back from the heat cycle.
66と64.5に仕上がっています. 64.5 は今使ってるのと同じ硬さです. こっちは発注者にいきます. 俺が使うほうはちょっと実験としてこの硬さにしてみたよ.
とにかくこの, 柄材の造作が難しくはないんですがめんどくさいです. というのは, 固定ボルト一本の他に, 表からは見えないけどピンが前後2本ずつ合計4本隠れてるので, 固定ボルトをぬいてもピンと口金の間で支えて柄材は簡単には外れないし, とりつけるときも簡単にはつけられない.
糊で貼ってます. 接着剤はエポキシで耐水の90分硬化タイプです. もちろん室温では永遠に硬化しないので, 暖房つけて加熱します. ガスファンヒータの前に置いて, 2時間ほどで硬化しました.
懸案の口金ハンダづけ部分. まぁまぁうまくいってる.
木の柄は注文をくれた人のほうに行きます. プラッチック(マイカルタ)のは手元で俺が使います.
精度よく作るのは, 難しいというよりめんどくさいんですな. 大抵は段取りがいくつか増えるんで. ただし, この, 精度よく作れるための段取りを考えるのは, めんどくさくもあり, かつ, 難しいです.
前作との比較. 機能面でいうと刃の厚さが薄くなった. 鋼の厚さは0.2ミリの違いしかないが, まんなかへんから先はだいぶ薄い. 前作ではできるだけ厚さを残したが, いろいろ使い勝手の上で具合がよくなかったので, 普通の肉厚配分に戻した. あと, 刃の長さも5ミリほど詰めた. 前作の刃長92mmは Gerber の初代フォールディングハンターと同じだが, 木工などをやっていると, これは俺にはちと長いと感じた.
柄は単一の複雑な曲面ではなく, 片面4つの比較的単純な曲面の組み合わせである. そして, 4つの曲面のうち,三つが固定ボルト上で交差している. そうなるようにボルト位置を決めた. 一番でっぱってるところは摩擦でちびますが, そこがステンレスだと具合が良かろう, というのもあるし, シャレてるかな, と思ったんで. ボルト周辺の成形と研磨が面倒になることは予想できたが, ここまで面倒になるとは思わなかった. ちょっと形をいじくるたびに3面磨きなおしのめんどくささに嫌気がさして, どうせ俺が使うんだ, ということで大きな傷が残ったままだ.
握りのボリュームを十分に確保したところが, 4代めのもう一つのポイントだ. 事前に木材を削りながら前作で具合が悪いと思ったところを対応し, そこで出した寸法どおりに作業を進めた. 刃も柄も, 整形しているときは, 素手で立体物を削り出す時に感じる特異な全能感がある. 「ここはこうあるべきである」という理想的な解決が作業中に自分の手先と目玉に突然降臨し, その解決が質量を与えられて存在するようになるのである.
口金先端を斜めに加工するのは2代め斬鉄君から採用している段取り. 肉や果物を切ると, 刃の根元などに汚れがたまるが, これなら掃除が容易だ. 刃元に親指を添えて, 力をこめるときにも具合がよい. この先端平面が正確な平面でありカドがたれたり歪んだりしていない, というのは全体の美観上非常に重要だ. またこの部分は口金を刃にとりつけてからは作業できない.
峰は日本刀っぽく屋根状に加工してある. 機能上の意味は無く, 作ってる時に思いついただけで, 最初は丸めるつもりだった. これに合わせて柄の上面も屋根状になっているのだが, 機能上の意味は上下の識別がつきやすいというのも見苦しい言い訳で, やはりこの位置にカドがでっぱっているのは控えめに言っても違和感ある. もうやらないと思う.
口金を真鍮にしようと思ったのは, 自転車のベルの真鍮のやつを買ったときに, こりゃなんとも味わいのある, いい感じの材料だなぁ, と思ったのがきっかけだ. 真鍮はじつにいいね. 気に入ったよ. なんといっても加工がかんたんだよ. ステンレスも擦れればちびるくせに加工ばっかりむちゃくちゃに大変で, まったく間尺にあわないよ.
先端の裏刃は火花棒を削るなど, スクレイパー的に使うためのもの. 峰は庵峰にするので火花棒を削れるところが刃しかない. それも便利が悪かろうということで峰側先端を90度よりすこし小さい角でそれなりの鋭さにした. 刃先を峰側から削り込むと, もっとも力がかかる切っ先の強度が低下してよくないので,スクレイパー部分は上にでっぱる形状である. ちょっとした意匠上のアクセントになる事も期待している. あまり長いと指を峰に当てるときに具合が悪く, 短いとスクレイパーとして使いにくいので, この寸法を決めるのはけっこう苦労した.
鞘は, ノルディック式レザーシースにした. このデザインは非常にすぐれている. 縫い目が横にくるわけだが, これがリブとなって全体の剛性を向上させている. 刃がおさまるカイデックス(熱可塑性樹脂)のライナーが縫い込んであり, 刃はライナーで保護され, さびの心配も少なく収納時携帯時に刃先が鞘に当たることもない. 余計なものが一切ない最小構成である.
ナイフ製作を始めて以来, 鋼の変更は初めてだ. これまでずっと日本のメーカーの作った, jis 規格でいうところの skh51 を使っていた. skh51は切削などに使う特殊鋼で, 高温でも焼きが鈍らず高速切削可能なので一般に高速度鋼と呼ばれている鋼種のひとつだ(他にも用途に応じて様々な高速度鋼がある). 今回初めてアメリカの, しかも粉末冶金の鋼を使った. crucible 社の cpm m4 という鋼だ. 研いだ限りでは, かなりどうしょうもない研ぎにくさで, なんでもよく削れるキクヒデのホワイトアルミナの中砥の上でつるつる滑り, 砥石ばかりが削れる. シャプトンの仕上げ砥はよく乗るので, 中砥もシャプトンにすべきかもしれん. #1000 は評判も良いしな.
レバーペースト
作るの簡単なんですがね, もうこれがうまくて死ぬ.
材料はレアに焼いたレバーと, にんにく油とオリーブ油とごま油と酢と塩と砂糖. これをフードプロセッサでつぶして混ぜるだけです.
今週というか先月末というか, 渡り鳥の声をよくきいた. ジョウビタキ, ツグミ. 房総半島からの通りすがりかな.
花といえば桜.
納品分の鞘を作り直しました. ワックスかけるのに失敗してワヤになったので, やりなおしたのです. さすがに3本めになると段取りもこなれてきて, 綺麗に作ることができた.
今日は4代め斬鉄君の襲名披露ともいうべきデビュー戦だった. 鯛の3枚おろし.
よく切れるたし, 刃が欠けたりすることもまったくない, 優秀な刃である. 峰先の裏刃はウロコを落とすのに使えたのが意外な便利さだった.
柄は, どっちむけて握っても非常に使いやすい. 力を入れる作業ではどうかも見たかったのだが, 力を入れるまでもなく骨も簡単に切れてしまった.