雨ですね. はぁはぁはぁ.
綺麗に尖っている刃先がよく切れる, という事実の背後にある物理的な事情は厳密にいうと案外複雑で完全に解明するのは大変だけど, そういう事実自体は自明です.
そして, 綺麗に尖ってない刃先がダメというのもまた自明.
ならば綺麗に尖っていた刃先が失われる仕組みとは何であるか? という事が問題になる. これが判明しないことには対策のたてようもない.
不注意な, あるいは未熟な使い手が刃先を失うとき, よく起きるのが, 刃先を何か硬いものにぶつけたり, 横方向に強い力をかける事である. これで起きる事には次の二つがある. 一つ目は, 刃先の塑性変形であり, 横に曲がったり縦に潰れてしまう. もう一つは破壊で, 主に横方向にかかる力によって割れたり欠けたりする.
切るべきものを正しく切っていたとしても, 刃先は徐々に失われる. これは摩耗である. これまたその仕組みは完全にはわかっていないのだが, おおむね二つの仕組みがあると言われている. 一つは, ひっかき摩耗. 切削対象の中に時々含まれているやたらと硬い粒が, 刃先にあたったときにグリグリと削ってしまうのである. そんなバカな事があるかよ, と思うかもしれないがこれは本当で, 木材などを切ると, 刃先に無数の細かい傷がつく. 自然界には案外, 硬い粒がそこらじゅうに存在している. 石英すら手持ち刃物に使えそうなすべての鋼よりも硬いが, 植物には石英を外骨格(の一部)に利用するものも多い. それに, もっと硬い物質がいくらでもある. もう一つは凝着摩耗とよばれているもので, 切ってるものが刃先に一旦貼り付き, 剥がれる時に刃先の幾分かを持っていってしまうのである.
刃先の変形を頑張る性質の第一は, 硬さである. 硬さとは, 何か硬いものを押し付けたときに, あまり変形しないという性質なので, 刃先の変形しにくさそのものである. ところがよくしられているように, この性質と, 割れにくさ, 欠けにくさは両立しがたい. 難しい事ではあるが, しかし鋼の種類と熱処理次第で, 割れにくいのに硬い刃を作る事はできるし, 逆にヘボい鋼や失敗した熱処理では, 柔らかいくせにすぐ欠ける刃になってしまう. ここはメーカーの見識と腕の見せ所である.
ひっかき摩耗に対抗する, 現在知られているもっとも有効な手立ては, 自然界に存在する概ね一番硬い粒(酸化アルミニウム結晶)よりも硬くて細かい粒を鋼に混ぜておく事である. 端的にいってしまえば, それは炭化バナジウムという物質である. その硬さはホウ化チタンに匹敵し, これよりも明示的に硬いといえるのはダイヤモンドぐらいである. 現代の高い耐磨耗性をもった特殊鋼の, ひっかき摩耗耐性の大部分は, この物質がどれだけ含まれているかに依存している. もちろん, 硬さを増やす事でもある程度改善できるが自然界に存在する硬い粒子は, たいていの鋼よりもずっと硬いので, 残念ながら決め手にはならない.
くっつき摩耗への抵抗性は, 製造業では刃先のコーディングや, すべりやすい物質を混ぜる事で実現されている. 刃先と, 対象物の化学的な親和性が高いと, くっつき摩耗が起きてしまうし, できあがったものの精度も悪くなるので, ダイスやパンチでは非常に有効である. 窒化チタンその他様々な材料が様々な手法でコーティングされて使われている. コーティングは研ぐとなくなってしまうが, 手持ち刃物でも鋼の性質自体を調整して水や油を弾くような鋼は, 錆への対策にもなる. このアプローチをとった鋼を手持ち刃物に使ったという例は知らないので, 可能性はあるかもしれない.
他に, 刃先が高温になったときにも硬さを失わない性質なども重要なのだが, 手持ち刃物ではあまり関係無いので省略する.
ようするに, 非常に硬い炭化物を含有し, かつ, 破壊するまでに大きなエネルギーを吸収しつつ塑性変形する材料があれば, それが望ましいのである. 結晶粒の境目にあつまって破壊の原因になる不純物を極力排除する清浄な粉末冶金プロセスで作られた鋼が具合が良いのは, こういう事情である.
正しく使った時の刃先の性能がひっかき摩耗耐性で決まっており, これをバナジウム炭化物で改善できるということは, 結局, 鋼の素地に含まれている硬い粒が, 母材の先端についてるダイヤモンドチップみたいな感じで切り進んでいるわけであり, 素地はたいして何もしてないという事だ. そう言ってしまうと, なんだかロマンもクソもない時代でもある.
切れなくなった時の刃先を拡大してみると, 対策として何が必要なのかよくわかる. そういう分析を経ずに, 単に「切れなくなった」というだけでは何をどう改善すべきなのかさっぱり判らないのである.
大崎公園に久々に鳥を見に行った. まだまだ渡り鳥がたくさん飛んでいた. ツバメをいっぱい見た. アマツバメもみかけた.
コシアカツバメは, なんというか aerodynamic excellence というかなんというか, 実に惚れ惚れする美しさだ.
最後のカットは材木座上空でみかけたヒヨドリの大群.
ヒヨドリ以外は全部双眼鏡で撮影した.
今朝ジョウビタキが来た.
ヤマガラ