たまには富士山頂から下界の愚民共を見下ろしつつ 大滑降でもせぬことにはおさまらぬ。
JECCの吉川さんを(若干無理に)誘い、前夜発の日帰りで。
5合めへの道は、例年4/20前後に開通するのだが、 今年もちゃんと開通していた。 例年、この時期は夜間通行どめだが、 通行どめのバリケードはけっこう適当なので、状況をみて進入可能なのも同様。 うまいぐあいに5合めで寝ることができた。
寝たのが2時ころ。5時まえに起き、麓のコンビニで買って来たオニギリ喰って、 服を着替えて準備する。 前日に700hpa(3000m)高層天気図でみたところ、 富士山付近は0度、風速10m前後だった。 3000mは7合め付近、ちょうど中間あたりだ。 富士山で問題になるのは風だが、上の方はどうかな?
出発点の標高は2370mである。0530出発。 西洋人がスキー、スノボを持って5-6人来てた。 出発時点でそういうオモチャを持ってるのは、そいつらパーティーと俺らだけ。 あとは通常の冬山装備だ。 つまり、冬用ジャケットに、ピッケル、アイゼン装着可能な登山靴。 他に、なんかへんてこなジャンパーにトレッキングシューズ、 デイパック、ストックという勘違い装備ペアが居た。
7合でストックはザックにつけて、ピッケルを出す。 スコップの柄以外の用途でピッケル使うの2年ぶりだ。 左はそのあたりから撮影した下界の雲海。 このあたりから徐々に調子が出て来て、 先行パーティーを全部ぬかす。 8合あたりから徐々に寒くなって来て、上着、手袋、パンツの順に9合で全部を着用。 やっぱりピッケルは素手で持つもんじゃないな。 俺は6合から上、ずっと LANGE のレース靴でキックステップで登ってるわけだが、 最後の方はスネの圧迫が痛くなってきた。 登ってる間は麻痺しているが、休憩すると感覚が復旧してしまい、 行動開始直後は辛い。 休憩毎にかしわもちを喰って、水飲んで、これは あらゆる持久系スポーツに共通のノウハウである。 行動中の心拍は130から150。 歩いているだけだが、荷物持って30度くらいの雪の斜面を歩くと、 標高3000mを超えるとそれだけの負荷になるということか。 運動量としては大した事なくても、空気が少ないと腹が減るのも早い気がする。 肉体の効率が悪化する感じだ。
9合(3400m)から上では、いくら息を吸っても馬力が出ないというか、 かといって吸わないと気が遠くなってぶったおれそうになったり頭が痛くなったりして、 なかなか思うに任せない。心拍がある程度以上は上がらず、 とにかく我慢できなくなって停止してしまう。 その間も息吸うのやめるといろいろ具合の悪い事が発生。 3呼吸くらいで残り行程を確認し、行動再開。呼吸のペースは右足を出した時に吸い、 あとはずっと吐いてる一歩一呼吸である。普通に行動できる最高の運動強度だ。 自転車は乗ってるが、歩いてないから、尻と腿の裏を繋いでるスジや、 スキー靴で標高差1000mキックステップしたせいで、 腿を持ち上げるスジが吊りそうだ。
火口神社直下の急斜面(右写真)は幅も狭くて楽しみにしてたんだが、 残念ながら今回は雪が少なくて滑べれない。 山頂付近の立派なエビのシッポはあいかわらずだ。 エビのシッポといっても50cmくらいあって、エビはエビでも伊勢エビくらいだ。
火口壁のフチは相変わらず風が強いし、あちこちから吹くので歩きにくい。 測候所からスキー装着して滑べるんですよってのを吉川さんに言うのを忘れたまま、 剣ヶ峰に登る。とにかくスキーしょってると風に煽られて、 空気が少なくて人格崩壊気味のところには心理的ストレスとなる。
いやー。久々にスキーしょって来ました。日本最高点(左写真)。 ここでケータイのメモリがなくなっちゃって、かといって圏外論外問題外なのでリモートに送信もできず、 こっから先、写真が無いんだよね。 もうレーダーのフラードームもなくなってた。 建物も無くなってて、 観測塔や若干の無線設備などが残っていた。
靄が濃くて、南アルプスなどは全く見えず。 下界も全然見えない。
左の写真は山頂に建ってる石碑。高さ1.5mくらいだっけか。 花崗岩でできてて、「日本最高峰 富士山」とかなんとか書いてある。 本当はけっこうな高さがあるんだけど、 今はすっかり雪に埋まっている。 右側が南斜面。左(石碑の向こう)は火口内壁である。
吉川さんと、水飲んで、補食喰って、スキー装着して滑降開始である。 直下の火口壁沿いは風と傾斜と硬い雪に 慣れないスキーでかなりのプレッシャーだ。
スキーという乗物の可能性を追求し、 人類の行動可能な範囲を拡大する挑戦の、これはショボい一環である。
意外な事に、俺らが下ろうと火口壁にスキーで貼り付いてたら、 下からやって来たのは、その勘違い風装備ペアだった。 勘違い野郎にしてはなかなかスルドいペースであり、 俺らの次に速かったということである。 まぁ、俺らは通常の装備に加えてスキー持ってこのスピードじゃけんどね。 でも、こいつら他の本格派ぽい奴等は全員置いて来たって事じゃから、 恰好はへんてこでも、実際には実力派なのかもしれない。
神社直下は一旦スキーを外し、また装着して滑降。 もうこのころには雪温もプラスになっていて、全然楽勝に普通に滑べれる。 ただ、空気が少なくて強烈にしんどい事を除けば、だが。
このあと5合めに着くまでに2度ほど雪が切れて歩かねばならなかった。11h50m5合め帰着。 6時間半の行動でした。 6時間半のわりにはしんどかった。
富士山スキーは南面(御殿場方面)であれば、 必要な装備や日数も最小限で済み、 普通のテクニックと十分な体力があれば、 楽しめるコースだと思う。
東面(スバルライン側)は厳しい。