ヨドバシカメラの頑固オヤジ


コンピュータ , 天文, とくれば, わしがカメラに詳しくないわけはないのである. 実際, 光学機器一般に関して, わしはかなりうるさい方なのじゃ. 計算機は人間の計算能力ないし, 情報処理能力を拡大してくれる (場合もある)が, 光学機器の場合は, 情報なんぞという抽象的な 話ではない. 光学機器が強化するのは, 人間の視力. 視力そのものなのじゃ!

すげえ計算ができて喜ぶ人というのは, どうしても人類一般からいえば, 小数派であり, どっちかというと, おかしな奴であり, さらにいえば, そのインパクトも, やや小さいのである. 何に比べて?そりゃあんた. いままで見えなかったものが見えるようになったのに比べりゃ, コむづかしい計算ができたからといって, 何程のことがあろうか. いや, 無い.

わしは, 光学機器が, ガキの頃から大好きじゃった. 双眼鏡と顕微鏡は, わしの最強のしもべであった. 高校生になって, ようやく天体望遠鏡がその仲間に加わる事とはなったが, 天体望遠鏡はやたらとデカくて運ぶのも大変で, 良い双眼鏡に比べると, やはり光学機器としての一般的な魅力に乏しいのである. 無論, ハッブル望遠鏡 みたいなものは別じゃがな.

双眼鏡というのは, 光学系が一個しかない望遠鏡と違って, ちゃんと立体に見えるのである. 星は全部無限遠に存在しているので, 立体に見えるかどうか, 関係無いはずなの だが, 何故か同じ口径ならば, 双眼鏡の方が明るく感じられ, 像も迫力があるの だ. 人間の視界は, 両目がたがいに補いあうようにできているが, それが効いて来るの かも知れん. まあ, 本当の所は判らんがな. しかし, わしの周囲に居る, 光学系にうるさい連中はみな, 「同じ口径なら, 双眼鏡の方が, 望遠鏡よりも迫力があって面白い」という.

わしも, 何年か前に, 自分で双眼鏡を買った. あんなもの, zeiss の昔からなーんも進歩してないとおもったら, 大間違いじゃ. 最近の「視野平坦化光学系」と, マルチコートのレンズの威力は凄いぞ. まっすぐなものがちゃんとまっすぐに見え, 逆光でも素晴らしいコントラストである. いくら見てても疲れない. 10年まえの製品とは比べものにならんのである. 無論, 「GON!」 とかで宣伝している20倍ズームで, となりのお姉さんも まる見え! みたいな製品はそのような進歩とは縁が無いので, 気を付けるように.

光学機器の性能を尋ねる時に, 倍率を聞く奴は, シロウトである. 喝! 光学機器の倍率など, 接眼光学系の焦点距離で如何様にも変化しうることを 知らぬとは, なんたる不届きものじゃ! 罰として, アレシーボ電波望遠鏡の周囲をウサギとび 256周じゃ!

ところで, カメラは, 光学系の魅力だけでなく, 妖しい「メカ」の魅力もプラス された, 反則気味のジャンルだ.

全く. カメラの物欲的本質は, 「ファインダ」にある. 実際, カメラマニアの方々には, カメラにフィルムなんか入ってなくたって, 一向に構わないのである. ファインダからモノが見え, シャッタが動作すれば, それで十分なのだ. シャッタだって, 別に露出が正確でなくたって全然関係無い. だって, 写真撮らないんだもんね.

ファインダは, なぜにああも物欲的なのであろうか. それは, 照準をつける機器だからである. 照準. なんと完備なではなく, 甘美な(くそ!「かんな」め. 「甘美」くらい知ってろよ. まったく, 一瞬 任意のコーシー列の収束先が要素になってしまうところであったわい. これだから unix は. ) 言葉であろうか!

照準装置がカメラの本質であるから, その具合によって, カメラの種族 , つまりマニアの種族も分類されるのである. ずばり, その種族とは.

  1. レンジファインダ
  2. 手動一眼
  3. 自動一眼
の3種類である. レンジファインダは, つまり, 測距儀である. 異なる2つの点から観測した時の角度の正接で2点間の距離を 割った値が対象までの距離であるが, それをそのまま メカに実装したものだ. その, メカ性と, 昔の最高軍事技術の一部を所有する喜び故に, この種族はもっとも精鋭ぞろいと来ておる. 特に, 羅如何元帥の権力は絶大じゃ.
それに比べると, 手動一眼は, まだマトモに見えるから不思議じゃ. しかし, こっちもなかなかキておるぞ. 特に, この種族には, 国産品に優秀な製品が多い事もあり, また, その動作が堅牢確実であることもあずかって, なかなかのツワモノぞろいじゃ. かくいうわしも, ハズカシながら, この種族の一員なのじゃ.
自動一眼は, もっともマトモな人種の集まりじゃ. このジャンルは, いまだに進化しているので, カメラがちゃんと道具として使われている領域じゃ. しかし, そんな中にもマニアは居る. 特に, 弐魂のマニアの方には, 「俺は, 断固, 絶対, 弐魂の一番高いカメラしか使わんもんね, あ?観音?ケーッケッケッ!」という人が多く, 意味もなく 30万くらい 衛賦五とかいうばかでかいカメラに散財してしまったり するものらしい.

とまあ賑やかなカメラ世界なのであるが, この世界に鎮座する, 巨大勢力というのがあるんですね. ヨドバシカメラ である.

ヨドバシである. あの, 「まーるいミドリの山の手線」 のヨドバシである. あんな, 一般大衆誰でもいらっしゃいませ毎度ありがとう ございます, どうです, おとうさん. のディスカウント量販店が, 眉間タテジワ照準器フェチどもと, 何の関係があるのか?と思った人は, 甘い!超アマ. ぜーんぜんわかっとらん!喝!

これは新宿西口本店での話だ. 俺は, 屋久島に minolta X700(マニュアルの一眼レフカメラ) を持って行く事にしていたが, ちょうど良い小型三脚が無かった. それで, ヨドバシの地下に, リバーサルフィルムを買いに行く時に, 一緒にしょぼい 小型三脚を買おうとしたのである. そして, レジにて.

「この三脚, このネジで角度調節して固定するんですか」 「そうです」 「つまり, こう, カメラのせて, , , 」 と, わしが X700 を載せようとした所, にわかにレジのオヤジの 表情が険しくなった! 「あんた, このカメラをこの三脚で使うんかッ!!」 「え, そうですけど」 「あー, ダメダメ!そのカメラには, こんな三脚じゃダメ!」 「え?じゃあどんなのならいいんですか?」 「もっと, あっちにあるような, ちゃんとしたのじゃないとダメ!」 てな具合で, 売ってくれなかったのである. おそるべし. ヨドバシカメラ.