を使って xephem をコンパイルしよう!

天体ソフトといえば、これ! 作者は天文学の講座でプログラミングを教えている先生です。 非常に楽しいプログラムです。 てゆうか、理系度全開の、かなりカッコイイ天文ソフトにつき、 私は、もっとみんなに使って欲しいなあ、と願い、ここに記事をかいたの です。

プログラム紹介

メインウィンドゥは、これです。やたらな数値が並んでいる所が理系ぽくて 良いですね!ユリウス日が秒で表示されてる所でグッときてしまいますよ。 月面は、こういう表示です。 ウィンドウをクリックするといろいろ楽しい事が起きるので、ぜひコンパイルし てみましょう!さて、次はメインの 星空です この機能に関しては、また後程。それから、次に 地球を見てみよう。 黄色は太陽が当たってる所、つまり昼です。赤い線は天体(デフォルトでは 太陽)が見える範囲 と、角度です。天体は、データベースに登録されているものであれば どれでも、それが地球から見える範囲を表示できます。

他に、木星と土星の窓もあります。衛星も表示されます。木星は、大赤飯じゃな くて赤斑も表示されるのですが、これがチープな感じなんですが、とても可愛く て気に入ってます。だから、あなたもコンパイルして見てみよう!

インストール

ところで、このプログラムの コンパイルにはツールキットの motif が必要ですが、 このライブラリは商用なので、買って来ないといけません。 まあ、買うっても、「ぷらっとほーむ」とかで 5000円くらいなんですけどね。 と思ってたら、 ここ で、motif 1.2 互換のフリーのライブラリが開発されています!ウヒー。 linux ならバイナリキットもあります。これをまず導入しましょう。 xephem では motif 1.2 相当が必要ということですが、 lesstif でコンパイル可能です。( lesstif プロジェクトの最終目的である、 バイナリ互換性は、未確認) 現在(Sun Dec 12 12:53:55 JST 1999 ) の最新は 0.89.4 です。

lesstif のコンパイルは、基本的に

./configure && make && make install
でいいのですが、configure でいろんなオプションが選択できるので、 よかったら説明でも見て、オプションつけてから make してください。 また、 configure 系のパッケージの例にもれず、 ほっとくと /usr/local 以下に インストールされてしまう。 古いバージョンを /usr/X11 以下に持っている人 は、 configure の prefix を /usr/X11R6 に指定して上書きするか、 昔のバージョンを消そう。

次に、最新の xephem のソースを取って来ましょう。 ここから取って来ましょう。 lesstif がインストールされてれば、同封の INSTALL に従えばコンパイルでき るでしょう。 しかし、 Imake はあほたれなので、ちゃんとした Makefile を作らない事も 多いです。 *.h が見付からないとかいってコンパイル出来ない場合は、 Imake が作った Makefile の cflags という変数(わりと後ろの方にある)に、適当に -I/usr/local/include とかを手で追加してください。 これは一般に、コンパイラにオプション(最適化とか、ライブラリの場所とか) を教えるのに使われる変数です。

さて、コンパイルできましたか? このプログラムをちゃんと使うには、ここからが大変です。星や月のデー タベースをちゃんと読み込ませないといけません。これをやらないと、全然だせ えプログラムに見えてしまい、作者に申し訳が立ちません。

とりあえずテストするには、make したソースツリーのルートで、おまけで付い て来るリソースファイル、XEphem.ad を xrdb で読み込みましょう。

hoge% xrdb -merge XEphem.ad
それでは
hoge% ./xephem
おお!! ちゃんと motif の立体的なボタンで はないか!! となりましたか?これは、デフォルトで付いているリソースファ イルが、データベースの在処をちゃんと指定していて、それがたまたまソースツ リーのルートからの、正しい相対パスになっているからなのです。とりあえず見 るだけなら、これで良いのですが、誰しもが使うサイトで、誰でも使えるように インストールするには、結構面倒な作業があります。

app-defaults のディレクトリ(/usr/X11R6/lib/X11/app-defaults とか) に XEphem.ad を XEphem という名前でコピーし、

XEphem.ShareDir:
というエントリを適当に設定します。 /usr/X11R6/share/xephem とか、そうい う感じ。 そのディレクトリに
auxil
catalogs
fifos
tools
というディレクトリを掘り、データーベースのファイルは catalogs に、 ヘルプや月、地球,火星などの絵のデータは auxil に入れときましょう。

詳細なヘルプが付いているので、あるていど天文関係の知識があれば、 使い方は完全に自習できます。 各ウィンドウの右上にヘルプのボタンがあるので、 それを押せば説明が出て来ます。 また、大抵のボタンは、ポインタが来たら 簡単な説明が出るようになってもいます。 非常に親切な作りですよ。 でも、用語なんかの問題で、 全く天文がシロートの場合は、ちと厳しいかも。

色んなデータベースを使おう

こういうプログラムは、なんといってもどういう天体を収録しているか、 というところが勝負(なんの?)の別れ目です。 目をひく綺麗なグラフィックがあっても、 NGC カタログも使えないんじゃあ、天文ソフトとは言えないのである。 xephem が最強なのは、利用できるデータべースの充実という点だ。

しかも、利用可能なデータベースときたら、ヒジョーにマニアックなもの までカバーされており、 電波源とか(しかも波長別に分類されている!) quaser とか pulsar とか暗黒星雲とか、 かなりワケのわからない方面も充実しています。 データベースが充実している理由の一つは、 このプログラムが実際にプロの天文学者によって使われている というところにあるかもしれない。 1998年にポーランドに行ったとき、学会のパーティーで何故か天文台の 見学ツアーがあったが、そのとき、 電波望遠鏡の制御にこのプログラムが使われているのを見た。

デフォルトで付いているデータベース(YBS.edb)には、星が 3200 個です。これを多 いと思うか少ないと思うかは、あなたが空のきれいな所に住んでいるかどうかに 依存するわけですが、 データベース ppm.xe を使うならば、 (大きさは、約8MBです。空いてる時間でないときびしいですね) を使うならば、たとえばカシオペア付近(縄張で言えば、ペルセウス座)にある、 二重星団(通称)は こうなります。 散開星団の記号を表示しなくても、ちょうど、大口径、低倍率の双眼鏡で見た感 じで、おなじみの二重星団が判りますね。

468,586 個の星が、このデータベースに入っており、9.5等までは、ほぼ完璧だ という事です。 10等まで見えるってのは、口径どれくらいかな。肉眼の口径が 7mm で6等まで だから、やっぱり、ちょうど双眼鏡くらいですね。

さらに!もっと大きなデータベースも提供されています。 tycho.xe です。これを使うと、射手座方向 M24 周辺は こうなります。 このデータベースは11等あたりまでカバーしており、部分的に 12等級も 収録されています。 散開星団 M24 と M23 が、一つ一つの星として判別できるのが 判るでしょう。 このデータベースを使うと、 星の濃度が詰まっている白鳥の胴体付近など、 処理落ちしてたまらないくらい、星がうじゃーっと表示されます。 また、このデータベースを読み込んだ場合、私の環境では xephem は メモリを 12MBytes 以上占拠して、大変なことになります。 ちなみに、このデータベースのファイルサイズは 20MBytes です。 既に圧縮されているので、これ以上 bz2 とかしてもあまり小さくなりま せん。

NGC, IC, の各星雲、星団カタログも読み込んだ場合は、乙女座銀河団の領袖 M84の周辺を拡大して行くとこんな感 じです。

その他にも、パルサーやら各種電波源やらをたくさん収録したデータベースがお まけで付いており、可視光線で見える天体と、電波源が一致した場所にあるのを 探したり、また、探した天体を、空ウィンドウの中心に表示したり、位置をマーク したりしてくれたりします。 10等位の天体なら実際に天体望遠鏡で探す事も出来ま すから、ノートパソコンの人は、野外に持ってでて実際の空を観察しながら使う というのもなかなか楽しい使い方でしょう。他の人と一緒に使えば、なにやら教 育的なシーンで Linux マシンが活躍し、「おお、おまえのパソコンも役に立 つ事があるんやのう」と見直されるかも。

ここでとりあげた各種のデータベースは、 日本にもミラーされており、ここらへん ftp://sinobu.mtk.nao.ac.jp/NOAO/contrib/xephem/catalogs/ に置いてあります。

各種数値情報を グラフ にして出力したり, 天文に関する方程式を作成して 解をもとめたりもでき、非常に便利な xephem です。 もう、たまんないっすよ。 星空窓にいろんな天体を表示させて、 あっち行ったりこっち行ったりし、ずっと遊んでいられます。 いつでも全天の星を、好きな場所と時間から見れるというのが、 たまんなく楽しい。 NGC , IC, UGC の微光天体カタログを全部読み込み、 乙女座銀河団のあたりをぶらぶらしているのも楽しいし、 射手座周辺や白鳥の胴体のあたりも良い。 拡大したり縮小したり、あと、オリオン。 「おお、そういえばこんな天体がここにあったのう」とかいいつつ、 うろうろしてると、速攻で何時間か経ちました。アホですか?