確率というもの 営業職を擁護する (2014/03/20)


確率というもの

ここしばらく, 確率論って普通の数学と何がどう違うんかなぁ, とずっと考えてたんよ. ずっとといっても, ずっとそればっかり考えてたわけじゃないけどね. そうしたら, ちょっと考えがまとまってきた.

確率論は普通に数学です. これは, 全くどこをどう切っても普通に数学.

けど, 統計は違いまっせ. アレは数学やおまへん. 全然違います. アレは物理です.

たとえばここに点が三つあるやん? ∴ ← これ.

これって, じつはある図形から三つだけ点を取ってきたんよ.

「 さて,元の図形は何やと思う?」 みたいな話してるんよ. 統計では.

そんなん数学で言わへんでしょ. 幾何学ではそんなことは問題にしない.

あげく, n角形のnについて一様分布を仮定し, 点がふえるたびにどの図形がいちばんソレっぽいか, みたいなのを計算してみる, なんて事は数学ではやらないよ.

実は, 現実に起こっているものを抽象化して, その数理構造としてのモデルを考えるというのは, 物理の仕事です. そして, そういう仕事のうち, 確率モデルを与えるのが統計です. だから統計学というのはほぼ, 物理の一分野ですな.

たしかに, 確率論が確率空間から有限個のサンプルが降ってくるというストーリーなのに対して, 統計では有限個のサンプルから確率空間へ遡る, というストーリーなので話の向きがそっくり逆向きだから, すごい関係ありそうに見えるし, 実際に関係はあるんだけど, それはストーリーとして登場人物が同じで時系列が逆向きだというだけで, 使う手口もできる事も, もう丸っきり違う.

特に, 使う手口, つまり固有の方法論ということだけど, これが違う, というのが決定的だ. 確率論と統計では discipline が違う. 一見似てるし無関係ではないけど. 漸近的にモデルつまり抽象的な数理構造に肉迫してゆくという方法論, この, discipline が物理のそれと同一といってもいい.

確率論が数学っぽくなく感じられるところでは, 説明や物語のなかで統計っぽい推論や操作が出てくるんよ. それで「数学にこんなん要らんやん, これ数学ちゃうでしょ」って思ってしまうんやけど, それは確かにそのとおりで, そこは数学とちがいます.

なぜ「ほんもののランダム」を物理現象から取り出す必要があるのか? というのもおもしろそうなテーマなので, 次はこれを考えてみるよ.

営業職を擁護する

営業って技術やってる人に人気無いです.

いわく「無茶な注文とってくる」. いわく「口からでまかせ」「勢いだけ」.

これはまず, 「カネ儲けは汚い」というドグマが背後にあるわけよ. カネを儲けるというのは, 10円のものを100円で売りつける事です, みたいな. 元手はタダみたいなもんをこんな値段で売りつけやがって, だまし討ちやろ, と思ってる.

そのうえ,「俺は客だぞ」みたいな頭おかしいジジイの相手をして, ジジイが要りもしない壷を, しかもありえない値段で売りつける. そういう汚い仕事. 営業職のイメージというとこんなところでしょうか.

いや, あんたがそう思うんやったら, 10円で仕入れて30円で売ってみたらええがな. 俺はそう思うわけよ. 100円で売ってる店は潰れて, あんたの店はさぞ繁盛するでしょう. やってみ?.

ほんまの営業というのは, 需要と供給をマッチさせる, 非常に創造的で, アホには絶対に勤まらん仕事です. 「俺は客だぞ」みたいな頭おかしいジジイの相手も, する必要は全く無いのです. なぜなら, 要りもせん奴に買ってもらう必要は全く無いから. その理由は, そんな事をしても, 価値を産まないから.

100円で買った客が, それを使って1000円のものを作る事ができるから, 客は「元とったわ. ええ買い物した」ということになるわけですよ. これが価値を産むということであり, 需要と供給を合致させる経済活動の本質だ. どこにも薄汚いところは無い, 誇るべき仕事だ. そのかわりそういうチャンスを見つけてモノにするのは, すべての創造的な仕事がそうであるように, 簡単ではない.

「おかねは汚い」みたいな躾ありますね. あれはとんでもない間違いで, 本当によくない. カネが汚いものなら, それを儲けるという行為だって恥ずべきものにならざるをえない.

金銭を卑しむ風潮は, 経済活動の本質を理解できん頭の悪い(けど, こんな屁理屈を考えつく程度には頭の良い)奴が, 金持ちを妬んででっちあげた, すっぱい葡萄の理屈だ. 非生産的で, まったくうんざりする. 自分の手に入らないものを貶めている暇があったら, 正面から問題に挑んで解決すべきだ.

だいたい, 技術なんか全く無い会社いくらでもあるけど, 営業の無い会社は存在しない事から, どっちが会社の本質なのか, 論理的かつ容易に帰結するのだが.


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