故障, 水滴, 打ち上げ (2012/05/18)


故障と狙撃

故障に強いネットワーク, という話がある.

インターネットを相互に接続している, いわゆるルータと呼ばれるネットワークの構成要素は, 複数のネットワークを相互に接続して交通整理をする, という役割を持っている. たとえば, 社内の(あるいは家の)ネットワークと外部, という話でいうと, 家のネットワークとそれ以外, という区別があるわけで, その間を結んでいるのが, ブロードバンドルータ などと言われているルータである.

なぜルータというなまえがついているかというと, ルーティングするからルータなのである. ルーティングとは, 経路(ルート)制御のことで, ある特定のホスト(たとえばあなたがこの記事を読んでいる情報通信機器)と, この記事を提供しているサーバとの間の通信経路を作って維持する, という機能のことである.

ルータが相互に接続しているネットワークの数は, 概ね巾分布にしたがう. つまり, ものすごくたくさんのネットワークを繋いでいる少数のルータと, すこしのネットワークを繋いでいるたくさんのルータがある.

こういうつながり方をしているおかげで, インターネットは故障に強い. その理由は, たくさんのネットワークを繋いでいるルータどうしは相互に繋がっているからだ. 全員が互いに知り合いのグループでは, たまたま誰かが居なくても互いに連絡がつかなくなることは無い. つまりどれかがたまたま壊れたとしても, 壊れたのを迂回して向こうまで行く経路が残るのだ.

これは, 故障が相互接続数に無関係に, 機器にランダムにおきる, という前提があるからで, まぁ実際のところ故障は概ねランダムに起きるから, インターネットは故障に起因する障害に強いのだ. ランダムに機器が故障するかぎりは, 相当多数の機器が故障したとしても, ネットワークの相互接続性は障害されない.

うまく機能する冗長性の例である.

軍隊においても, 概ねこんなフォーメーションになっている. 小隊が三つで中隊になり, 中隊が三つで大隊, さらに連隊, 師団. 三つのうち一つが無くなっても大丈夫な構成であり, 損害を前提とした(つまり平時には不合理な)組織である. 三つのうち一つなくなっても, 残る二つでなんとかフォローし, 二つなくなっても, 一つは残って組織としてギリギリ機能する. これが機能するのは, 故障(損害)はおおむねランダムに発生するからである. 戦場では, 弾がどこから飛んでくるか判らない, とよく言われるそうだが(実際相当な被害が味方の同志討ちによる), つまりそれは損害がランダムに発生するという事にほかならない.

しかし, もし障害がランダムに発生しなかったらどうなるだろう? もっというと, もし障害が「狙って」発生する場合はどうなるだろう?

インターネットの場合は, たとえば高い相互接続性をもったノードを集中的に破壊する, という事である. 既に述べたとおり, そういうノードの数は少ない. 予想されるとおり, 少数のノードが破壊された時点で, ネットワークは連結でなくなってしまう. 実際に攻撃するまでもなく, シミュレーションですぐに確かめられる.

戦争においてこれに相当するのが狙撃である. 命令系統を破壊すれば, 組織を分断することができる. そうなればもはやそれは軍隊ではない. たんなる個人である. そしてそのために必要な弾の数はランダムな損害を発生させる場合に比較すると, ずっと少ない.

近年, 情報通信機器や特殊光学機器の活用(そしてそれに対応した銃の改良)により狙撃可能な時間帯, 気象条件, 距離は10年まえとは比較にならないほど拡大した. 距離が倍になれば, 狙撃の対象は4倍に増えるわけだが, 10年まえ500m前後だった狙撃可能距離が, 今や2000m以上になっているのだ. 他の戦術だって別に進化を止めているわけではないだろうが, 狙撃の重要性が桁で違ってきているのは事実だ.

なぜそんなに狙撃可能範囲が伸びたのか? 現代の狙撃手は, 携帯情報通信機器にインストールされた弾道アプリケーションで着弾修正量を知る. そのアプリケーションは, 目標までの距離(レーザーでミリ単位で判る), 現在位置と目標の位置(GPSなどを参照する), 気象(風, 気温, 湿度), のデータから修正量を計算するのだ. 目標までの距離は地球の自転に起因する弾着のズレが問題になるほどに伸びているし, 風はいうまでもなく, 気温と湿度は装薬の燃焼速度に影響を与える. 標高が高ければ空気が薄いので弾道は低伸する.

類似の状況は航空機による対地攻撃でもあるが, このように損害がランダムに起きるのではなく狙って起きる場合は, 冗長性が機能しない. だから, アメリカでは長距離狙撃時代に対応した組織論が研究されているはずだ.

なぜなら, こういったテクノロジーはすべてコモディティなので, 長距離狙撃はアメリカ軍だけが使える特権だと信じる事は全くばかげているからだ. GPSは誰だって使えるし, レーザーレンジファインダも民生品で手に入る. 探したことはないが, おそらく弾道アプリケーションだって app store だか何だか知りませんが, そういうところでダウンロードできるだろう. 狙える距離が伸びて喜ぶ民間人だって居る.

2012/05/16

雨あがり

やる気が出るリスト

効き目はいろいろだ.

超兄貴は, 金曜日だと思ったらまだ水曜だったりしたときに効く.ケネディの演説は難しい事をやらなきゃいけないときに効く. JB などソウル系のは, 事務仕事を淡々と素早く片付ける時に.

最近は Nirvana 聞きながら仕事してる事もある. 絶望は克服するよりも肯定してしまって共存したほうが都合が良いんじゃないか, と思うんだ.

俺は数学を仕事にしているが, 自分でこれが得意だと思った事は無いし, いまも絶望と深く結びついている部分が残っているから, 正直あんまり気分の良い仕事じゃないんだ. でも, 世の中から求められている事をやる, というのが人間の存在価値なわけですから, なんとかそういう感情と折り合いをつけなきゃならない.

だから, あーはーそーですよー どうせぼくはだめにんげんですよー というかんじで仕事をしていくのは, それなりに理にかなっている. こういう感情を抑圧するとろくな事にならないから, 小出しにしていく, というのは悪くないんじゃないか, と感じている.

2012/05/17

こどもの体調が悪くて保育園を休んでいるので, 全く何にも仕事が進まないが, 昨日は 射影幾何を回避してなんとか普通のユークリッド空間に埋め込んだので, まぁ今日はいいか. 的な. そんな毎日毎日進まへんがな.

夜中に起きて, 日本のロケットを見る. 毎回微妙に進歩していておもしろい. あっというまに赤道の向こうまで到達するところも, ぶっとんでる. もじどおりぶっとんでる. マッハ7でぶっとんでるわけだから.

とにかく無事に打ち上がってよかった. マイナス200度と3000度が隣り合わせでマッハ7出すんだから, あれが普通に飛んでるという事自体が奇跡なんだよ.


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