一般に猛禽は他の鳥よりも飛翔力に優れており, それを生存の鍵としている場合も多い(たとえば風切り羽は一枚ずつ取り替え, 飛翔への影響が最小限になっている)が, その関係には例外もある. 飛んでいる最中は, アマツバメは全く安全でありあらゆる捕食の脅威から無縁である. つまり猛禽も全く歯が立たず, ほぼ万全の航空優勢である.
午後9時ころ, チョウゲンボウが, アマツバメと交替ででてくるコウモリを狙って出てきたんだと思うけど, アマツバメにむちゃくちゃにモビングされてた. チョウゲンボウはアマツバメに飛翔力で全く歯が立たないので, アマツバメは安全にモビングできる. モビングは, 相手によってはかなり危険な行為なのだ.
でも, もしかしたら, チョウゲンボウはアマツバメのねぐら入りの瞬間を狙うのかもしれない. アマツバメは朝, ねぐらを出たら夕方までずっと飛びつづけるわけだが, そのように極端に空中生活に適応した結果, 普通に地面に降りたり枝にとまったりできないのだ. 足の構造が, 壁にぶらさがるか, 地面を這うぐらいしかできない. Granada ではねぐらは屋根瓦の下にある隙間か Alhambra の壁の穴と決まっているので, そこに帰る以外の選択はとれない. これでは飛行コースがまったく自明だし, 普段飛んでいる速度で進入したら穴の中で激突してしまうので, 速度もかなり落とす必要がある. つまりその瞬間が全く無防備なのだ.
アマツバメのねぐら入り
そういえば Sierra Nevada では Black Redstart も見た. というか撮影した. オスだった. 宿に帰って画像と図鑑から同定. 和名はクロジョウビタキ. ヨーロッパ南部亜種は, ジョウビタキの, 胸と腹は黒くなってフンドシだけ赤が残ってるやつである. 行動は日本に来るジョウビタキとよく似ている.
ヨーロッパには, 日本に来るジョウビタキの代わりに本種が居るらしい. 元は山岳地に生息していたが, 戦争で荒廃した都市部が山のガレ場に見えたらしく, 都市部に進出してきたそうだ(出典は Wikipedia(en)). とすると, 俺がみたこいつは古い伝統に固執する頑固オヤジということか.
そういえば, 日本に来るジョウビタキの英名 daurian redstart の daurian とはダウール族もしくは彼らが住んでいるバイカル湖周辺の山がちな地方(Dauria)だそうだ. 人名かと思ってたわ.
Granadaの屋根は, このようにしばしば草が生えている. 屋上緑化である. だいたいの場合は菜の花が生えている. 勝手に生えているのであり, わざわざ生やしているわけではない(たぶん). 日本の屋根に草が勝手に生えることは少ないので, 目新しくおもしろい.
見ていると, やはり古い屋根には草が生えがちである.
日本との違いでいうと, まず, 瓦が素焼きである. つまり釉薬が無い. これでは瓦がすぐに風化しちゃうだろう. そこに草が生えるのだろうか.
しかし, 右の屋根は古い瓦で地衣類が繁茂しているにもかかわらず, あまり緑化されていないが, 左の屋根は, まだ新しい瓦にも関わらず, 既に草が生えている. この違いはどこにあるのだろうか?
そこで草が生える場所をよくみると, 瓦の波のうち谷部分に生えていることがわかる(画像左). 尾根部分には, よっぽど緑化が進まないかぎり生えない(画像中央奥).
瓦はすべて同じ形をしており, 空に対して凹になっている谷部分の上に, モルタルを盛って, 尾根部分の瓦をふいてある. このモルタルはあまり耐久性がなくて, すぐに崩れたり溶けたりする. 余談だが, 切妻部分のモルタルが落ちてしまうと, そこに空間ができて, それをアマツバメが巣に使うようになる.
どうやら屋上緑化は, 溶けたモルタルを土壌として草が生える, という仕組みで起きるようだ.
もし屋根の勾配が十分にあり, 溶けたモルタルが谷部分に残らなかったら, 屋上緑化は起きないはずである. そして実際それはそのとおりで, 屋根の勾配があれば, 瓦が古くなっても緑化が起きないのに対し, 屋根の勾配が緩い場合は, 真新しい瓦で, 瓦自体には全く地衣類が生えてないにも関わらず, 屋根には草が生えてくるのだ.
しかし Granada の人々は, そんな細かいことはいちいち気にしない. 今日も無数のアマツバメが圧倒的速力でとびまわっている.
なお, Granada ではこのように常にモルタルが溶けつづけているので, 常に建築の修復の仕事があり, あちこちでモルタルを製造する現場を見ることができる. 現場でちっこいミキサーに「あらよ」って感じで水と砂とセメントを突っ込んでぐるぐる回ってできあがりなので, 溶けてもしょうがないかな, という気もするが, Granada の人々はやはり, そんな細かいことはいちいち気にしない.
Alhambra の風呂棟の天井
幾何学的寄木細工の工房. モザイクのブロックを何種類か別だてに作成しておき, これをスライスして基板にはりつけていく.
いろいろとじつに興味深い. アレによって再帰的にデカいブロックを作成し, 非周期的なパターンを生成してみたい. そういえば, カルロス5世棟の Museo に5角形を使ったタイルばりのサンプルが置いてあって, そこですっかり刺さってしまった.
5角形を使った平面latticeは周期性を持たないがある規則性をもっていて, 数年前にこの構造をもつ物質の研究がノーベル賞(化学)を受賞したことがあったんだけど, やや数学的にトリッキーで R. Penrose によって近年再発見されたばかりである.
再発見というのは, かつてバグダードにやはり非常に鋭い建築家がいて, 同様の5角形を用いた非周期タイル張りを作っていた事がわかって, 2007年ころにScienceに掲載されていたので, Penrose は独立ではあっても最初にこれを思いついた人じゃなかったということなんですが.
床に切れ端がいっぱい落ちてるのを拾ってきた. テーブルで並べてるとそれなりに楽しいが, 部品が全然足りないので, それなりにイライラする.
Granada では有名なレストランらしい. Alhambra の公式解説書にも, Alhambra への経路の項で出てくる. それなりに高かった. 猫がレストランの一部かどうかは不明.
自然誌的ないろいろ. 3枚めは European Serin.