大島侵攻作戦(2004/06/21)


伊豆大島

クラブでツーリング。

城ヶ崎でクライミングやってたとき、 後ろ(つまり海の方)に大島が見えていた。 わりとのっぺりした印象だったが実際自転車で走るとどうなんでしょうか。

ということで、 6/19 の夜発の船で出発。 メンツは川越、工藤、栗原、小暮(以上敬称略)と、わしの5人。 わしは昼間は妻と和田峠に行き、戻ってメシ食って港で合流という予定。 川越、工藤、栗原の3人はわしが港に着いた時にはもう完全にぐるぐる状態で、 同じ事を何度も言うモードであった。 わしも船で多少呑み、キゼツし、3時頃起きたら脱水と揺れでややゲロ気味。 船が着くのは6時だが、5時には船内の照明がつき、寝てられない。 かなり具合悪い体調のまま上陸。最北端の岡田港である。

天気は、台風が接近している、ということだったが時々晴れ間が見える曇空。 ただ、波というよりウネリがすごい。

どうも荷物を置くところも無いようなので、荷物持ってちょいと西の元町方面へ移動。 いきなりけっこうな登りであった。 元町は大島で一番でかい町なのだが、非常に何もないところで、 なんだかやたらとりっぱな船の乗り場にもコインロッカーすらない。 腹がへって具合が悪くなってきたので、町中をさがしたところ、 一軒だけ店があいてたのでそこでパンやらバナナやらを 買い込み、 船の乗り場で食う。 荷物を置く場所がないので、しょうがなく その乗り場の2階に放置してとりあえず左まわりに島を一周の旅に出発した。

どうもそこから先は記憶があまりないのだが、基本的に海岸沿いに走っていった。 なんだか切り通しのガケが延々と地層になってるところがあり、 面白かった。波部港に到着。これが最南端である。あっというまじゃよ。

波部港は爆裂火口のアナが入江になっているのである。 せっかくだから、港まで降りる。

再び登り返して島の東岸を北上してゆく。こっちはどうもけっこう険しい地形のようだ。 道路は海岸沿いではなく、若干中にはいったところを通っている。 ほとんど海岸まで降りる箇所がひとつあり、 海から突き出た溶岩の島、「筆島」があった。 登りたくなる地形だが、溶岩だからな、どうなのかね。 城ヶ崎みたいにがっちりした玄武岩なら問題ないだろうが。

そこからガケをいきなりぐわーっっと300mほど登る。 ここでは若干マジメに漕いでみた。 空気もうまい。花と森の臭いでむせかえりそうだ。 すると、酒も抜けて、調子が出て来たかも。 それまでは、ちょっと風にあたるとなんか妙に肌寒いのが辛くて、 カゼでもひいてるのか? みたいなコンディションだったが。

登りが終った辺りで停止し、パンやらバナナやら食って後続を待つ。

そこからは、三原山の溶岩台地をずーっと走るコース。 車も全く来ないし、非常に気分が良い。

途中で左に折れて、三原山を登るコースに。 道路沿いにあじさいがたくさん咲いていて、あいかわらず車は全く来ないし、最高だ。 路面も良いし、傾斜も少なく、俺は Kalavinka の 13-21 で来てたのだが、 ギア比はこれで全く問題無い。

しかしちょっと標高が上がるとずっとガスがあり、 全く景色は見えないのが若干残念だ。要するに雲の中なのである。 標高600mくらいのところまで登った。そこらへんは溶岩の平原らしかったが、 全然何も見えないし居てもしょうがない感じなので、さっさと元町に下るコースに。

ものすごいガスで、カーブが右に曲がってるのか左に曲がってるのかすら判らない中を 下るのはけっこう大変だ。 前後ライトを点灯して下る。 下まで着いたら、ハンドルやらフレームやらの前面は一面水滴でびしょ濡れだった。

元町でちょうど昼になり、そこで食事。さすがにこの時間になると 何軒か店があった。 ゆっくり食って荷物を見に船の乗り場に行くと、 なんと帰りに乗る予定だった高速な船が天候のせいで休みだというじゃ ありませんか! 急遽、普通の船に切替えてから、温泉に浸かる。 温泉から荒れ放題の海が見えて良い感じ。

さて、船は15時前に出発ということなので、13時半すぎには風呂を出て、 着替えて荷物持って岡田港に移動。 できるだけ汗はかきたくないのでゆっくり走る。 暑い。

帰りの船では全員疲れてキゼツ。 横浜に寄るというので帰りは全員横浜で下船した。 そこから俺は最初、電車で帰る気だったが、 カワゴエさんが自走するというので俺もそうすることにした。 そして、わしらで第二京浜を激走してたら、なんと岩橋君が帰って来るところにでくわした。 スーパーのビニール袋をハンドルから幾つかさげていた。

やっと多摩川まで帰って来た。 横浜もけっこう遠いな。 ずっとゴムぞうりで乗ってたら汗でぬめったのであろう、 あるいは、フロントタイヤのバーストが先だったかもしれん。 タマガワ大橋を渡るときにブチこけちまった。 こういう本格的な落車は半年ぶりだ。

フロントがバーストしてて走れないので、栗原さんと川越さんが 近所の自転車屋(ワイヅ)にタイヤを買いに行ってくれた。 俺はぼちぼちと押して行く。

「営業は終っていたけど、こじ開けて無理矢理買って来たぜ!」と栗原さん。 ありがとうございます。 タイヤ及びチューブを交換し、ガス入れて復活。 しかしへんてこなコケ方だったので、左のカカトを路面に強打して、 そこが今日もかなり痛い。うまく歩けん。自転車は乗れるのだが。こりゃ参った。

和田峠

久々に登ったタイムは 16分 20 秒でした。

むかし、ナラヒロシ氏をやっつけた時とあんまり変わらないタイムですが、 どういうわけですかね。

attack

というと、自転車方面では一緒に走ってる奴を 加速やテクニックや度胸(笑)を使って振り切ろうとする行為を指す。 誰かの後ろは楽なので、自転車レースでは通常、 複数名で集団を形成して走る事が多いのだが、 基本的に敵同士で集団を形成しているわけなので、 折りにふれてはこういう場面がでてくるわけだ。

アタックの中でも特に称賛されるのは、 圧倒的に多人数で形成されている集団から、 単独あるいは数名で抜け出すという行為だ。 これは、特に「逃げ」と呼ばれ、たとえ最後まで逃げ切れずに 良い着順を取れなかったとしても、これ自体、尊敬に値し、 非常に価値ある行為なのである。

この、「たとえうまくいかなかったとしても」というところが、 けっこう謎なんじゃないかと私はおもうわけです。 なぜそれが尊敬に値するのか?

これはですね、 ある程度の速度で集団で走ってみて、そこから独りで飛び出してみないと 本当のところは判らないかも知れませんが、 そんな事言うならこんな記事書いても無駄ですからね、 想像の手がかりになるように、比喩を使って説明すると、 まず、集団から飛び出すのと大人しく集団で良い子にしてるのでは、 船に乗っているのと自分で泳ぐのくらいの違いがあります。 アタックする瞬間というのは、 つまり、船から海にドボーンと飛び込む感じですね。 そんな事する奴は、もう、アホですよ。 しかし、レースは一位以外は無意味なので、 その後の展開を考えると(なんせ集団は敵どうしで形成されているので、 集団の利点が十分活かせるとはかぎらない) このハイリスクが優勝で報われる可能性はあります。 この可能性に賭けてリスクを冒すという糞度胸に、まず拍手ということです。

もう一つ。小人数で逃げる奴と集団、観客はどっち感情移入する? そりゃ言うまでもなく逃げる方でしょう。 てゆうか集団なんていう、敵同士で形成されている、 なんかよく判らない思惑が交錯しているものに感情移入できる奴なんて居ません。 それに引き替え、逃げる奴に感情移入するのは自然です。 西洋の映画にもこういうシーンは頻繁に出て来るでしょう。 シカゴの街でケーサツの大群から中古のパトカーで必死に逃げる Jake と Elwood とか(笑)。

もう、逃げてる奴にとってはマジ必死です。 だって、後ろに居る全員が敵であり、そいつら全員が 「こ〜ら〜。待てぇ〜」と追いかけて来るわけですよ。 そりゃもうマジすげぇプレッシャーです。 後ろ全員が敵。集団の圧力は息苦しい程だ。 狭い道で後ろからデカい丸い石コロがおいかけられる インディー ジョーンズの気分じゃよ。

普通に脚比べになったら絶対に逃げ切れないので、 逃げる方は心理的な駆け引きやテクニック、展開を考えて走らないとダメだ。 まず、逃げる奴は追いかける方から姿をくらます必要がある。 そうでないと、追いかける方は「ははは。まだあんなとこ走ってるのかよ。 せいぜい頑張れよ。あ?もう終りですか?」てなもんで、全くお話しにならないのである。 普通に走ってても単独や小人数だとしんどいところを、 そのメンツで集団から姿がみえなくなるくらいの差を稼がねばならないので、 最初のしんどさは尋常ではない。 これが船から海に飛び込むくらいの衝撃に相当する。 細いまがりくねった道や、山岳の霧、雨、険しい登りなど、 集団の利点が薄くなるところは逃げる方も有利だ。 だが、そういった箇所で仕掛ける事は当然、リスクも伴う。 逃げるには脚以外に勇気とテクニックも必要なのである。

逃げ切った場合は、結果以外に、逃げ切ったという事実それ自体が 名誉として残る。 あれほど圧倒的なものに思えた後ろの集団が、 最後はばらばらになったり、差が詰まらなくなったりした日にはもう、 まさに、逃げた奴は神である。 全能の自転車乗りである。 これが名誉でなくて何であろうか。 裏を返せばオイ集団、おまえらそんだけ面子揃ってだらしねぇな、 何やってんだよコラという事でもある。 「やったぜ逃げ切ったぞ!これでもう絶対捕まらないぞ!」 という達成感に比べれば、実際のところ、優勝かどうかなんてどうでもいいくらいだ (そりゃ言いすぎか)。

というわけで、もうすぐ始まる Le Tour de France では、是非逃げる奴に 注目して見て頂きたいと私は願うわけです。

ちなみに、私の自転車乗りとしての最終的な野望は、 Japan Cup アマチュアレースでアタックし、場内実況放送のフランス語アナウンスに 「えしゃぺー」とかいって登場する事です。


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