八ヶ岳アイスクライミング

2年ぶりのアイスクライミング. 様々な技術を完全に忘れており, 力も全然無くなっており, 参りました. 当り前か.

12日に峠込みで 180km チャリ乗ったのがマジ効いた. 駅で午前 3時頃から 6時前まで寝たが, 起きるのが死ぬ程辛く, アプローチも心拍が上がらないというかなんというか, まじでしんどかった.

13日の10時すぎから登り始めて, 5時間ほど登ってた. 八ヶ岳南沢大滝. 例によって.

南沢行ったら, とりあえず大滝しか考えてないわしらである. 大滝はそれなりに大きいので, へなちょこは門前払いなんである. で, 行ったわけだが, わしらも 2年ぶりの氷ってことを すっかり忘れており, 完全にヘナチョコとなり果てていた. なんせ, この俺様がリード敗退である.

リード敗退! そんなめにあったの, 最後はいつだろ? 記憶にねえよ. アイスクライミング始めた年くらいじゃねえかな. いくらなんでもヘタレすぎ.

俺のヘタレ具合とは裏腹に, 道具は最強に強まって具合が良かった. 特に, mizo の北辰! このアックスはすげぇぜ. いや, マジですげぇ. 今, 買うべきアックスがあるとすれば, それは北辰である. それ以外, 考慮にすら値しない. いくら, 俺が研いだといっても, この刺さり具合は尋常じゃないぞ. この切れ味は従来の平板ピックの常識を超えている.

どんなかというと, ルートの終盤になって 腕力が無くなってきて (アイスでは, 何故かどんなに短いルートでも, 終盤になると 腕力がオールアウトする. 何故だ?), 振りがヘロヘロになって来たときに, だ. ヘロヘロのままとりあえず振り回すわけです. 「あー. こんなんじゃ絶対刺さるわけねえよ. ただでさえ無くなった腕力が更に無駄になったよ. くそー」 とか思いつつ振り降ろしてるわけですな. でも「ずん」って感じでバッチリ刺さって効くのである.

また, 氷といってもいろいろで, 刺さりやすいところとそうでないところがある. そうでないところに打つと, 振り降ろしてもボコっと壊れたり剥がれたりして, ちいとも刺さらないわけです. 刺さらないところは知ってますから, 「あー. こんな所に打っても割れるだけ. 氷が下の奴に降り注ぐだけで無駄なんだけどなー」 と思いつつ振ると, 「ずば」っと刺さって片手で余裕でブラ下がれたりするわけです.

刺さらないのも困るが, 抜けないのも同じくらい困るのだということは, 意外と忘れがちだ. 北辰のピックはノーマルカーブだけど, 藤田研ぎもあって, すっげぇ抜きやすいです. ノーマルカーブのピックは深く刺すと抜けなくなって困るが, ピック形状が工夫されていて, そもそも, ある程度以上は刺さらないようになっていると思われる.

まじで, これを使っちゃうと, 他のアックス使う気しなくなるね. アホくさくて. 今, ハンマータイプ持ってるんだけど, ブレードのも揃えようかな. シャフトの形もちゃんとしてるから, 氷壁以外でも使えるんだ.

そうそう. Black Diamond のロボリーシュは悪くなかったが, まえのツイスト専用の方が良かったね. ロボは, なにやらヒモを引っ張って手首を締めるようになっているのだが, これがいざ登ってるときにはどんなに頑張っても緩まん. 締め加減も具合が悪くて抜けないように締めると, 登ってると手首がどんどん痺れて来る. ヒモで締めるのをやめて, ループごと捻ると具合が良い. ムカつくからヒモはとっぱらっちまおうか.

13日は, 結局一人 3本ほど登ったところで撤収した. ラーメン食って昼寝. 俺は 12日 以来ほとんど寝ておらず, 絶望的にしんどくて寝ないと死ぬ状態.

夕食はミネストローネとシャケのクリームソーススパゲティ. クリームソースは, 今や俺が自分で作った方が全然うまい. 最高の品質のダウンのシュラフは, 当然だが最高に暖かくてすげぇ具合良い. Black Diamond の LED ヘッドランプも非常に具合が良い. もう, 一切が最高に具合良くて, 何も文句無い状態で寝る. ズガー!

しかし, 午前 3時頃, 必殺な筋肉痛で目が醒めた. 背筋が筋肉痛. デカい荷物をたまに背負うとこれだ. で, 背中を丸めようとすると, 腹筋が筋肉痛ときた. 笑. クライミングの足を蹴り込む動作のおかげである. 何なんだよ, こりゃ. 身動きとれねーよ!

14日は, 木下はそのまま帰る気だったそうだが, いくらなんでもそりゃもったいなすぎだろ, ってことで 小滝を登る. 昨日, 寝る前に, 昔うまかった頃使ってたムーブを思い出してきたので, それを試す.

右手が効いてる状態で, 右足に立ち込んで左手を打つには, 左足を右足の前を通して右に振り出す. すると体が右に捻れるわけで, 左手が遠くまで届き, 右腕の力も節約できる. 左足に立ち込む場合は, 左足を置く位置とけり込む方向がポイントで, 右手が効いている位置よりもちょい左, 右に向かってけり込む. で, 右足は右に振り出した状態に. すると胴体を右に捻りつつ立ち上がることができる. もし, 右方向に何か右足を置けるところでもあれば, 次に左手を打ち込む時に安定して良い.

これらのムーブのうち, どっちを使うかは, アックスの効き具合や足場の具合などを考えて使い分けるのだ. また, これらのムーブは垂直なところでは有効だが, それ以下のところでは両足を肩幅よりも少し開いてけり込み, 壁に正対してずんずん登って行くのが簡単で良い.

これら捻り系ムーブは北辰の作者, 氷の達人, 溝淵三郎先生が元祖. 溝さんの登り方は美しく, 非常にエレガントである. 余計な力というものが無く, 氷をほとんど壊さないのだ.

小滝ではそれぞれリードして, 2本ずつトップロープやって, 荷物をまとめて帰る. 非常に傾斜の強いラインがとれたので, 楽しかった. ムーブを思い出したこともあり, 技術的には, 前日の大滝よりも充実していた. 中間支点の工作も, ハーネスでアックスにブラさがるインチキは無しだ. たった一日でここまで復活するとわ, やはりクライミングは体力よりも技術ですな. 帰りはあずさ. 駅弁「元気甲斐」をホームで売ってたので, 久々に食った. んめー!

やー. 最近, チャリで水平方向にばっかり移動してましたが, たまには良いね. 垂直系. なんせ, 登ってる最中の集中力は尋常じゃない. 特にリードはな. 「世界には二つの構成要素しかない. 一つは自分. もう一つは氷だ!」 みたいな感じ. とにかく, 垂直関係のスポーツは, 魂に直接に訴えるものがあるよ. あと, 筋肉痛にけっこうなる. 脇の筋肉とか, 上腕とか. それと, 足はフロントポイントで蹴り込むので腹筋を使う. 腹筋がすげぇ筋肉痛. くしゃみするのも辛い.

氷の何が面白いって, 自分で支点の工作を全部やんないといけないところです. 既に存在している支点を辿るスタイルのクライミングも面白いし安全だが, 俺は自分で安全を確保してこそ自力で前進(いや, 上昇か.)している気がするね. リードという点に限って言えば, 自分で支点工作するかどうかの違いに比べると, フリーか否か, という違いなど瑣末である.

たまに懸垂もやるか.