ここまでできました。うっひー。
端っこの紐穴。ここはある程度仕上げてから組む必要があり、 通常の柄の工作の段取りのように、必要な穴をあけたらまず組み立てて、 鋼の形に合わせてどんどん削って行く、というのではここが工作できない。 組み立てるまえに、ここの形は仕上げておかねばならないのだ。 無論、左右が違う形になったりしたら憤死ものだ。
左右の柄材をぴったりと合わせた状態で形を作って行けば 左右対称に削る事ができる。 この工程の前に隠しピン穴をあけておけば、それを使ってぴったり合わせる事ができる。
精度よく仕上げることができるよう、 柄の工作ではこのように、全ての段取りを綿密に組んでおくのだ。
柄の詳細、ナイフ全景と、そして仮組みしたところ。
柄材が鍔と合うところは、柄を固定するボルト穴を柄材にあけてから、 徐々に鍔と合う面をヤスリで削って仕上げるという段取りである。 言うまでもないが、かなりめんどくさい。 角度が合うように鍔と合う面を削ってから、ピッタリ合わせた状態で、 ボルト穴をあければ良いように思えるが、 実は、その段取りでは隙間ができる。 理由は俺もよく把握していない。
見えるようにしても良かったかな、とも思えるが、とりあえず隠れピンとして、 ボルトの前後に一本ずつピンが打ってある。 このピン穴は、柄材と鍔の合わせ目が仕上ってからあける。
赤の薄いスペーサが一枚入っているが、この有無で隙間は当然変わってくる。 スペーサの厚みは0.3mmであり、これが無くなると0.1mm強の隙間があいてしまう。 スペーサ無しでぴったり仕上がっていると、当然、スペーサを入れたら 柄材はボルト穴と鍔の間に収まらない。 すなわち、工作は0.1mm以下の精度でやることになるが、 連日ヤスリでちまちまと作業していると0.1mmなんて、 非常に大雑把な寸法に思えてくるから不思議だ。
柄材は黒マイカルタ。 マイカルタは布を樹脂で固めたようなもんで、 強く滑べらず寸法も変わらず、実用ナイフの柄としてこれ以上のものは 無いとされている材料である。 俺はヘソまがりだから、そういわれると断固、使いたくなくなるわけだが、 今回は大人になったので使う事にした。
作業場全景。御覧のとおり、工作機械ぽいものは、 ベンチグラインダとボール盤しかない。 この作業台はあまり良くない。3000円だったので文句は言えないが。 天板がタテになったりヨコになったりするしょうもないギミックがあるんだ。 俺の長い工作歴でそんなキテレツな機能が欲しいと思った事はおろか、 妄想したことすら一度も無いよ。 天板なんてがっちり固定されてないと無意味だからな。 手元に溶接があったら、全部溶接してくっつけるところだよ。 そのうえで、木の板の上に厚さ5mmの鉄板を敷くと良いだろう。
この寸法の割りにそこそこ重いところは良い。 今の家も最後が登り坂なんで、こいつをかついで帰ってくるのはかなり大変だった。
歯の詰めものがポロリととれた。 しょうがないのでナイフを中断して歯医者に行った。
帰りに旗ノ台の「マロニヱ洋菓子店」でケーキ買って来た。 店もご主人も健在だった。 ここの「モンブラン」はうめぇぞ。 うちの近所に「ベルグフェルト」という有名な店があるんだが、 わしらはマロニヱのモンブランを知っているので、 ベルグフェルトのモンブランなんて食べる気になれないよ。
さーて最後に柄を削っております。ものすごい粉塵で、 マスクをしないと5分で肺が腐って死にます。指でつまんでいるのが、 防塵マスクのフィルタです。 これだけ食い止めてくれました。 これらを吸い込んだら、えらいめにあいます。 俺が学生の頃に作ったナイフで一本だけ、この手の樹脂複合素材のやつが ありますが、 削っているとさすがに調子がおかしくなりました。 で、どうしたかというとその時は水に濡らしたタオルを顔面に巻いて作業しました。
プラスチック用ヤスリの効果は絶大で、粉塵のサイズが大きいために、 飛び散る加減も少なく、グラインダのように気流も起きないので、 全てがおおむね作業地点直下に溜ります。
だいぶできました。左右対称、隙間も皆無です。 特別な機械も技術も不要。全ては段取りの勝利です。