吾妻山スキー


松永君と 4/7, 8 で福島県の吾妻山にスキーにいった.

4/7

松永君と待ち合わせて, 東京駅を 6 時頃の新幹線で福島駅へ. 福島駅からタクシーで高湯温泉. スキー場の営業は終わっているので, スキーでゲレンデを延々と登る. ゲレンデは歩きやすいので, シールの使い方の良い練習になる. 最初は曇だったが, 途中で快晴になってしまい, むちゃくちゃに暑い. ここで, 今日の水分が 500ml 弱しか持ち合わせが無いことが発覚.

スキー場を抜けるのに 3時間くらいかかった. リフトが動いている場合に比べて 2時間の損失である.

森の中をスキーで登って行くのはとても楽しい. 雪には先行するスキー跡がある. 雪の状態から見ると, 数日以上前のものだ. 先週は, 風雪がひどかった (はず) なのだが, それでもスキー場の最後の営業だったので, 何人かわしらと同じコースを辿った奴が居るようだ.

標高が上がり, コース上分岐になりうる箇所を過ぎるにつれて, 足跡は減って行く. これは先週の気象条件を考えると当り前だ. ついでに言えば, 先週の気象条件を考えると, 足跡は正しいルートとは限らない. もっとも, このあたりは昔から山スキーのコースとして知られており, 古い道標が時々見つかる. なんせ, 入ってる広告が 「日本ビール」だったりする.

すこしずつ傾斜が強くなり, 樹が低くなって来て, しまいにハイ松だけになった. そろそろ五色沼という, 火口湖だ. 高度は 1850m 前後.

夏道通しじゃなくて, 雪の上をテキトーに歩きやすいところを 通るはずだったが, 雪が付いてなくて 結局夏道通しになった. 五色沼は, 既に凍結しておらず, 渡れないので火口壁内側を 横断. このあたりで, 水の不足が深刻になる. わしは, 休憩時に綺麗な雪をほじくり出して食った. もっとも, わしの場合は行動食も少ないので, ピンチは水だけじゃないが, なんせ, 人間, 食糧無しでも 2週間くらい大丈夫だが, 水無しでは 3日ももたない. だいいち, 脱水では所定の運動能力が出ない. ということで, 雪を食いまくる. 思えばマッターホルンも雪食いながら登ったものよ.

ヒーヒー言いつつ峠を越える. ここで, 既に先行する足跡は 2つになっている. あとは先週の条件を考えると, 撤退したというわけだろう. あとは小屋まで下るだけだ. 初めてシールを剥し, 滑走態勢を取り, ついでに写真も撮る.

東向き斜面を下るのだが, もう陽が差してないので 雪の表面が凍っており, ブレーカブル クラストとなっていて, デカい荷物を背負った身には非常に苦しい. つうか, 滑べれん. 松永君は 5年ぶりのスキーってことで, わし以上に苦しそうである.

高層湿原みたいなところに降りて来た. 吾妻富士とか, なんか盛んな火山活動のあとが見えて楽しい. ここで日没となる.

さすがに水 500ml では厳しいのう. 極限までダルくなる. しかも山小屋への道を間違えた. すげえ疲れた状態で, 月あかりで行動していると, 幻覚, 幻聴全開じゃ. 踏切の音とか他のパーティーとかいろんなものが見えて困る.

なんとか小屋にたどりついたが これで飯食って寝られるわけじゃない. 水を作る雪を集めて来なきゃ.

スコップで雪をブロック状に掘り出して 袋に詰める. このへんは, 雪山生活のベテランである, ワシの仕事である. 松永君は小屋に先行して環境の整備と食事の準備だ.

スキー靴を入れて来たカモシカスポーツの袋 (包装せずに これに詰めてもらうと割引になるヤツだ) に雪を詰め込んで, 小屋の入口 (やや雪に埋まりがち) んところを階段状に脚とスコップで固めて 小屋に入る.

予想したことではあるが, 小屋にはわしらだけだった.

まず, 水を作る. とりあえず 1L できたところでラーメンを作り, これで元気を出してから食事の続きじゃ. バーナーは, 先日, 修理したのでわりと快調に強力な火力を発揮してくれてる. こういうときに信頼できる強力なバーナーは助かるよ.

わしの夕食はふかひれスープとミートソースのスパゲティ, ラーメン. 食後にお茶. 酒 (ハイランドの Edradour). 酒は松永君にもわりと好評だった.

いやー, しかし, 今日は水無しで頑張りすぎました. 行動時間は, 10h30m だそうです. この行動時間なら, 十分な水さえあれば, もっとマシだったはずだが, 極限まで疲労したせいか, 眠くならん. 結局, 22時まで酒飲んでウダウダと喋る.

4/8

5時起床. わしは, 3時頃に小便で眼が醒め, そのまま眠れずにごろごろしてた. 朝から快晴.

朝食は, 中華三昧四川風に松永君に貰ったピータンを入れたのと, ミネストローネとクリームソースのスパゲティ. かなり腹一杯になった. それに加えて, お茶を 1L 作り, 水筒に詰める.

とりあえずガイドにあるとおりに, 東吾妻山てのに登ることにするが, どうもわしらのペースじゃあ厳しそうなんで, 途中でやめて コースを短縮する. こういう判断をテキトーに下して 好きな方へ行けるのが, 山スキーの良いところだ. 普通なら薮や樹林で道が無いと行動できない所も, この季節なら, 道なんか関係なくて, 雪さえあれば (あと, 地図と技術があれば), どこでも行けるからね.

1804m の吾妻高山からは, 下山予定の土湯温泉まで下る一方. 標高差 1000m. 水平距離 6km の 滑降じゃ.

尾根通しに下るので, こういう場合は違う尾根に入り込まないように注意が必要 だ. この下りは, 道標は整備されているが, ところどころ抜けているしね.

下山ってのも, 歩くとけっこうしんどいもんだが, スキーなら 何もせんでも進む上にスゲー速いんで, 最高の気分です. マジで誰も居ないっす. 下るにつれて, ハイ松 > コメツガ > ブナ > 松 と植生が変化する.

全く迷うこと無くコースの最後, 林道に出た. うー. 林道歩きかよー. マジかー. 死ぬー. ここで松永君がケータイでタクシーを呼び, それで温泉に.

時期的にも, 快適にスキーできる最後って感じで, 寒くなく, 良い天気で, わしらの他には誰も居らず, 火山の地形は地球離れした景観で, 久々にナイスな探検であった. いやー, まじで, わしらの他には誰も居なかったよ. 2日間, 誰にも会わなかったのだった. お. そろそろ写真ができるぞ. 取って来よう.

まとめ

ちょっと装備について思ったことを書いてみよう.

個人差もあろうが, 山スキー用として作られている歩行機能付きの兼用靴は 大抵の場合, 必要なく, 靴は普通のゲレンデ靴で 全然オッケーだと思った. わしは, LANGE の X-Zero 9D という純アルペン競技用の靴で, サイズもピッタリのものを使っているが, 歩いている時はバックルを緩めておけば, 全然オッケーで問題無かった.

むしろ, 問題はシールの具合とスキーの金具であろう. このうち, スキーの金具については, 使うべき製品は自明である. すなわち, Fritch の Diamir である. 非常に使いやすく, いろいろと切替えるのに, しゃがんだり, 狙いを定めたり, 何度もやり直したり, しまいめにキれたりする必要が 全く無い上に, 機能も豊富で動作が軽快で確実なのだ. 松永君も出発直前にこの金具を付けた新しい板を買ったのである. しかも, 滑走性能も素晴らしい. なんせ, 今回, 山スキーに持って来た板は JECC スキー大会で勝った時に使った奴だからな. しかも, チタン.

わしの板は, ATOMIC の beta race 190cm じゃ. すなわち, 大回転用のレース板である. 靴もレース靴だが, 全然オッケーで用具の汎用性が高いところが スキーの面白いところだ. レース用なんで, 先端の反り上がりが浅いので, デコボコで先端がメリ込みがちなのが, シール歩行中はやや具合が悪いかも. 滑走は, 当り前だが, 全然問題無い. というより, むしろ最強. 190cm の長さと, 適切なサイドカーブ及び剛性, 振動吸収性と 高いエッヂング性能は, オフピステでも抜群の安心感で, 好きなだけスピードが出せる. それに, この板はカッコイイ んだ. Diamir 付けたわしの板は, ちょっと山関係の道具とは思えぬ程の かっこよさ.

つうわけで, ゲレンデ板の金具を diamir に取り換えて, 板に合うシールを買えば, 直ちに山スキーが 全く問題なく, 快適にできることが証明されたのである. 特別な板も靴も不要である.

スキー関連は良かったが, 失敗もあった.