bivouac-howto

藤田裕二(yuji@bijutsubu.com)

1.0, 2000年5月
この文書は布団の上で眠ることの出来ない人のためのものです. 布団以外の場所でも, 快適に過ごし, 疲労を軽減するためのノウハウを 紹介することを目的としています.

フィードバックとクレヂット

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はじめに

あなたのいつもの寝床は, どこでしょう? 自宅の布団, あるいはベッドの上でしょうか. それならば, この文書はあなたのために役に立つことがあるでしょう. それとも, 道端の段ボールですか? あるいは洞穴? 会社のソファー? そんな場合も, この文書は何等かのヒントになるかもしれません.

布団以外で寝ることなど想像もつかない! もしあなたがそう思っているならば, それは想像力が貧困です. いつ, どこで寝ることになるか, わからないのが人生ってもんです. 世の中を布団とそれ以外に分類するのはいささか単純すぎるといえるでしょう. 布団以外の場所にもピンからキリまであるのです.

寝場所を捜せ

万策つきて, 自宅の寝床で眠れないことが判明した場合, あるいは, 最初からその予定だった場合, 早めに寝場所を確保することを考えましょう. 寝場所の選定が, 明日の運命の大部分を握っているのです. 実際, 野宿の技術の大半は, 「どこで寝るか」ということに集約 されます. 寝るところをうまく捜すことのできる者が, 体力を温存でき, 生き残る確率が高くなるのです. うまい寝床をみつけることができれば, 成功したも同然です.

それでは, 適当な寝場所とはどういう所でしょう? それには幾つか条件があります.

一般に, 優先度は上の方が高くなります. 安全は全てに優先します. なにしろ, 寝るわけですから寝ている間は無防備です. 起きていれば全く問題にならないような事が, 寝ている間は極めて重大な 脅威を形成します. 「これで, 俺が寝てしまっても大丈夫か?」としっかり想像力を 働かせて, 安全を確保しましょう. 通常は何時間か眠ることになりますが, そういった時間の経過を考慮に入れて, 安全を図ることが重要です. 夜中に集中豪雨や豪雪があったらどうなるか? 誰かマズイ奴に見付かることはないか?

そのときは安全に思えても, 朝には危険に晒される, という場合もあります. 安全が確保できない場合は, あえて 眠らない という選択も必要です. 人間, 一日や二日寝なくても死にません.

暖かいことは重要です. 極端に寒いと, 安全にも関わって来ます. つまり, 回復不可能なまでに体温を奪われて疲労し, 意識を失って, そのまま心不全を起こして死ぬかもしれないからです(一般に凍死と呼ばれる 現象). そこまで行かなくても, 寒くて寝られない場合は, 全然休息になりません. たとえ気温が 20度でも, 風があれば朝まで一睡もできないでしょうが, 気温が 10度でも風が無ければけっこう快適です. 空気による体温の損失は, 伝導よりも対流の方が大きいからです. 風の避けられるところを捜しましょう. オフィスなら, エアコンの風が当たらないところになります.

朝になるにしたがって, 気温が低下しますが, これは屋根があるかどうかで, 下がり方が全然違います. もし, 樹林, 橋, 軒など, 空を隠してくれるものがあれば, その下を 使いましょう. 天候が曇なら, それほどの差は無いでしょうが, 晴れた時は, 放射冷却によって 宇宙が如何に寒いところかを思い知らされることになるでしょう.

デコボコと傾斜なら, 躊躇無くデコボコしてても傾斜のないところを選ぶべきです. なぜなら, 傾斜していると寝ている間に寝がえりなどで寝場所が移動します. その結果, 熟睡できないばかりか, 移動したことで思わぬ危険にあうかも 知れません. また, 傾斜地で寝ると, 足がむくんだり頭に血がのぼったりして, 非常に具合が悪いものです. 一方, デコボコは姿勢を工夫すれば意外と気にならないものです.

理想的な寝場所はそう多くないことを憶えておいて下さい. 寝場所は有限の資源であり, その確保は通常, 熾烈な競争になります. これは, 良い寝場所を確保できない個体がジリ貧に陥る可能性を 示唆するものです.

装備

装備は重要です. もし, 野宿することが最初から判り切っている場合は, テントと寝袋, そしてマットを用意しましょう. これだけあれば, 自宅の寝床で寝るのと変わらない (場合によっては より快適な) 夜が手に入ることでしょう. テントは天候から, マットは地面への体温の伝導による損失から, 寝袋は大気への体温の対流による損失からあなたを守ってくれます. それぞれ重要性は環境によって異なりますが, 気温の低いところでは一般に寝袋がもっとも重要であり, 天候の厳しいところではテントが重要です. 風, 雨, 雪を防ぐことができるならば, 十分良い寝袋を使えば, 氷点下 20度でも朝まで爆睡できるでしょう.

しかし, 寝袋とテントがいつも手に入るわけではありません. そんなときも,すこしでもその状態に近づける工夫をすべきです. まず, 畳でないかぎり, 床や地面に直接寝ることは避けましょう. もし, 段ボールが手に入ればそれを敷くべきです. 理想は 大型の家電製品などを梱包する厚めのものを 2枚です.

模型材料の発泡スチロールは適当に軟らかく, 断熱性にも優れているので, 理想的な床材料になります. 床は固体なので, 空気に比べると伝導で失われる熱は非常に多くなります. 寝床は, 体温を保つことを第一に考えて工夫しましょう. また, 体から水分が蒸発すると, 体温, ひいては体力を消耗し, また, 脱水にもなります. ポリ袋などを使うと, 湿度を保つと暖かさを保つことが出来ます. 無ければコート, 上着などを活用しましょう. 全身を覆うことができない場合は, 下半身は, 上半身に比べて重要な臓器が無く, 血流も少ないので, 上半身を優先しましょう.

姿勢

いつもどういう姿勢で寝ていますか? 布団やベッドの上なら, どんな姿勢でも快適に眠ることができますが, それ以外の場所では姿勢を工夫するかしないかは, 大きな違いになる場合があります.

まず, 地面がデコボコしている場合や 硬い場合は, 横になりましょう. そして, 極端なでっぱりが避けられるように体をエビ状に丸めます. 一般に, この姿勢はもっとも地形に対する適応性が高く, あらゆるところで寝入り端に活用できます. これで寝ることが出来ても, 寝がえりなどで姿勢が変わると目覚めてしまう ことがあります. 仰向けで熟睡できる条件など, 稀ですからね. そんなときも, 横向けになって楽な姿勢を追求し, 再び太陽がのぼるまで, 眠ることに挑戦しましょう.

枕を都合しましょう. 腰の位置と首の位置が, 熟睡のポイントです. 快適で無理の無い姿勢をとるために, 枕は非常に重要です.

ユーモア

眠りに入る前, 起きたときは, ユーモアを忘れないようにしましょう. 苛酷な夜から受けるストレスに対抗するには, 心の余裕と諧謔が重要です. また, 自分の置かれている状況を客観的に評価する手助けにもなることでしょう. 「ケータイで注文したら, この岩棚にも時間内に宅配ピザ屋が来るかね」 「冬山フル装備でか? それよりおまえ, 金持ってんのかよ」 「ピザ代くらいはある. でも配達の帰りに雪崩で埋まっちゃったりして. それで, 春まで集金できねんだ」 こんな寒い冗談が, ピンチの時には腰が抜けるほど面白く思えるものです.

それではお休みなさいませ. よい夜を.

FAQ

水びたしです.
ねるところがもっとも重要です. 次は良い場所を確保しましょう.
寒い....
あえて眠らないという選択をお勧めします. 星が出ていれば 深い森の中以外は行動可能です. 大抵のところなら朝まで行動すれば 安全なところにたどりつけるでしょう.
眠い....
こうなるまえに場所を確保しましょう. 先手を打って段取りを 整えておくには, 一般にある程度の経験が必要です. 次はもう少しうまく行動できるかも.
どうも, 檻の中なんですけど.
安全が全てに優先します. とりあえず,「弁護士に会わせろ」 とか言ってみるのはどうでしょう.
みんなが目を逸らします.
気のせいですよ.

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