盗聴法, 最近買った本


盗聴法

盗聴法反対集会というのが, 日比谷であったので, 行ってきた. 俺は権力にたてついて騒ぐのが大好きだからね. この集会は, 普段いがみあっているいろんな種類の左翼が, 仲良く同じ会場で「粉砕するぞ!」などと吠えたというところに, テクニカルな意義が存在するらしい. そんなところに意義が存在していること自体, かなり意義無き骨折り損なのだが, それにしたところで, いがみあっているよりはずっと良いことだ. 政治は俺にとって, むなくそわりいものの代表だから, 全然どうでも良いが, それはそれでおいといて, 騒いで盗聴法が無くなるもんなら, 俺はなんぼでも騒いだるで.

集会には偉い先生がたが何人か来て, ステージで話をしてた. それを椅子に座って聞いているというのは, かなり間抜けな状況だったのだが, 議員の先生が国会でどれだけダダをこねるかが, 盗聴法がどうなるかに ある程度影響を及ぼすものなので, 俺としてもまあ, 聞くだけ無駄とは必ずしも言い切れないのである. みな, 話は結構うまかったなあ. さすがに. でも, 言うだけだったらタダだからな. 言うことではなく, することで判断せよ.

そのあとは, デモ行進であった. 「うらー. 粉砕すっぞ!」などと吠えながら, 銀座を行進. まわりを治安当局の方々が取材し, デモ参加者の人数を数えたり, 写真を撮ったりしていた. 俺もカメラに向かってにっこりしておいた.

デモの終点近くで, ジグザグ, ウズマキなどの, 幾つかの戦闘機動を見せ, オマワリにこづかれたりしたあと解散し, 飯などを喰って帰った. 役人は, 騒ぎが起きるのがなにより苦手で, 自分等が作った法律のせいで, えらい騒ぎが起こったりしたら, 出世に響くような気がしてビビるものなので, 役所関係で気に入らないことがあったら, 騒いだ方が得なのである. これは憶えといて損は無いぞ. 黙ってればなめられるだけだぜ. 騒げ騒げ.

盗聴法の条文を見てないのだが, たとえば, 計算機での通信は 完全に暗号化できるし, 今の暗号技術は, 正面から挑んでは解読不能なので, 普通の音声電話はともかく, データ通信では盗聴不可能だ. そのような場合, 盗聴する側のオプションは, 暗号の使用を制限するか, 側面,背後から暗号を解読することしか残っていない. 暗号の使用が制限できない場合は, クラッカーの方々が地道に解読作業に 打ち込むのとかわらないわけだし, 狙った相手の防御が十分堅固であれば, 解読は不可能だ.

これじゃあせっかく盗聴法を作っても無駄だから, 暗号を解読するか, 制限する ための何らかの法的手段が存在するか, 考慮されているはずだ. アメリカで, それを巡って大問題になっているのは聞いたことがあるだろう. 強力な暗号プログラムの使用を違法にするとかしないとかいう話だ. あと, 暗号製品の輸出規制もあるしな. 例えば, PGP をアメリカのサイトからダウンロードするのは違法だったりする. だから, PGP の国際版は, 暗号製品としてではなく, ソースコードを「書籍」として出版し, それを外国のチームが輸入して, OCR でスキャンしてファイルにし, パッケージに作り直してミラーサーバに upload しているのである. そのままコンパイルできる書籍なんて聞いたこともねえが, 本という形なら, 何でも輸出できるという法律の網を潜った作戦なのだろうか. いかすぜ.

日本では, そこらへん, 全然なにも決まっていないらしいが, 暗号自体に関心が薄いので, 暗号通信を制限する法律ができても, 何の関心も呼ばないかも知れないなあ. あるいは, 今度作ってる盗聴法で, 「通信傍受に協力してもらう」 というのはつまり暗号を使わないという意味だ, ってゆう解釈になったりしてな. 解読できない暗号を使ったら, 「傍受を妨害し, 捜査を邪魔した」というのでとっつかまったりしてね.

要するに, 通信の内容というのはそれだけ価値の高いものなのであり, おまわりさんが, そこまでして手に入れたいものなのだ. わしらの立場からいえば, それだけ守る価値のあるものだということだ.

最近買った本

本を 1年ぶりくらいに買った. マンガも本(字が書いてある奴)もずいぶん買って ないが, 非常に久しぶりだ. もっともうちには膨大な本があって, どれも濃ゆい奴なんで, 何度も読み返した りして, けっこう本自体は読んでるんだけどね.

海賊とボルヘスだ!しかも両方合わせて 2500円だった. 安いぜ. なぜなら, 古書だから. 両方ともかなり面白かった. そうそう. ボルヘスいえば, 「ゲーデルの図書館」を書くとかいって, 全然進んでないなあ. 図書館の検索をネタにして, 自明でないパズルを作るとい うのはなかなか難しいものであると実感しております. 自己言及を実現する様相性以外に, やはり, 有限の立場に基づく 回帰関数的な議論も織り込みたいのだが, これを検索手続きでどうやって実現す るのか. . . で, それで面白いパズルができるのか? まだまだ作業しなければならない課題は多い.

ヘンリーモーガンは, カリブ海で, イギリスとかフランスとかオランダとかが, スペインの植民地を侵略する余裕がないので, それを海賊にやらせてた時代の, 極めて有能だった海賊のリーダーのひとりだ. 彼については, オランダの ヤン・エスクムランという人物が書いた評伝がある. エスクムランは海賊船の医者だった. その評伝は非常に正確で, 歴史的な価値の 高いものであることが判っている. 海賊の研究上出発点になる文献は幾つかあるが, エスクムランの評伝は, そのう ちの一つ である. もう一つは, チャールズジョンション船長の, イギリス海賊 史である. ジョンソンの本は, リブロポートから翻訳がある.

とにかく, モーガンというのははちゃめちゃで, まさに海賊の手本のような奴で ある. 体格と腕力に恵まれており, 頭は切れるし, しかも勇気と気力に溢れ, 決断力と断固たる意志を持ち, その上極悪非道だ.

海賊の本性はいつも変わらないのだが, その位置付けは時代によって微妙に異な る. モーガンの時代のカリブ海の海賊は, やってることは犯罪でもイギリスから 見れば, それは国益になることであり, 海賊どもも, それを承知していた. そういうのを私掠船といった. 私掠船は, もともとは海賊に遭って被った被害を 相手の国のどの船でもいいから襲って, 取り返しても良い, というあんまりな制度から来ている. だから, モーガンの時代の海賊は, 「海賊免許証」を持っていた. それにしても スゲエ話だよな. 「海賊やることを許可する」っつう免許証が発行されてたという. James Bond のマーダー・ライセンスも, 海賊ライセンスの前ではいささか影が 薄いのう. 言うまでもなく, こういう制度は海賊をはびこらせることにはなっても, 退治することには全くならなかった. それはともかく, 古典的な, ガイコツを染め抜いた黒旗をはためかせたルンペン プロレタリアートと, 海賊免許証を持った私掠船は, 国際法上区別しなければな らない.

区別しなければならないのだが, そんな区別が無意味なことも多かった. 海賊どもで字が読める者には事欠かない, というわけにはなかなかゆかなかったので, 彼等が自分の所持している免許証の効力について, 必ずしも正確に理解 しているというわけにはゆかなかったからである. ある船長が「免許証」として後生大事に所持していた 書類は単に牡山羊の狩猟を認めるものでしかなかったというから, あんまりなデタラメである.

要するに, モーガンの時代のイギリス海賊は, 不正規海軍だった. そのうえ, 正規海軍の軍人が海賊をやることも多かったので, 正規軍と不正規軍 つまりゲリラの境界はますます曖昧になる. 海賊は確かにイギリスやオランダの戦略の一端を担う存在だったのであり, また, 多少荒っぽいが一つの重要な産業だった. 私掠船の収穫は, その 10% 前後が免許を発 行した国の国庫に納められたからである.

海賊が, 船を仕立てて出発する前に世界に向かって宣戦布告した時代は, このあとだ. スペインとの戦争が決着して, どこの国も海賊どもを必要としなくなっ てからのことだ. その時代には海賊の根拠地も, カリブ海からマダガスカル島に移動するのである.