荒川出合の氷瀑


最近は忙しいので, なかなか長い探検とか行ってる場合でもないので, 週末に氷を登りに行くくらいだ. そういう心構えで居ると, 体力が猛烈に無くなってしまい, 今回はめちゃくちゃ にバテた.

氷でマルチピッチというのは, 久しぶりだ. 昨シーズンに大同心ルンゼを登った 時に, 雪が無くてマルチピッチになったが, それ以来だ.

荒川出合の氷瀑は, どれもでかくて 150mくらいある. 土曜日(6日)は 3ルンゼのナメ滝(200m) 7日はネルトンフォール(130m)を登った. どちらも, 傾斜は緩くて, パワー的には楽勝だが, なんせ, 何ピッチもあるので, なかなかしんどい. それに, 上に登れば, アルパインルート特有のむちゃくちゃ な高度感も味わえる. 思い起こせば去年は 1ピッチで登れる所しか行ってないの で, 下まで150m一気に見通せるという高度感も久しぶりだった.

一緒に行った阿部さんというひとは, 現 JECCの代表というかチーフリーダとい うか, ようするにボスであり, 強まった人なのだが, 正月あたりに穂高でちょい とヤリすぎちまって足を傷めており, 調子が悪かった. 俺も体力が全然無くて, 全体的にはいまいちのパーティーであった.

登ったルートは, どれもわりかし楽しくて, 先行パーティーが落す氷とかもあり, なかなか良かった. 交互にリードしながらロープを延ばしてゆくのは楽しいもの だ. とはいえ, 良い事ばかりではない. 7日に登ったルートは, 変なコースを選んだせいで氷が薄く, 俺も阿部さんも, 命のアイスアックスで岩を叩いてしまった. 俺の charlet のピックは, 豚の鼻みたいに潰れてしまい, ギザ一個ぶんも短くなってしまった. 幸い, 古い型のピックは, もう一本余分に 買ってあるので, まだ短くなっても大丈夫だが, 悲しいものだ. 阿部さんの mizo は試作品で, 現行品とはピックの角度が若干異なる. その角度が阿部さんのお気に入りなのだが, 阿部さんは最終ピッチを抜けるところで 鼻先がひん曲がる程岩をぶっ叩いてしまった. もう手に入らないモデルのピックが, またしても短くなってしまったのである. そんなわけで, 日曜はちょっと悲しい一日でもあった.

アルパインルートらしく, 終了点に着いてからが大変だった. 6日はヤブこぎとヤブ懸垂下降. ロープはからまるしコケて滑落しそうになるし, しまいめにバテて歩けなくなるし, 最後に取り付きまで荷物を取りに戻る羽目に なるしで, かなりまいりました. 7日は登ったルートをそのまま懸垂下降だった. リングボルトで懸垂下降は, ペ ツルに慣れた身にはなかなかなのスリルである. スリングは傷んで切れそうだし.

ところで今回, 久しぶりに俺のヤル気を出させるものを目撃した. 土曜日に登っていたナメ滝の隣, 「ブライダルベール」というルートである. 白山書房の「アイスクライミング」から引用すると,

氷柱は厚みがあまりなく, ハング下のビレイ点からトップが氷柱の表を登って行 くのを見る事ができる程である. 氷柱の途中でプロテクションを取るのがかえっ て危険な場合もあり, 緊張する.

中略

テラスより氷柱を左から右に巻くようにしてトラバースし, 氷柱の右側を登るが, この氷柱もかなり氷の質が悪いので最後まで緊張させられる.

てな具合で, なかなか窮まったところのようである. 3ピッチ150m一杯. 実物を見た感じでは, 今週の印象は「物理的には登攀可能かもしれないが. . . 」 というものだ. とくに, 2ピッチ目に取り付いてからの退却は, 場合によってはピン類の残置 といった緊急事態もありうる. やるぜ.