八ヶ岳(2007/02/24-25)


もうアイスの季節もおしまいですね、 いや、まだ登ろうと思えば登れるわけですが、 次のスポーツが始まりますので。 たとえば山スキーとか、谷川岳の地獄の底から這上がるアルパインとか。

そこで、小川さんのクルマも直った事だし、 登り残したルートでも行きますか、ということでとりあえず八ヶ岳まりしてんへ。

2002年に登って以来のまりしてん、5年ぶり。 道が全然判りません。前回は下山途中で寄ったので、 歩く方向が違うというのもありますが、 間違って全然違う沢に入ってしまい、 胸までのラッセルで1時間くらいモガいた。 かなり疲れた。 なんで八ヶ岳でこんなラッセルしてるんだよ。 正しい沢にはけっこうちゃんとした踏み跡があった。

久々に見るマリシテンは、一見小さいし一見傾斜もたいしたことないのも同様で、 登るとかなりシビレるというのもこれまた同様だった。 この滝は八ヶ岳でもっとも氷が硬く脆い。 これより傾斜がきつい、あるいは長いルートはいくらでも登ったことがあるが、 一歩登る事の大変さでいえば、この滝は相当なものだ。 氷が硬いので、アイスピトンを回すのも固くて疲れる。 一回転ごとに「ピシピシパリパリ」 という音がする。 だから、特にリードするとなると大変だ。

右手でピトンを食いつかせ、左手で回してセットしロープをクリップするなど、 左右の手に偏って特定の疲労が蓄積しないように段取りしたが、 2/3くらい登ったところでアックステンションとなった。 この滝は基本的に、オーバーハングした崖に垂れたツララが寄り集まったものだ。 時おりツララが切れるようで横に大きな亀裂が入っていて、 リードしていると非常に気分がよくない。

トップロープをセットして遊ぶのに、意外と手間取った。 アセンダのキザミって凍ってツルツルになって、全く効かなくなったりするのな。

それから、裏からオーバーハングを回り込んで表に出たりして遊んだ。

「正面突破」などとほざいて正面のカンテ状に挑んだら、 大きく氷が割れて顔面直撃し、 出血と軽い脳シントウ。ここらへんが潮時か、と4時頃撤収。 クルマに戻る頃にはすっかり暗くなっていた。

翌日は、「たまには上まで抜けるのもいいかも」という事で ジョーゴ沢を硫黄岳山頂まで詰めた。 赤岳鉱泉に来るのは2003年2月以来だ。テン場だったところが 人工氷瀑になっている。 「ふーん」とかいって眺めつつ、休憩。

コガラやエナガがテント場の周りをとびまわっている。

滝壷が出てるF2をロープ無しで越え、乙女の滝を小川さんがリード、 上半部が風でへんな形になっていて悪そうだった。 本流大滝には取り付いているパーティーがあったので、 こちらは登らず ナイアガラをロープ無しで越え、 その上に8mくらいの細い垂直の氷柱があったので、 これを私がリードした。 一番細いところで太さ60cmくらい? よく見ると氷柱が地面のあたりで切れて下まで届いておらず、 アイスアックスを打ち込む振動がビヨヨーンと足に来る。 落ち口もキノコ氷で登りにくかった。

その上は硫黄岳山頂までずーっと雪壁。 雪にはウサギやカモシカの足跡がちらほら、 日差しと風でよく固まっており、歩きやすい。 イワヒバリが居る。 種類不明の、それより少し小さい鳥も何羽かみかけた。 硫黄岳山頂はあいかわらず風が強くて寒かった。 たまにはちゃんと山頂まで登るのもいいものだ。 硫黄岳からは、八ヶ岳南部の全てが間近に見えて、 なかなかの景色である。 沢から稜線に出ると、見晴らしが大きく変化するのも良いところです。

赤岳鉱泉に降りると、宿泊客が人工氷瀑から、トップロープで 変な姿勢でブラさがっていた。 わしにとって、氷登攀の本質とは 傾斜よりもむしろ氷の弱さと脆さ、 あるいは支点の設置を含むリスク克服ゲームである。 また、その魅力のなかでルートの美しさが占める割合は非常に高い。 やってみれば、これはこれで面白いのかも知れないが、 危険も美も無いこれは、全く動機が理解できない。

下山路ではキクイタダキの声。例によって姿は見えない。

クルマに戻ったのは3時過ぎ。天気が良くて顔がかなり日焼けした。 そのうえ、右の眼の下も氷で切れて、「正しい氷壁登攀者の顔」になった。

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