洞窟 HOWTO

FUJITA Yuji(yuji@bijutsubu.com)

1.0, December 1999
この文書は洞窟をうろつくひとたちのためのものです. 洞窟は, 多くの人の日常生活空間とはかなりかけはなれたものなので, そこで行動する上で必要なノウハウが, 幾つかあります. この文書は, そのようなノウハウを紹介することを目的としています.

1. 前書き

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1.1 フィードバックとクレジット

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洞窟とは

地面の穴です. 穴ですが, 直径 3mm のものは, 洞窟とは言いません. また, 直径が 何キロもあっても, 深さが 1m のものも, 洞窟とは呼びませ ん. 洞窟は, 地面の穴のうち, 通常, 人が入れるくらいの太さで, ある程度の深さをもつもの をいいます.

洞窟内部に住んでいる生物は少ないので, 環境の汚染許容量は, 一般にきわめて小さいものです. また, 非常に特殊な 生物が住んでいますから, 生態系に与える影響を最小限に留める配慮を 怠ってはなりません. 持ち込んだものは, 全て持ち去りましょう.

洞窟には幾つかの種類があります. そのうち, メジャーなのは,次の 2つでしょう.

他に,極地には, 氷河を流れる水が作った氷の洞窟などもあり, 非常に規模 の大きなものもあると聞きますが, 近頃は地球温暖化ですから, いったいど うなっていることやら.

石灰岩洞窟は, 炭酸カルシウム が溶けたり再結晶したりしてできるもので, 岩の割れ目などに沿って成長します. 内部に水流を持っているのが普通で, 大規模な地底湖を持つ場合もあります. 石灰岩台地の規模によっては, きわめて長大なものになる場合もあり, 構造も複雑で, 世界最長と呼ばれる幾つかの洞窟の実際の総延長を知るこ とは, 極めて困難です(したがって,どれが世界最長かも本当は判らない わけです). また, 石灰岩洞窟はその成因からあきらかなように, 年々成長しつづけます.

石灰岩の 2次生成物が非常に美しい場合もあり, 内部も変化に富んでい ます. 幾つかの洞窟は観光化されており, 安全に内部を見学することがで きます.

火山性洞窟は, 流れ出した溶岩に含まれていた火山性ガスが, 溶岩から抜けてできたものです. 通常, ガスの出口が人の入口になります. ガスは上に抜けることが多いので, 入口は深い縦穴となっているケースも 見られます.

中の構造は, 洞窟によっては非常に複雑であり, また, 全長の長いものも みられますが, 石灰岩洞窟には多くの場合及びません. しかし, 構成している岩石が溶岩であることから, なかには強い磁性を持 つものもあり, 洞窟内部で方位磁石が使えない場合もあります.

火山性洞窟にも, 溶岩の 2次生成物が見られる場合があります. また, 標高の高いところにある場合が多く, 洞窟内部が 氷で覆われ, 天井からは無数のツララがぶら下がっていて 非常に美しいものもあります.

シャモニの Mer de Glase 氷河には, 観光化された氷河洞窟(なのか?)があります. 氷河洞窟では, 場所によっては外部の光が氷を通して入って来て, なかなか美しい景観が 見られます. また, 氷河の氷は雪が固まったものなので, 中に無数の気泡 をもっていることや, 毎年降り積もった雪が層をなしていることなどが 内部から観察できます.

装備

洞窟で快適に行動するためには, 幾つかの装備が必要です. 洞窟といっても, 立地や成因によっていろいろですが, 全部で共通して必要 な装備が一つあります. それは, ヘッドランプ 通称ヘッデン です.

洞窟では, 行動に両手が必要なので, ヘッデン無しには全く行動できません. 縦穴では命に関わるでしょう. 当然ですが, ヘッデンには絶対の信頼性が必要です. ヘッデンは絶対に壊れてはいけません. しかし, 洞窟などの探検行動において, 「絶対」という属性は 決して獲得されることのない聖杯のようなものです. したがって, 個人照明には必ずバックアップ を用意しよう. 致命的で不可欠な装備は, 一般に何等かの方法で 2重化することが 望ましいでしょう.

したがって, 予備の電池の携帯にも十分な注意を払う必要があります. 濡らしたり紛失したりすることの無いよう, 工夫しなければなりません. 洞窟でヘッデンが無くなったら, 文字通り, そのまんま, お先真っ暗です.

服装や靴は, 洞窟によって適当なものを選択すればいいでしょう. はらばいになって前進するような狭い洞窟であれば, ツナギが良いでしょうし, 凍結している洞窟では アイゼンやピッケルが必要です. しかし, おおむね言えることは, だいたい這いまわることになるので, 服には破れてもかまわないものや, ツナギが良いようです. 気温によって, ツナギの中にセーターなどを着ると良いでしょう. また, 水をかぶる場合は, シャツ, セーター, ゴアテックスのカッパ, ツナギ の順に着ると良いようですが, 作者は試したことがありません.

水を大量に持ち込める場合以外は, 食糧は, 加熱調理しなくても食べられるものを用意しましょう. 洞窟内部で火器を使うと酸欠になる場合もあり, おすすめできません. というはなしを聞いて, 喉もとが苦しくなってきたあなたは, 閉所恐怖性ですね? ヒヒヒ.

方位磁石を持ちましょう. 石灰岩洞窟などで, グルグルウロウロしている と, 絶対に方向が判らなくなります. 3次元迷路ですから. そんなときも, 方位磁石を持っていれば大丈夫. 方位磁石が効かないような溶岩洞窟は, 都合の良いことに通常迷うようなことはありません.

縦穴に必要な装備と技術については, 縦穴 HOWTO をみてください.

洞内の行動

洞内の行動原則で多くの人が思い浮かべるのは,「アリアドネの糸」でしょ う. クレタの迷路宮殿に紐を持って入って, 無事に出て来たというアレです. しかしながら, 実際にはこれはあまり実用的な方法ではありません.

洞窟で迷いそうなところは決まっています.

そういう箇所を意識的に記憶するように努めれば, 大抵の洞窟では迷いませ ん. また, 初めての洞窟では, そういう箇所に アルミホイル などで マーキングしながら前進しましょう. もちろん, 帰りにはマーキングを回収 しなければなりません.

足元にばかり注意を集中していると, すぐに疲れきってしまいます. 3m くらい先を見るようにしましょう.

事故が起きたら?

洞窟内部で事故が起きたら, その救助活動は困難を極めます. 一人しか通れない鍵穴通路(key hole passage)を 患者を搬送するのはほぼ不可能です. つまり, 洞窟で事故を起こしても, 助けに来てくれる人は 居ない ということを肝に銘じて下さい. また大抵の保険は,そういうアホな状況下での怪我や病気をカバーして いません.

ですから, 洞窟遊びは全面的に自己の責任のもとにやらねばなりません. といっても, 縦穴や増水が絡まない限り, 洞窟で事故が起きることは ほとんどありません. 実際には多くの場合, 洞窟遊びはしんどくない割には未知の要素が高い, 非常に楽しい娯楽となることでしょう. ただし, 縦穴での行動中のミスや, 洞内行動中に集中豪雨に遭遇した 場合は, 破滅的な結末になる可能性があります. 洞内潜水に至っては, 言うまでもないでしょう.

洞窟行動中に地震があったら, 生き埋めじゃ! という心配は, 通常の場合, 意味がありません. 大抵の洞窟は人類の歴史よりも古いのです. その間, 何度大きな地震があったことでしょう. そう考えると, 洞窟は人間が作った大抵の建物よりも安全であると 言えるかも知れません.

FAQ

迷いました
予防が治療よりも簡単な典型が, コレです. もう,こうなったら気合いしかありませんね. なんちて. 石灰岩洞窟のばあい, 大抵は断層沿いに発達しますから, 大局的に見れば, 明確な方向性を持っています. 決してデタラメに迷路になっているわけではありません.
はさまって動けません
入ったものは出られます. 落ち着いて.
前を進んでた奴が へ こきました
御愁傷さまです. 彼が昨日, 焼肉とかを喰ってないことを祈るだけで す.
モれそうです
大きな水流のある鍾乳洞なら, そのまま致しても問題無いでしょう. それ以外は基本的に我慢しましょう.