最近, ずっと探検に行ってないので, 完全に人生イヤケがさして, おもろいことを思い付かなくなった. なんつうの? つまり, 人生イヤケがさしたといっても, 「ああ. 俺, もう死にたい」とか, そういうのではなく, 毎日同じもの喰ってて, もう見るのも嫌っつうかんじですか.
今月の「山とケイコク」に Yvon Chouinard のインタビューが載っていた. 「誰じゃそれ?」という人も多かろうから簡単に説明すると, アウトドア方面の服や装備を作る「パタゴニア」という会社があるが, その会社を作った人である. クライミング人生がそのまま会社になっちゃったという意味で, sun みたいな会社だ. 業界での位置も近い感じ.
社長(なのか?)本人, が一流のクライマーでサーファーなのだが, この人のすごいところは, 単にクライミングがうまいというのではなく, 幾つかの技術革新に本質的な貢献をしているところである. まあ, そういうひとだから, 会社もうまくいくんだけどね. だって, そういう会社を経営していこうと 思ったら, 新しい遊び方を提案しないとダメじゃないすか. そうしないと, 新しい市場が開拓できないでしょう.
1970年代のはじめころ, 垂直あるいは, それ以上の傾斜の氷壁を登る 技術を確立したのが, この人なんですよ. それには, 新しい道具の発明も必要だったわけだが, 彼が発明したのは, 完全に新しい道具というわけでもないところが, また, 面白い わけです. 本人は, 自分の果たした業績は, 19 世紀に始まったアルピニズムの伝統 の 延長線上にあるものでしかない, と考えているところもおもしろい.
インタビューで面白かったのは, こういうやりとりである.
「会社の経営とクライミングはどっちが難しいですか」
「クライミングだ. 経営は, マジメに働いてれば
確実に利益が得られる. しかし, クライミングにはリスクがある.
クライマーをビジネスマンにするのは可能だが,
その逆は不可能だ」
むう. どう転んでもビジネスマンにはなれそうもない, それどころか, クライミングやってなかったら確実に犯罪者になってるような クライマーを何人も知っているが, シュイナードさんは, 若干見解が違うようだな.
ところで, シュイナードさんはサーファーでもある. このコーナーの読者の方々は, サーファーというと, どういうイメージであろうか? サーフィンするような人というのは, このコーナーに来るのか? わからん. ハッカーの人というのは多趣味だから, サーフィンする人が居てもおかし くないしね.
一般的にいえば, しかしながら, サーファーの人々というのは, 「ヤンキー」とかなんかそういうロクでもないのといっしょくたに されがちである. 実際, わしもサーファーの知合いが一人も居ないのでなんとも言えないの だが, しかしながら, どうもそういう偏見は全然間違っておるようだ. すくなくとも, ハワイとかその辺では, 間違っておるのだ.
普通にハイキングしている人が, 海水浴客だとすると, サーファーというのはクライマーにあたる人種なのだ. しかも, クライマーはフロに入らなかったりして臭い(こともある)が, サーフィンは海なので臭くない(事が多い).
超絶の体力と運動神経に加えて, 特攻度胸がないと, サーファーというのはつとまらないのである. つまり, 非常にエライ, 尊敬すべき人達なのだ.
そういう人がいれば, そのマネをしたくなる気持もわかる. そして, ストレートにマネしちゃう馬鹿が, ろくでもない奴なのも, 自明である. それは, 自分のことを「ハッカーだ」とかいう連中に ロクでもないのが多い(多かった)のと同じだ. 「ハッカー」を侮辱的な意味で使うのを止めよう, とか 思ってる人は, したがって, サーファーへの偏見というか, そういうのも改めねばならない. 彼等はその冒険心と体力と技術により, 人類の前衛の一つを形成しているのだ. なんせ, どれだけデカい波に乗るか, というのはつまり, どれだけ荒れてる海で遊ぶか, ってことなんですからね.