカ部分を隠しててよく見えないので、 これを取り外す。カレンダーホイールの案内を止めてるネジを抜き、 ラチェットのスプリングをピンセットで押し込みつつホイールを外す。
  4. リューズのシャフトは角棒。それに角穴のギアが通っている。 ギアは軸方向にスライド可能だ。こいつがあっち行ったりこっち行ったりして クラッチになっている模様。
  5. メンテ用の穴ポッチは、どうもリューズのシャフトの押えだけでなく、 シャフトと噛み合ってリューズを引いた時に動くレバーの支点を兼ねているようだ。 このレバーの動きがクラッチ用ギアに伝達されて、ギアを切替えているのであろう。
  6. 各種レバーの正しい配置が判らないので、レバーを押え、かつ、クリックポジションも 作っていると思われる複雑な形状の板バネを外す。 日付修正歯車や、時刻修正歯車への伝達も取り外した。 これで各種レバーが動くようになった。
  7. リューズを入れてみて、動かしてみる。押えが無いのでなんか動きがおかしいが、 なんとなく仕組みが判って来た。レバーを、リューズを一番押し込んだ 通常の使用状態のポジションに組み立てて、細心の注意を払って そのポジションがおかしくならないようにしながら、ヘンテコな板バネを取り付ける。
  8. 時刻修正輪列に繋がる歯車と、日付修正歯車を取り付け、 カレンダーホイールガイドを、ラチェットスプリングを押し込みつつ載せる。
  9. カレンダーホイールガイドを取り付ける。このガイドは日付修正歯車の押えも兼ねている。
  10. リューズを取り付ける。

リューズの3つのクリックポジションは回復した。つまり、通常使用、 日付修正、時刻修正である。さて、機能はどうかな。 日付修正は、動くぞ。よし。 お約束とはいうものの、時刻修正がおかしいです。 通常使用ポジションではゼンマイ巻き上げも可能なはずだが、 これもクラッチが噛まず、巻けなくなってる。ガーン。何かがおかしい。

再びカレンダーホイールを取り外す。 ラチェットスプリングを押し込みつつ付けたり外したりが しんどい。くっそー。

時刻修正は、どうも歯車の押えがおかしいみたいだ。 そのせいで、日付送り付近でトルクが必要になったときに クラッチが滑べっているのである。 どうも、カレンダーホイールガイドは、日付修正歯車だけでなく、 時刻修正歯車の押えも兼ねているらしいが、 この配置がおかしかったのが原因である。 これを直すと時刻修正は正常に機能するようになった。

しかし、ゼンマイの巻き上げだけはおかしいままだ。 まぁ自動巻きだし、そこは諦めるかな、とも思ったが、どうせならちゃんと直そう。 と思い、再びカレンダーホイールを外してリューズ周りを分解。 ゼンマイ巻き上げ歯車と、リューズのシャフトの間はラチェット歯車によるクラッチなのだが、 この間の噛み合わせが悪い。 この二つの歯車は、リューズを押し込んだポジションで押しつけあっていなければ ならないはずで、そのためのバネがどっかにあるはずだ。

しかし、見当たらん。とにかくこの周辺は各種レバーとへんな形の 押えバネが錯綜しておりどれがどの役割なのかを完全に把握するのは至難だ。 クラッチ役であるリュウズシャフト上をスライドする歯車を、スライドさせているレバー、 こいつがリューズを押し込んだポジションでゼンマイ巻き上げ系に しっかり噛み合わさってりゃ問題無いんだが…

むむ。実はこの変な形の押えバネ、反対側のこのシッポがソレじゃねぇのか? と気づいて、レバーとバネをちゃんと並べてネジを締め直す。 完璧です。リューズの引出し量に合わせて、スライドギアが正確に動きます。 これで動かなきゃ俺は知らん。

  1. リューズの通常使用ポジションに相当するレバー配置にして組み立て。
  2. レバーに再び各種歯車をつけて、カレンダーホイールを取り付ける
  3. カレンダーホイールガイドを取り付ける。位置に注意。
  4. 針を取り付ける。12時丁度に日付が変わるようにな。
  5. 箱に入れる。
  6. リューズを取り付ける。慎重にな。
  7. 動作確認。完璧です。

面白かったが疲れた。そうそう、 カレンダーは、23時59分くらいに日付が変わるように調整してやった。 日付の切り替わりは、午前0時に近ければ近い程、気分が良い。 それに、 中と半端な時刻に日付が変わっててウロタエることもないってわけだ。 この日付送り機構も、なかなかスルドい工夫がしてあって面白い。 アナログ時計のカレンダーは、翌日の日付が半分くらい窓から顔出してる時間帯があるが、 それができるだけ短くなるように工夫されているのだ。 文字盤が消滅してその仕組みが動作しているところが見えるので、これがけっこう面白い。

自動巻き swatch に関する詳細な考察

その後

ついでに、レギュレータをイジくってみたり。 しかしこりゃ辛いな。 部品小さすぎ。我慢ならねぇ。 しかも愛用の拡大鏡がどっかいっちゃって見当たらないから裸眼で調整だ。 眼が潰れそうだ。

むー。限界じゃ。

そうだ。双眼鏡を反対から見ると、ルーペになるぞ。これだ。これしかない。 おお。デカい。よく見える。 やはりレンズの力は偉大だ。当り前か。

ストップウォッチがあるので、これで1時間毎に具合を見ながら調整。 姿勢差は面倒なので無視。 とりあえず +10秒/日 くらいまできた。 これ以上は、レギュレータをちょっとだけ動かすための道具というか仕組みを用意しないと無理。 かつて、機械式時計で精度を追求していた時代には、そういう仕組みを内臓したものも あったらしい。

その後見てると、姿勢差がかなりある様子だ。上で紹介した timezone.com の記事を見た限りでは このキカイはあんまり気合い入れて調整しても無駄みたいだから、このへんで諦める事にする。 携帯で一日あたり +20から+10 くらいかのう。

散歩

1/13は、敬老の日だってゆうじゃありませんか。

知らんかった。

そこで、妻と小径車で散歩である。エビスへ。 すなわち、妻の買物の御共をする良き夫というやつである。

しかしむちゃくちゃ寒いですね。マジ寒かったです。 美術部探検隊では、「藤田が寒いといったら、本当に寒い」ということになっているそうですが、 いや、まじ、俺が寒いと認定します。

エビスで何をしたかというと、そこのミツコシで買物である。 そのミツコシの2Fに科学玩具の店があって、変なものをいっぱい売ってて面白い。

寒いとあっというまに腹が減るものだが、今日もその例外ではなく、 B2Fで食事。二人でタイヤキ一つづつと、肉マン1個。

2004/01/13

本郷で仕事。

ついでに、上野で自動巻き swatch をもう一個買う。 妻の自動巻き発電時計の点検整備のバックアップである。 どうも、俺のの中身が見えてるのが気に入ったらしい。 つまり、文字盤を抜いて渡すことになるわけである。


過去の落書きリスト