サングラス


サングラスは, わしにとって生命線だ. これが無いと, 紫外線によって角膜を破壊され, 目が見えなくなってしまうので ある. いや, わしがそういう病気なんじゃなくてね. そういう所へ行くからなんですけ どね.

いわゆる雪目というやつだ. 判りやすく言うと, 目玉の日焼けである. しかし, これはかならずしも判りやすい例えではない. なにしろ, 目玉が日焼けになったとして, どういう事になるか, こればかりは経 験しないとわからないのである.

その影響はまさに破壊的だ. 程度によるが, 1両日は完全に失明すると思って良 い. しかも, 痛い! 通常の場合は角膜がやられているだけで, 視神経や網膜には異常は発生しないので, 気合いをふり絞れば目を開ける事はできる. すると, 世界に光がある事だけは 判る. 目を閉じていても眠れない程痛いが, 開けると両目からものすごい量の涙が出て, 目玉に砂を擦り込まれたような痛み がある. まあ, 目玉に砂を擦り込まれた事は無いのですが, ウィルカースンの 「登山の医学」にそう書いてあるのだ. そして, これはなるほど納得の比喩なので ある.

そんなに気合いを入れて目を開けた所で何か見えるかと言うと何も見えないので ある. 涙のせいもあるが, 角膜が腫れてて焦点を結ばない. どれくらいみえないかというと, 電話できない. なぜなら, ダイアルが見えない から.

俺は unix ユーザの常としてブラインドタッチだが, この技をこの時程あ りがたく思った事は無い. 何も見えなくてもメールが打てるのである. ただし, 漢字は無理だ. 平仮名のみ. なぜなら, 変な漢字に変換されてても判ら ないからである.

結局, 医者に行けたのは 2日後で, つまり治りかけからだった. 家の中しか歩け ないので物も食えないし, なんともはや, えらいめにあった. もう治ると判って いたが, 一応, 何かあると 困るので, 医者に行ってみたのだが, 「冬山経験者のすることじゃないわね」 とかいって, 女医に馬鹿にされて抗生物質軟膏もらって帰って来た. しかし, そのあとも, 2週間くらい, 酷い乱視だった.

それからというもの, 俺の角膜はわりかし紫外線に弱くなってしまった. 東京でもちょっと天気の良い日は夕方になると目が痛い. 無論, 探検ではサングラスは必携となってしまったのである.

目がねかけてスポーツするひとの不便さを思い知るよ. 曇るし, ずれるし, まじでうざいっす. しかし, 外すわけにはいかん. 外したら, その日の夕方から失明だ. まえからうるさかったが, そんなわけで, わしはサングラスにはいっそううるさ くなってしまったのだ. わしは, サングラスに関しては, 予算別枠無制限である. その選択基準は, デザインもさることながら, 何よりも, 使い勝手だ. ずれず, くもらず, 痛くなく, 軽く.

ずれないというのが, 何と言ってももっとも重要だ. そして, これは全体のデザインによるのだ. 小賢しいデコボコとか, 材質とかディティールによる工夫は, どれも決まって役 に立たない. 全体の形状でずれないように工夫されている物でないと駄目だ. つまり, 力学的にもっとも安定した状態が, 適正に装着した状態と一致した製品 が, 優れている製品だ. こういう製品は, ズレても勝手に正しいポジションに戻 るのだ.

かといって, ゴクウの頭の輪っかみたいに食い込むのは論外だ. メデ帽やらヘル メットやらをかぶるので, 変な圧迫があると, 偏頭痛が発生する.

ここ数年使っているのは, swans のガルウィングとかいうやつで, ツルがまっ すぐ後ろに延びており, 頭を抱えるようにして固定するタイプだ. それ以前には scott の, レンズの下がわからツルが延びているアホっぽいデザ インのを使っていた. これが素晴らしいフィット感だったのだが, 残念ながら, 八方尾根にスキーに行った時に, ずっこけて壊した. その後探したが, もう手に入らなかった.

以前の swans は悪くないが, ベストではなかった. 視界をくまなく覆い, かつ, 曇らない程 度のすき間が顔との間になければならないのだが, レンズの曲率が俺の変な顔と 合っておらず, かなりすき間ができ, 非常に天気が良い時は, 目が痛くなる. また, 携帯している時に, ツルの端がレンズ内側に当たって傷を付けるのも良く ない.

そうこうしているうちに, こないだ命のサングラスを紛失した事に気づいた. 年末の数々の行事には必須の装備である. しょうがないので, 昨日, 買いに 行ったのだ. どうせ同じやつをまた買う事になるんだろうなと思いつつ.

今日は, 今まででもっとも優れたサングラスに出会った. おなじみの swans は, 基本的に同じだが, 微妙に, しかし決定的な進化を遂げていた. 最大の特徴であった, ツルの形状はさらに細かく 検討され, 安定感がすばらしく向上している. 特筆すべきは鼻の押さえとレンズ形状だ. レンズ形状は, 面積は小さく, 曲率が強くなり, デコボコの俺の顔にピッタリである. 鼻押さえは材質が変更されており, 形状も全面的に見直されて, これもまた具合いが良い. もはや以前のイマイチな swans ではない. 完璧である. いままでは, 色がかなり濃いものを使ってい たが, 夕方や朝方に具合が悪かった. 今回はテント出たらかけっぱなしで行けるよう にということでね, レンズの色は, 透明にした.

もう, こいつだけは無くさないようにしないとね. 経験上, なかなかこのレベルのサングラスは手に入らないよ.