2007年伊良湖岬(2007/10/10)


近所の公園

エナガ。一瞬たりともじっとしていない。 体の大きさはピンポン球くらいしかない。

コゲラ。背後の木からプチプチポツポツ というのが聞こえた。 左のカットを見ると判るが、ドングリに居る虫を探しているのだ。 虫の糞が付いているドングリをもっぱら突ついていた。

モズ(めす)

オスとよく鳴きながら一緒に行動していた。 争いというわけでもない感じ。

こちらは雄。雌に比べるとやや鮮やかな羽衣、特に はっきりした眼過線と畳んだ翼の初列風切りに出る、 黒地に白の斑点が識別点。

春はイカルがたくさん居たり、季節毎にけっこういろんな鳥がやってくる、 愉快なところだ。

伊良湖の渡り鳥

湾の入口に突き出した半島状の地形が 渡り鳥の進行方向と合致して伸びている場合、 しばしば渡り鳥がそこに集まる事が知られている。

世界的に有名なのは、スウェーデンのフォルスターボ(バルト海を渡る)、 北アメリカのケープメイ(デラウェア湾を渡る)、 ジブラルタル海峡などだ。 これらは背後に控える陸地も広大なので、 物凄い数の渡り鳥が集まって来るという。

日本にも、そういうところが幾つかあるが、なかでももっとも有名なのが 伊勢湾を渡るポイントとなっている、伊良湖岬だろう。 この岬には、繁殖を終えた渡り鳥が秋に集まって、天気の良い日に一斉に 渡って行くのだという。 なかでも、猛禽の渡り、特にサシバがまとまって見られるので有名だ。 猛禽の他にも、ツバメやアマツバメ、ヒヨドリやセキレイなどスズメ目の小鳥たちも ここに集まって渡って行くのである。 そして、それを狙う猛禽と、 たくさんの鳥見人たちも やはりシーズンになると集まって来るのである。

ツール・ド・沖縄への出場もとりやめ、 図鑑を暗記し、 観測場所を調べ、 宿は1ヵ月以上まえから予約するなど、 今年はこれに向けて万全の調整体制をとってきた。 とはいえ、 宿泊プランの調査や予約、列車の安い切符の調査購入、 おやつの準備などは、 全て妻がやったのであり、 わしは「伊良湖岬行こう行こう行こう」と言う以外、大して何もしてない。

10/8

出発。家を7時過ぎに出て、近鉄特急から伊勢湾フェリーを乗り継いで、 現地に昼まえに到着。 海鳥も見ながら行けるルートではあるが、 慣れぬ早起きが禍して、船ではほぼ完全に気絶であった。

船を降りるとさっそく、サシバ、オオタカなどが飛んでいる。 宿に入ると、折からの突風に乗って、 山並をかすめてハヤブサが我もの顔に飛び回っているのがロビーから見える。 ここは、伊良湖で鳥を見るならここしかない、 といわれる伊良湖ビューホテルなのである。 部屋は、そこの岬側の最上階なのである。 つまり、いちいち出歩かなくとも部屋から観察できるのである。

チェックインまで屋上で観察。

この日午前中は雨だったが午後には天候が回復した。 天候が回復したらすぐにハヤブサが出た。 だが、前線のためか風が強く、渡り鳥はあまり飛ばなかった。

夕食はバイキングで激食い。

10/9

日の出をみるために無理して起きたが、 今日の天候はいまひとつ。 レストランからもよく外が見えるので、 食後に漠然と外を見ていたら、 ハヤブサが山肌を吹き上がる強烈な上昇気流に乗って 全くはばたかずに小鳥を掴んで羽をむしっていた。

朝食後は屋上で観察。 突風と共に西から凄い雨が近付いて来るのが見える。 タイミングを見極めて部屋に避難。 そのまま気絶。

昼前に雨が上がったので起き出して 屋上に出てみるが、 ものすごい突風。 なんとなく、宿のシャトルバスで恋路ヶ浜に出てみる。 鳥を見ている人はほとんど居ない。 ミサゴとハヤブサが、突風をものともせずに飛んでいた。

いったい、サシバは飛ぶのか?

10/10

今日は最終日である。予報では、あまり天気は良くないようで、 起床時も雨が降っていた。 だが、朝食後には小ぶりになり、風もやんできた。 これは期待できるか?とチェックアウトを済ませて恋路ヶ浜に移動。 到着後、しばらくしてぽつぽつとサシバなど渡る猛禽が現れる。 他に、アマツバメとツバメが決然と100m前後の高度をとって渡って行った。 最終日になって、いよいよ来るのか?

昼頃までに、だいぶ日差しがでてきて、上昇気流が生まれたのであろう。 半島の森に宿をとっていたと思われる20羽ほどの個体群が、 断続的に高度100m以下で通りすぎる。 岬の突端で旋回し高度を稼ぎつつ西に向かって次々と出発してゆく。

昼過ぎには快晴になり、静岡あたりを出発したと思われる個体群が、 やってくる。 これは岬に来る頃には既に高度200m前後になっていて、 裸眼では頭上を通過するのを見付けるのすら至難だ。 双眼鏡でやっと見分けられるくらいの高度を、 30羽以上の群が一つ、二つと通りすぎてゆく。 一つが通りすぎたら次の群が山の端に現れる感じで、 双眼鏡を眼から離す暇が無く(私の視力でも裸眼では発見できない)、けっこう疲れる。

サシバに混じって、チゴハヤブサが時折やってくる。 4-5羽ほどみかけたように思う。 サシバよりもひとまわり小さく、ハヤブサとハリオアマツバメの 中間のような外観。 時折電撃的な空中運動でトンボを捕り、そのまま空中で食べつつ こちらは特に気流を気にするでもなく、 まっすぐ圧倒的な速度で鳥羽方面に飛び去るのであった。

サシバはこのあと、紀伊半島を渡って四国に入り、九州から 西南諸島をつなぎ、台湾を経由してフィリピンまで行くのだ。 チゴハヤブサに至っては、マレー半島を南下し、インド方面まで行くらしいが、 実際のところは良く判っていないのだという。 この先で彼等を待ち受ける旅の前途と幾多の困難を思い、 柄にもなく彼等の旅の無事を祈る私だった。

この岬から渡る鳥は猛禽だけではない。 小鳥も渡る。 夏鳥として日本にやってくる小鳥は多い。 猛禽なんて、襲って来る者もほとんど居ないし、 上昇気流で高度を稼いで、あとは滑空していけばいいわけで、 天気待ちなど難しい要素はあるものの、 小鳥に比べれば気楽である。 あるいは、ハヤブサ類の圧倒的速度と体力をもってすれば、 数十キロの海峡など無いのと同じだ。

だが、小鳥の海越えは勝負である。 海の上に出てしまえば、身を隠すものは何も無い。 圧倒的な速度と運動能力の差を埋めるものは、運と数だけだ。

岬の一番先端、伊良湖水道の中途にある 神島まで一番近い、まさにその地点で 我々は飛び出す小鳥の群を待ってみた。 とはいえ、まさかBBCの動物ドキュメンタリでもあるまいし、 そう都合よく待ってるところから飛び出すわけないよ。 「やっぱさっさと港まで行くかな」とか言った途端、 ヒヨドリの大群が背後の薮から飛び出した!

飛び出した群は、ザァっという羽音を残してすぐに薮に戻った。 そして少しずつ飛び出す距離は増えるものの、 何度も飛び出しては薮に戻るという行動を繰り返す。 やはり相当の決心が必要なのだろう。 やがて、まっすぐに向かいの島に向かって飛び出した。

群は、飛び出したらすぐに海面すれすれに高度を下げ、 離散集合をくりかえしつつ沖合いに向かって一目散に飛んで行く。 正面の太陽の日差しは強烈で、コーワの88mmでないとすぐ見分けられなくなる。 これが彼等の作戦だ。

ミズナギドリやカモメに混じり、波間に見える多数のケシ粒のようなものが ヒヨドリの群だ。

何故そのような作戦をとる必要があるのか? つまり後ろの山から見てる奴が居るということだ。 海面スレスレを飛べば多少発見されにくくなるし、 見付かっても上空からの急降下をある程度封じることができる。 誰が急降下してくるのかは、言うまでもあるまい。

船付き場からは、他にセキレイが渡るのも見られた。 こちらはヒヨドリに比べるとやけにサバサバしており、 4-5羽でも一切躊躇することなく元気に鳴きながら平然と渡って行く。 そして出発したらどんどん高度をとる。

秋の伊良湖岬とは、 あらゆる種類の渡り鳥が集中し、捕食と被食の終り無き相克が集約された、 稀に見る地点なのである。


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