すっぽ〜ん (2011/08/15)


SR-71

実に面白いというかよく考えて作ってありますねこの飛行機は。

そもそも、なんでこの飛行機だけが Mach3.2 出せたのか、というのが素朴な疑問ですが、 裏をかえせば他の飛行機の速度制限要素は何なのでしょうか? 自転車なら、空気抵抗と自分の運動能力の兼ね合いでスピードが決まります。 最大の運動能力を発揮したときに、それが全て空気抵抗として消費される速度が最大速度です。 おおむね自動車でもそうですね。 エンジン出力と空気抵抗が均衡して最大速度に達します。 飛行機でも、そうなのでしょうか?

http://www.mhi.co.jp/aero/introduction/story/pilot/chapter1.html この記事によると、一般に飛行機はスロットルをあけたままにしておくと、 壊れるまで加速していく、とあります。 つまりエンジンの推力あるいは空気抵抗は速度制限要因ではなく、 機体の強度が速度制限の要因というわけです。 もっと具体的に言えば、機体の材料が熱によって強度を失うからです。

これを回避して熱に耐える材料を使えば、もっとスピードを出せるようになるわけです。 機体にチタンを使う事でそれを実現したのが SR-71でした。 つまり、一般に航空機で使われているアルミ合金(ジュラルミン)は 温度が上がったり変形すると強度を失ってしまうわけですが、 SR-71は普通の航空機が熱で壊れてしまう速度域でも運用できるように、チタンを使ったわけです。

では SR-71のスピード制限Mach3.2はどこで決まっておるのでしょうか? やはりチタンといえども Mach 3.2 で強度を失ってしまうのでしょうか?

じつは、SR-71 の最高速度を決めているのはエンジンの空気取り入れ口です。 ここで、あの独特のとんがった円錐の出番です。 あれは一体何のためにあのように尖ってでっぱっておるのかというと、 それは、あの円錐で衝撃波が発生するわけです。 衝撃波の手前(エンジンから見て)では空気が圧縮され、流速が低下(つまりエンジンとの相対速度が減少)します。 衝撃波は波なので、この円錐を引っ込めると、円錐先端で発生した衝撃波は エンジンカウルの内側と円錐の間で何度も反射します。 Mach 3 ぐらいで飛んでる時に、円錐を引っ込める事でこの現象が起きます。 つまり取り入れる空気は何度も衝撃波をくぐることになるわけで、 そのたびに圧縮され流速は低下した状態でエンジンに入って来るわけです。

一応、下界ではターボジェットエンジンとして機能しますが、 SR-71が本領を発揮する領域では、取り入れる空気を圧縮するのは衝撃波であって、 圧縮ファンではないのです。

つまり、エンジンに入って来る空気はコーンとエンジンカウルの間の衝撃波で 十分に圧縮され流速も適当な速度に落ちているので、 当然、非常な高温になっているわけですね。 この高温に耐えられる材料が当時は無かったわけです。 もし、最近の良い材料を使ってこの部分を作り直せば、 Mach 6 ぐらいいけたんじゃないか、 と言われています。

ちなみにこの、衝撃波で圧縮された空気は大部分が、いちいちエンジンの燃焼室にまわったりせずに、 バイパス経路で直接アフタバーナに供給されました。 つまりターボジェットではなくラムジェットとして動作していたわけです。

ちなみにこのジェットエンジンの仕事率はどれくらいでしょうかね。 M 3.2 で飛んでる時に最大推力 150kN * 2 が出ているわけではないので、 先に、材料を考え直せば M 6 出るという話がありましたが、そのあたりが空気抵抗と均衡すると仮定すると Mach 6 は秒速 1838.5m で、それに 300kN をかけると 551.6 MW ですね。 あんまり比較にならないかもですが GT-Rの新型が 390kW ですから GT-Rの1400倍。 現役時はその、わずか1/8ほどの出力で敵機や4000発の対空ミサイルを全ての振り切って、 無事に帰還しました。

なんという偉大な航空機でしょう。もうこいつが飛んでない、というのはとても残念な事です。

2011/08/09

夜中になれば、窓をあけっぱなしにして扇風機を直撃させれば耐えられるレベルには気温が下がる。

金といっても貨幣ではなく物質、原子番号79の黄色い光りを反射する金属のほうです。

先日らい、社会全体が不安になるような事件事故が相次いでいますが、 こんなときに資産家の皆さんが資産を移すのが金です。 安全資産などと呼ばれています。

なぜ金は安全資産なのでしょうか?

金はその物理的あるいは化学的にユニークな性質から産業分野で様々な用途に重宝されており、 生産される金の10%が産業分野で消費されています。 残りの90%は単に貯めこむため、もしくは宝飾用途ということで 何か具体的に役に立つというよりはそれ自体が目的というわけです。

そこでもう一度最初の疑問に戻ってみましょう。 もし、たとえばタングステンとかイリジウム自体を貯めこむ事が目的、 という人が居たら、変ですよね。 これらの金属も非常に化学的に安定で容易には酸化されず、 しかも金よりも頑丈です(なでまわしてハァハァしても簡単に減ったりしません)。 また、金の技術的で具体的な用途が見出されたのはわりと最近になってからで、 それまではずっと金は金自体で価値があるものとされてきたわけで、 金の価値は細くて耐久性のある電線が作れるとか、そういうところには無いことは明らかです。

具体的に役に立つものは、 その事のせいで、 どうやら役に立つ状況から外れると途端に価値が無くなってしまうようです。 ずっしり重く、美しく、錆びないけれど何か役に立つわけでもない金属は、 抽象的な価値を担うシンボルにぴったりなのです。

人間にはフェティシズムというものが不可避的に備わっていて、 シンボル自体をそれが表現として担う対象と同一視しがちです。 たとえばスカートがめくれてパンツが見えると喜ぶ、という現象がこれです。 パンツは中身を暗示する記号でしかないわけですが、記号がいつしか下克上して本体の地位に 収まったりするわけです。 おそらく金本位制というのは最初のフェティシズムの一つなのでしょう。

記号だからいっておろそかにはできません。フェチの対象には魂が宿るのです。

科学ニュース

2011/08/13


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