屋久島から帰って来たよ


3月17日よる 品川を出発して 19日に島に着いた. 宮之浦コスモで買いだし後, 村瀬チームと別れて, 特攻野郎 Aチームは俺とタケ シの二人.

19 永田歩道入口でテント泊. 曇時々晴れ. 後豪雨.

電車であまり寝れなかったので, 着いた時はかなり疲れていた. なんせ, ムーンライトながら(大垣人民列車の, デラックス版である)はタバコが凄くて目 が痛かった.

博多で食った屋台のラーメンはうまかった.

岡山の後楽園で昼寝したのも良かった.

コスモでは, 結局飴とパンくらいしか買わなかった. 俺は, 今回は食糧を 全部スパゲティにしたのだ. 味はレトルト. レトルトの味は東京でないと 色々手に入らないので, 食糧はほとんど東京で買って行った. しかし, とりあえず昼 飯として, 鰹のタタキを食った. うまかった. 電車ではろくなものを食っ てなかったので, 久しぶりに食うまともな食糧だった. コスモに入ったら, とりあえず魚屋をチェックである. なんと! 村瀬懸案のサバ刺しは, 既に存在した. でも, いきなり食って入院したら, もう森に入れないので, 今日はだめである.

村瀬たちはなんか, 豪勢な食事らしい. 俺は金が尽きたので, 鹿児島銀行 まで歩いて行き, 金を下ろして, それからみかん買って来た. 屋久島のみ かんはうまいのう.

村瀬チームが白谷林道へ出発した後, わしらもバスで永田へ移動. バスで は爆睡. 永田バス停から40分くらいで登山道の入口に着いた. 途中で「永田歩道は崖崩れのため通行不能」という看板を見かけた. 崖崩れしてるんなら, 尾根方向に巻いてヤブこげば良いや, と思い, 気に せず予定どおり行動する事にした. 例によって 屋久島は何処でも水が豊富でキャンプはらくちんだ. 寝るまで本を読む.

夜, たまに星も見えてたが, 突如激しい雨が降り出した. 朝まで降り続く. テントは床下から浸水した.

20 永田歩道で鹿の沢小屋. 豪雨. 後曇

豪雨の中をテントの撤収であり, 要するに, いきなり屋久島パワー全開と いうところである. テント撤収している間に, もう足はどっぷり濡れた. テントの重さも3倍(当社比)になり, 快調な滑り出しである.

永田歩道はいきなりの薮で始まった. でも, テープがあるので, 深刻な事 態にはならないのだ. この日は前半は非常に暖かかったので, 最初は Tシャ ツで行動していた. 地面にはヒルも居た.

行動し始めてからしばらくは, 鹿がすぐ近くに居た. ずっと鳴いていた. 1000mくらいから, 徐々に寒くなってきた. でかい木も出現し, 徐々に屋 久島度数が上がって来る.

どこへ行っても思うが, 屋久島のようなすさまじい森は, 日本中で見た 事がない. 南アルプスにも白神山地にも凄い森があるが, 屋久島の森と比 べると, 迫力とカオス度において太刀打ちできない. この森に居ると, どんなに天気が悪くても, ワクワクしてくる. だいたい, 尾根沿いの道なのに, なんで川が流れとんじゃ. まじで謎. さ すが屋久島である. 何がおこるかわからん.

なんせずっと森の中だし道も倒木でだいぶ変化している上に雨で全然見通 しもないので, タケシの時計の高度計だけが頼りである, というか, 要す るに何処に居るのか全然不明のまま7時間くらい歩いたら, 鹿の沢小屋に 着いた. 途中, 川を3回くらい渡った.

今日は, 行動中は誰にも会わなかった(except for タケシ). 小屋にも誰 も居なかった. 荷物ひろげて, ラーメン作ってたら, 永田岳から降りて来 たパーティーに会う. わしは, ヒルに足を食われた事がここで判明. ヒルはまだ靴の中に居た. けっこうむかついた.

今回, わしらが開発した新たな行動パターンは, 「とりあえず昼寝」であ る. 飯をいきなり食っても, どうせ夜中に腹が減るので, 着いたらとりあ えずお茶をわかして行動食を食い, それから昼寝して, 6時頃から飯を食 うのである. そうすれば, 8時頃に寝る事になるが, 腹一杯のまま寝るの で, 非常に具合が良い.

今日は, 全般的に屋久島パワー全開バリバリの一日だったといえよう. ちなみに, 昨日の崖崩れの看板であるが, どこも崖崩れなんかしてなかっ た. 嘘書くなよ.

夜は, 千一夜物語(マルドリュス版)の昨日の続きを読む.

21 小屋 -> 永田岳 -> 焼け野三差路. 村瀬チームに会う-> 新高塚小屋 -> 縄文杉 波ちゃんに会う. -> ウィルソン株 -> 新高塚小屋. 曇. 風つよし.

夜どおし雨が降ったりやんだりしていた. 朝飯を食って出発. 俺はスパゲ ティで, たけしはカレーうどんだ. だから, 朝起きてから, 1時間で出発 するのである. といっても, 寝過ごしたので出発は 7時半になった. 雨はやんでいた.

永田岳への道は荒れていた. ガスが濃くて, 一瞬ローソク岩みたいなもの が見えたが, 写真を撮る暇もなくガスがかかった. 風も強かった.

永田岳のてっぺんへは, ちょっと岩をのぼらないと行けないのである. なんとなくザックしょったまま登って, けっこうはまった. 山頂は風が強 かった. 硫黄岳のてっぺん見たいな感じで風が強かった. まっすぐ立てな いくらいだ. 気合いで写真を撮った.

宮の浦方面への道は若干判りにくかったが, 地図で何とかした. 天気はあ いかわらずのガス. 一瞬下の方が晴れた. 焼け野三差路から下って行った が, なかなか村瀬チームが来ないので, 若干心配になる. 平石の岩屋で出 会った時は, けっこう楽しかった. 集合写真を撮った. 上手は元気でトッ プをやっており, ノブはばてていた. なんと, 縄文杉からノブの携帯電 話でスガヌマに電話したら, 繋がったという. 「あー, もしもし, 今, 縄 文杉にいるんだけど」まじか.

別れてさらに下って行くと, 鹿が2頭現れた. 興味深そうにわしらの方を 見ている. 写真撮った. 昨日歩いていた永田歩道と違って, 道は自明だが 荒れていて歩きにくかった. 田んぼ状態の所も多いし.

新高塚小屋に着いた. 12時. 行動食を食って, お茶飲んで, 寝る場所を確保 して, 縄文杉, ウィルソン株その他を見に行く事にする.

初めて屋久島に来た時に泊まった 懐かしい高塚小屋を通って, 縄文杉に向かう. 整備したつもりか何か知ら んが, へんてこなあずまやみたいなものが立っている. 馬鹿じゃねえの? まじで.

この道はさすがに人が多い. 縄文杉で波ちゃんにあう. 自転車で白谷林道 終点まで行き, そこから宮之浦岳まで往復だそうだ. わしらはウィルソン まで下り, そこからまた登り返した. わしはうっかりウィルソンに着く前 にフィルムを使い切ってしまったので, 残念である.

今回は, 屋久島のために新たに導入した minolta X-700 に, 交換レンズ を 50mm/1.4 と 28mm/3.5 の 2本持って行った. 縄文杉では 28mmが大活 躍. 他にも風景とかで 28mmは活躍したが, 28mmはいまいち迫力の無い写 真になりがちなので, さて, 出来栄えはどうかな?

登り返すのはしんどかった. 新高塚小屋からウィルソンまで, 往復 3時間 だった. 小屋に着いたら大変な混雑だった. わしらの隣はオッサン2人に オバサン 3人の5人軍団. これが底抜けのボケナス共で, 奴らの話を聞い ているだけでおかしいやらムカツクやらで大変であった.

奴ら, 食事で, 飯炊いてんだが, これが強烈に飯を焦がして, わしらのほうまで 飯の焦げた匂いが充満して来たほどである. しかも食事に3時間かかっていた. ウンチク系と依怙地馬鹿系のおやじの2人は何とも言えない味を出し ており, 俺としては, 絶対, どんな些細な仕事も一緒にやりたくないタイ プ.

最強だったのは, 風呂の話題になった時である. 「エスキモーは, あれは 一生風呂に入んないらしいねえ」「それでも, じめじめしてないから, 臭 くないんだよ」(余計なお世話だって) <= 俺の心の中のつっこみ.

「そういえば, 鹿も一生風呂入んないけど, それなのにあのお尻は白いねえ」 「そうだねえ, なんでかねえ. 不思議だねえ」 俺は, 強烈なショックに撃たれて, 必死で寝たふりしていたのだが, 後で聞いたと ころ, たけしも同じ思いを味わっていたという.

最近の, わしの探検に於ける夜間生活は, 読書だ. 読書なんて, 探検でテ ントの中でしか, しなくなってしまった. 今回持って来たのは, マルドリュス訳が元になっている「千一夜」の 1巻と2巻, ボルヘスの 「El Aleph 」, ヨーゼフ・ロート 「聖なる酔っ払いの伝説」 の 4冊. この小 屋で千一夜の2巻を全部読んだ. 本は "ZipLock"に詰めとけば屋久島とい えども何の問題も無い. 小屋は, わしらが寝ていた所は, 若干雨漏りした.

22 新高塚小屋 -> 宮之浦岳 -> 花之江河(湿原) -> 湯泊歩道 -> データロ 岩屋でテント泊. 雪後晴れ

隣のクソッタレ軍団は, 朝4時に一斉に「ガバアアッッ」と起き上がり, 一斉に食事の支度を始めた. わしらは6時まで寝ていた.

それにも関わらず, 出発時刻はわしらとほぼ同じになった. 出発して 10 分くらいで抜いた. 段取りも遅いが行動も遅い, どうしょうもないダメ軍 団である.

歩きながら, ダメ軍団の話題でタケシと盛り上がった. タケシは, 軍団, 特に, そのオバサンにかなりむかついていた. 聞けば「タバコすうな」と 言われたらしい. 鹿のケツ心配してる場合かよ, おばさん.

今日も屋久島日和だな. 昨日より寒い. あいかわらず何にも見えない. しばらく登った所で樹氷を発見. どうも, かなり寒いらしい. 笹も凍り付いている. 2時間半で宮之浦岳山 頂. 気温 −10度で風ビュービュー. まわり真っ白け. 写真撮って, 10 分で出発する. 山頂で, 要らないだろうとは思ったが 一応持って来たシンサレートの手袋を遂に出した. 笹が凍っていて, かき分けて進むと非常に手が冷たかったのだ.

屋久島主稜線を初めて歩く. なんかやたらと幸せなところだった. もっぱ ら笹で, 巨石祈念物がごろごろしていて, 尾根ぞいなのに何故か沢が流れ ていて, 所々に ひん曲がったシャクナゲやら杉やらが生えている. 湿原もあった.

たまにある岩場が, かなり凍り付いているので, 村瀬たちが予定通り行 動できるかどうか, 2人で心配する. 黒味岳のあたりで晴れた. 山 中行動で初めて見る青空である. 花之江河 でゆっくり休憩し, 写真 も撮る. 後は湯泊歩道を下るだけ.

湯泊歩道は, またしてもマイナーな道なので, とても面白かった. なんせ, 人が通るはずの所に分厚い苔が生えているのだから, 要するに誰も通らな いらしいのである. 晴れているので小鳥が元気だ.

例によってでかい倒木をまたいだりくぐったりしながら, 13時にデー タロ岩屋に着く. 岩は何処にも無く, 平地があるだけだった. テント3つ 張れる. 水はすぐそこ. とても気持ちの良いテント場で, 水があるという 点で, 樹海 1番地を上回る. テントその他を干し, 昼寝した. オバサンが 居ないというのは, なんと幸せな事だろう!やっぱり山はテントだよ!小 屋で馬鹿オヤジなんかと一緒に泊まってられるかよ. つうか, まじでぶち こわし. これからは, 鹿の白いケツ見る度に, あのクソ軍団を思い出すの だろう. いまいましい事だ.

結局, この日も花之江河 以降誰にも会ってない.

夜も晴れていたので, 星の写真を撮った. ボルヘスの El Aleph を読んだ. この短篇は非常におもしろいやつばかりだ. でも, どっちかというと, 俺はマンディアルグが好きだな. キャンプで読むのは, こういう形而上学的な小説が良い.

23 データロ岩屋 -> 七五岳 -> 湯泊林道 -> 湯泊の公民館の広場でテント 泊. 曇

朝になると曇っていた. 俺はテントの入口を開けたまま寝ていたら, 朝に なったらかなり調子がおかしくなっていた. あとで風邪ひいたと判明.

だいぶ食糧が無くなって来た. 非常にゆっくりしていたので, 朝 9時に出 発. この辺は素晴らしい原生林だ. 道が沢を渡るところで 丸木一本橋がかかっているのだが, どうもほとんど人が通らないらしく, 橋の上には苔が繁茂して, 小さい木とかが生えて来て, 要するに屋久島的 状態になっている.

途中に七五岳という針峰があるので, それに登る. ヤブこぎになった. 屋久薮はまじで手ごわい. あれは, 時速 200mくらいだろう. 岩も登った. 山頂では, ガスで何だかよく判らなかった. 周りの原生林はすごかったが.

林道に出たのは 4時ころかな. それから 2時間半かけて, 林道を下った. まじでこれはしんどかった. 林道自体は, 最初はけっこうおもしろかった. ほとんど車が通らないらしく(そんなんばっかりじゃ), いきなりけっこう でかい杉とかが生えてるし, 退避帯なんか, 完全に森に侵略されている. 路肩はカズラの類が繁茂して, 人間の領域が消滅するのも間近である. 崖 崩れも酷く, 完全に通行不能の箇所がいくつもある.

鹿の群を見た. タケシは鹿の骨を拾った.

しかし, それにしてもしんどかった. 2人とも, 車が近付く幻聴を聞いた. 俺は, 迎えに来る物ならなんでも乗せて頂きます, という心境で, 「UFO が迎えに来ないかなあ. あの退避帯あたりに, 上空から」などと, 考えて いた. もう林道は嫌じゃ.

この日も湯泊に降りて来るまで誰にも会わなかった. 屋久島は, 縄文杉の 道以外は誰も居らん.

今回の山中行動は, タケシと俺の 2人だけでパーティーを組んだので, 行 動も非常に素早くて, 行程も人が居ない所を専ら選ぶことができたし, 完 全に予定通りに物事が進んだので, 非常に具合が良かった. 危険な事もトラブルも一切無く, 面白いことしか無かった. こういう探検 も珍しい.

湯泊の村には店が 1軒あって, そこで2人で「鍋セット」とビールを買い, 下山を祝う. 通りがかりの親切なおじさんに「公民館の横の広場にテント 張ると良い」と教わった. そこもけっこう良いテント場だった. ただし, 毛虫を除いては.

ビールうまかった. 鍋には蟹が含まれていた. 無論, 証拠写真も撮った.

24 村瀬チームと合流. レンタカーで観光. 猿にしがみつかれる. 曇り時々 雨

燃料を, 600ml持って行ったのだが, 物を乾かすのとかに景気良く使って たら, 朝にちょうど無くなった. 9時すぎに, ノブの携帯電話に電話する.

もう車は借りてあるらしく, 10時半ころ合流して, 大川の滝とか千尋の滝 とかを見に行った. 車はたくさんのれるワンボックスで村瀬が運転してく れた.

平内海中温泉に入る. あそこは非常に具合が良いです.

屋久杉ランドとかいうところに行った. 途中で猿が車にしがみつき, 取れ なくて困る. あとで地元の人に聞いたところ, 「縄張の外まで運べば取れ る」とのことである. 屋根に登った猿が, 急ブレーキかけたらハリウッド のアクション映画みたいにボンネットの方ま で飛んで行った.

楠川温泉で風呂入った後, 夜, 初めて村瀬チームと一緒に食事する. 楠川温泉懐かしいぜ. わしらは麺類とレトルトその他 インスタント食品しか食ってなかったので, 久しぶりにまともなものを食っ た. わしは鳥肉トマト煮を作った. 他に, たけしの豚汁, 石井さんの鮭, ノブのスパゲティサラダ. 豪華な食事だった.

結局, 村瀬たちは, 鹿の沢小屋で 2泊したということだ. 鹿の沢小屋から 宮之浦岳に往復して, 帰りは永田歩道を降りたのだそうだ. わしらが主稜 線を縦走した日はノブの足の具合が悪くて, 3人で行動していたそうな. 山頂で晴れたんだとさ.

25 自由行動, 俺は風邪ひく. 夜, サバを食う. 曇り

風邪ひいて, 昼間は寝ていた. 起きてから, ボルヘスを全部読んだ. 夕方復活して町にでかけた. 夜, 村瀬が買っ て来た鯖の刺身を食った. 鯖の刺身ですぜ!!

生で食えるのと食えないのがあるのだ. ゴマ鯖が生で食えるのだ. これを, 漁師が一本づりして, すぐに首を折って処理したものだけが, 生で食える のだ. 屋久島でないと食えない代物.

実は, タケシは屋久島で2回目の誕生日. 村瀬がでかいバースデーケーキ を買って来た. それでタケシの誕生日を祝う.

26 出発, また船で風呂入る. 鹿児島ラーメン食べる. 曇り

カメラの袋にモンベルのやつを使ったら, 非常に具合が良かった. ハイパ ロンで防水で, 口を巻き込んで止められ, 内側にフリースが張ってあって 衝撃もある程度吸収するのだ.

あと, Lowe の新しいザックも具合が良かった. あれにくらべりゃ millet は, まるで拷問だ.

鹿児島で食ったラーメンもうまかったが, 博多の屋台の方がうまかった. 帰りの電車の中で, ヨーゼフ・ロートを全部読んだ. なんつうか, さみし く悲しいけれど, ええ話でした.

28 早朝 東京着.

写真ができるのは4日らしいから, それから絵入りの紹介を書くかも.