火宅の生命


たまに「人間はあさましい. 戦争なんかして, 最強にアホだ. 動物は 賢い」 みたいな論調をみるが, そんなことを言ってる奴はアホです. そんな論調を実際どこで見たか思い出せんが, とにかく そういうことを考えている奴が居たとしたら, 底無しのボケナスですな. 冗談としても面白くないし.

はっきり言って, 人間ほど礼儀と理性を弁えた生物は居ない. 他の生命ときたら, もう, 「おまえ, そこまでやるか?」 つうくらい利己的でセコく, どうしょうもない連中ばかりである. たとえ, 人間の礼儀や理性が究極的には利己的な動機に 根ざしたものであったとしても, 他の生命のほうが浅ましく利己的でケチであることには変わりは無い. 実際には礼儀とかそういうものが「他の奴に馬鹿にされたくない」 みたいなセコい動機だったとしても, 表面的には礼節を重んじているよう にみえるものだが, 他の生物ときたら, もう, あからさまに ケダモノ丸出しだ. ケダモノなんだからあたりまえだけど.

公園とかで, 鳥にエサをやっている人がたまに居る. それを見ているとつくづくおもうのであるが, 鳥はアホでケチで糞野郎である. 全員に行き渡る十分なエサがあり, 一人占めしても 食べ切れないのにもかかわらず, 必ず優位な固体が劣位の固体を攻撃して餌を独占しようとするのだ. 庭に, 突つくと餌が出る仕掛けなんかを作って設置しようものなら, もう大変な騒ぎである. 特に, 突つく場所が 1個しか無い場合はケンカが熾烈を極める. クチバシで威嚇し, 突つき, 足ゲにし, 組み伏せる. あーあ. ほらほら, 喧嘩してる間に他の固体が餌喰ってるよ.

鳥なんかの動物とは違い, 植物の場合は動きが顕著でないぶん, なんか壮絶なものがある. 奴らの考えることは一つ. 地上を全部自分の同族で埋め尽くす事である. 他の植物が育つ邪魔をする物質を分泌するのは常套手段だ. あの手この手で邪魔をする. でかく育ったら, つる植物に足元をすくわれる. もう, 屋久島の森なんか, まじで壮絶な生存競争です. ちょっとずっこけようものなら, もうその幹の上に他の植物が着生し, 他の樹がぶわわーっと枝を伸ばして, 森の中に埋もれてしまうのだ.

バイキンがわしらの先祖というつもりはないが, わりかし原初的な生命の 形態を残すと考えられる原核単細胞生物の世界でも, 事情は同じだ. 黄色のバイキンと水色のバイキンを混ぜてカンテン培地に撒いたとする. これで緑色のコロニーができるとおもったあなたは, 生命の本質がわかっとらん! cyan と yellow 混ぜたら green だが, バイキンは色じゃないのだ. 奴等は決して混ざらん. 水色と黄色のコロニーに分離するんですねえ.

他の微生物が繁殖するのをどうやったら抑えられるのか. そのやり方は, やはり同じ微生物が一番よく知っているのだ. 奴等は長い歴史の中で, その手段を洗練させてきた. これを拝借したのが抗生物質である. 生命のカルマおそるべし.

微生物が他の微生物の繁殖を邪魔する性質は, 発酵保存食品なんかによく使われる. 有用で風味を出す微生物つまり善玉菌が繁殖しているうちは, 腐敗菌が繁殖できない. しかも, この方法はカンヅメみたいに閉鎖環境をつくらなくても いいうえに, 時間とともにおいしくなって行くので 極めてナイスである. カンヅメなんかは「守り」の保存食品だが, 発酵保存食は「攻め」の保存食品である. 善玉菌が腐敗菌を攻撃して食品(つうか, 奴等にとっては 繁殖培地)を守るのだ. 微生物の独占欲をちゃっかり利用しているのである.

チーズなんか, 菌が繁殖しているうちは(俺はブリイチーズが好きなのだ) 冷蔵しなくても平気である. これは登山の行動食にもってこいだ. 保存がきいて, おいしくて, 酒のツマミにもなり, しかも栄養豊富. もっとも, 今の季節ならサシミ持って来ても平気だけどね. あ, 平気じゃないや. 初日で喰ってしまわないと 次の日は冷凍でカチコチだ. ははは.

バイキンですらかくも利己的である. 全く. つくづく生命というのはどうしょうもない存在じゃのう. インドの哲人はこれをカルマといったのかもしれないねえ. このセコさ, 苛烈さは, わしらの細胞に深く刻み込まれているのである. そして, これを克服しよう, あるいはそのフリだけでもしよう, と こころがける人間の偉大さは, 他の生命のアホさ加減を見るとき 一層際だってくるのだ. 「賢い」と言われるカラスも, この点から すれば, 大したことはない.

だからといって, 利己的で糞野郎であってもよいということには ならないのが「人道」の厳しいところである. 結局, 地球を独占してその結果 滅亡することになれば, チーズを食べ尽くして結局しまいに 腐敗菌に縄張をあけわたす Brie チーズの白カビと, 人間も同レベルであったということになろう. さあ. どうなるんでしょうねえ. 人口爆発. 礼儀作法も太古から刻み込まれた独占欲にはなす術もないのであろうか. それとも, 無制限な膨張を制止する, 何等かの原理が見出されるのだろう か. だが, そうして欲望を押し留める方法が流布したとしたら, かつてない牢獄社会が実現しそうな気もするなあ. なんか, どっちに転んでも全面的にロクでもない未来だぞ. こりゃ.

やっぱ軌道エレベータとスペースコロニーでしょう. それしかないね. 自由と人口爆発を同時に充足する解決は, 場所を増やす事以外に無い. かつてカール セーガンはその著書「COSMOS」のなかで 「宇宙人というのは, 実は未来の我々なのである」といった.

フェルメールとその時代という展覧会が 4/4 から大阪であるらしい. ポスターが図書館に貼ってあったのでゲッツしてきた. うっしっし. 全然関係ないけど, gnome-pim 大日本帝国海 軍バージョンを作ってみた.