なかのさんからお借りしました. たいへんおもしろいです. 以下順不同でおもしろかったところ
けっこう日本の話も出てくるよ. いち早く銃を取り入れたのに, 鎖国してる間に捨てちゃった話と, 例外的に自然が豊かなので, 狩猟採集時代から定住してて, 世界最古の土器がある, って話がくりかえし出てくる.
多分, そんな話よりずっと重要なのは, 日本って世界で最初に農業が始まったような場所に匹敵する特殊な場所だった, という事ではないかと思ったよ.
木を切ってしまってもまた勝手に生えてくるのが普通だとみんな思ってますが, こういうところは世界中探しても, 案外ない. 耕地面積あたりの人口密度は最強に近いですが, それはつまり食料生産以外のことをやる人口が十分ある, という事だ. 日本には資源がない, という事をよく言われるけど, 国土のポテンシャルとしては, じつは世界最強の一角なんじゃないか. 日本は特異的に生物多様性を持った地点に選ばれているけど, そういうところだからこそ文明が発達したのだ.
日本は周囲が海だったから独立性を維持できたのではない. そういう島であっても, 独立性を維持できなかったところはいくらでもある. 日本に製鉄が伝わってしばらくしたら, 刀を輸出する側に廻った. この土地には, そういう力がある. 同じ事をしばらくしたらトランジスタでまたやった.
わしらはたまたまそういうところに住んでいるから, こういう健康で文化的な生活を享受出来ているのである. 他のところではどうなったか, っていうと, 一回木を伐ったらもう二度と生えてこないから, 一緒に製鉄文明も滅んじゃったのだ.
そう. 「たまたま」ですよ. この本の作者はよくこの言い回しを使う. 日本人がすごいのではなく, 日本という土地がすごい. わしらはたまたまそこに住んでいるのでこうなった.
島と大陸の距離も絶妙だった. あんまし離れてると, 何も伝わってこないから, それはそれでヤバい.
あと, うんこ製造装置はやっぱし具合悪いらしいので, 何か考えないとな. という気になった. 最近かなり忙しかったから, おかげで久々に 31.8パーセントルールを実践できたよ. というか 68.2 パーセントルールになってる気もするけど.
そういえば, アメリカに来たときには既に人は狩猟がうまかったので, アメリカの狼は人を襲わない(けどユーラシアの狼は襲う)って話もどっかで読んだな. 家畜に使える動物が生き残ったかどうかと, こいつは表裏一体なエピソードだ.
そういうわけで, この本は非常に面白かった. こういう面白いのは, カウフマンの複雑系の本以来だ.
本書出版以後の研究成果では, 天然痘は家畜ではなく齧歯類のウィルスを起源とする説が有力らしい.
Lance の告白とやらが話題だそうです. アホか, ちゅうねん.
レースのルールで決まったテストを全部パスした Lance を失格にするってことは, ここ10年ぐらいの UCI トップカテゴリの試合を全部ドブにすてる, って事だろ. それをせずに彼個人に問題を矮小化しても全く何も解決しない. 全くアホくさく付き合いきれない.
自転車レースに関しては, ドーピングは運営側の問題で, 選手の話じゃないんだよ. 連盟とか主催者が, ヨーロッパのローカルセンスで「命を賭けること, 危険自体に価値がある. そのためにはすべてを犠牲にするぜ. 暗黙の了解で.」みたいなキチガイ意識でいつまでもやってるからこうなる.
そもそも, ヘルメット義務化だけであんだけモメてる事自体が既に, もう圧倒的におかしいだろ. 危険もレースの一部, みたいな変な感傷に運営側がつけこんで, やるべきことをちゃんとやってこなかった, これはその当然の帰結だ.
俺は Lance はあんまし好きじゃないけど, あいつはとにかくすげぇ奴なんだよ. たとえクスリづけであっても, 断じて彼はインチキ野郎ではない. 彼のアタック, 作戦, ライディングテクニック, そして鮮やかなダマシはすべて本物なんだから, 彼の勝利だって本物なんだよ. 俺は彼の走りを忘れないぜ.
いま, ふと思ったんだけど, 結局権力争いなのかもしれないな. なんせ7連覇だ. そんな奴どこにも居ないから, ほっときゃそのうち何か自転車関係の要職につくのが自然だが, アメリカにおいしいところを持っていかれると困る人は多い, みたいなね. もしそうなら復活もあるかもしれない. いやきっと復活してくるだろう. 俺は Lance の死んだふりにはだまされないぞ. 理由は二つある, 一つめは, 既に一回だまされてる. 二つめは, 彼は本物だからだ.