盗聴と選挙と民主主義


8/7 から 12 まで小笠原に行ってました. 計算機持って行ったので, 毎日記録をつけていた. html にしたのを こちら に公開しています. ところで, このほど盗聴法が成立したので, 多少人生やりにくくなったな.

盗聴法について, 幾つか誤解があるようなので, ここで言っておこう. 善良な一般市民として生活してれば, 聞かれてやましい内容の通信は無いから, マトモな市民には関係ない法律だという意見があるが, これは間違いだ. 善良な市民だって, 警察を含む, 知らねえ奴に聞かれたくないお話の一つや二つはあるものだ. 今は無いからと言って, 将来できないとも限らないしね. 法律に触れることだけが, 問題なんじゃない. たとえば, 好きな女がどうしたとかな, 知らねえ奴に聞かれたくない話くらい, 思い巡らせば, いくらでもあるだろ?

賛成してる奴は, そのうち「捜査の邪魔になるから, 家に鍵かけちゃイカン」と いう法律ができても賛成するんだろうよ. この法律に賛成してる奴は本当に馬鹿か, さもなくば知らない奴をだまそうとしてウソついてる邪悪な奴だから, どっちにしても信用できねえ. 自分がいつ盗聴される側にまわるかもわかんねえのに, ノンキな奴だと言えない こともないな. あ. それから, ISDN にしたら盗聴されにくいとか, そういうのもデマだから, 信用しないように. そんな奴, この記事読みに来るような人には居ないか. 現状では, 電話は盗聴を防げない. 電話でやるインターネットも同じ. でも, インターネットはプロトコルスタックの上の方を暗号化できるから, それで盗聴 を防ぐことはできる. やっぱりプロトコルの階層化は偉大な発明です. せっかくアプリケーションレイヤのデータを取り出してみたら twofish や PGP で, ぐちゃぐちゃだったりして, ザマミロ.

俺はそもそも盗聴法みたいなものができてしまう「民主主義」というのが嫌いで, 信用していない. それには2つの理由がある. 一つは, 人民に主権を与えるという理屈が, まやかしで嘘だ からだ. 人民に主権なんか無い. 今の世の中, 最初にあるのは暴力で, 次が金, そして情報だ. ところで, 人民に主権があるというのなら, 軍隊は人民のものか? じゃあ聞くが, 戦争始めるかどうか, 突撃するかどうか決めるのは人民か? それから, 予算は誰が決める? 自分が払う税金が何に使われるか決める権利が我々にあるか? 尻を拭く役にも立たねえ投票用紙で, アホとクズとカスから誰か選べと言われても, 全く路頭に迷いますよ. アホらしい.

もう一つの理由は, 人民なんか, 主権を持つに値しないからだ. 大抵のしょうもない用事なら人民がわいわい言っててもどうでもいい が, 状況がヤバくなると人民なんか糞の役にもたたないのだ. 民主主義には, 独裁とかなんかそういうロクでもないのに比べて良いところがあ る. それは, 集団の構成メンバーが持っている色んな意見を集めることができるという点だ. しかし, これが集団が困難な状況に直面したときに裏目に出るのである. 意見がまとまらなくなってしまうのだ. 特に, 集団にやる気のない奴や馬鹿が混 ざってる時に, この欠点は致命的になる. 状況が困難になるにつれて, 集団のレ ベルはダメなメンバーのそれに近付いて行く. もしいつも, そんなに人民が頼りになるんなら, 戦場で突撃するかどうかも兵隊が決めたら良いのだ. フェルマーの定理が合ってるかどうかも, 人民で決めたらどうだろう. わはは.

民主主義という理屈はいまいちよくわからないが, 今の日本では, 「軍隊みたいに誰か強権を持った奴が強制する体制ではないもの」くらいの認識 だろう. まあ, それはいい. しかし, 次に俺が気に入らないのは多数決だ. 投票という制度だ. まず, 投票は民主的だという信仰は, わりと一般的なようだが, 多数決と民主主義は直接には何の関係も無い. 民主主義というのは, いっぱい居る奴の意見をいろいろ採り入れることができる, という点に最大の特徴を持つはずだ(だから, 状況が困難になると, 意見を集約 できない). いろんな政党を作ることが出来ない国が民主主義と呼ぶに値しないのは, そのた めだ. たいていの "people's republic" は people のものでもなければ republic でもない, と誰かが言ってたな. そういやまた中国のアカが小数民族をいじめ てるよ. 死ね. おっと, 脱線したよ.

多数決というのは, ちらかっちまった状況を収める最後の手段なのだ. 本当は, みんなで考えて, 誰もが納得できるアイデアを出すのが筋なのだ. しかし, どうにもこうにもそれじゃあダメだけど何か決めないとしょうがないか ら, 数が少ない方には今回は涙を飲んでいただきましょう, というのが多数決だ. 裏を返せば, 納得できないんだったら殴り合いでもいいけど, 数はこっちが多 いんだよ, ということでもある. つまり, 話合いが決裂して数が多い方が勝つという状況は, 要するに 民主主義の終焉なのだ. 民主主義が大事だという立場からすれば, これは全然良いことじゃないのである.

だいたい, 多数決がそんなに信用できるんなら, 腹が痛くなったときに医者なん か行かずに多数決で病気を決めれば良い. 盲腸と癌とチフスの3択くらいで. フェルマーの定理の Weils の証明が正しいかどうか, 多数決で決めろよ(俺もくどいね).

俺は投票なんか一度も行ったことはない. だから, 今回の国会で盗聴法が通って も, 文句を言う資格は無い, ということを言う奴も居る. そりゃ違うね. つまり, 多数決で選んだ選択肢(ハエヌキのインチキ野郎共がかなりの割合で含 まれている)がこれまた多数決で役人の作った法案に投票する. 盗聴法が通るのは, 俺が投票に行かなかったからじゃない. この国が, こういう筋金入りのクソなシステムで動いているからである. ついでに, 俺には文句を言う資格も大いにある. 投票はしてないが, 税金は払ってるからな. 俺は鷹揚な貴族じゃないし, 今の政 府は patronage されるという器でもないから, 「金は出しても口は出さない」というわ けにはいくまいよ.

しかし, 投票信仰はけっこう深刻だから, こんなこと言っても解んない奴は居る だろうな. 「相手が解んないときは俺の説明が悪い」というのが俺の信念だが, それも場合 によりけりだ. 「たとえ棄権するとしても白票だけでも投ずるべきだ」とか言わ れた日には, 「汝は我が民にあらず. 最早慈悲無し」だ. それならそれで, 自分の信じるところに 基づいて, 勝手に投票に行け. そして, 白票でも黒豹でも入れたら良い. 俺には俺の考えがあるのだ.

要するに, 投票に基づく民主主義ってのは, 盗聴法ができちゃうくらい, 信用ならねえクソなシステムなんだよ. ナチスは動乱や革命じゃなく, 選挙で政権取ったんだぜ. 俺の信念は, せっかくの日曜に投票なんか行くくらいなら, 岩でも登ってる方が, いくらましかわからん, というものだ. 投票なんかしなくても政治参加はできる. だいたい, 体制が決めたやり方でしか政治に参加しないなんて, 貧しい発想である. そうだな. 政治家を選ぶ権利なんか要らんから, 代わりに納める税金が何に使われるかを決める権利 をくれ. これなら, オマワリにこづかれなくても政治に参加できるし, それに, 俺もちょっとは参加する気になるぜ. 俺の今年の税金は, 80% を宇宙開発に, 15% を軍事費に, 残り 5% を役人 がテキトーに使ってくれてよしとする. なーんて言うだけだったらタダだから, 政治ってのはほんとに虚しいよね. しぼむよ. マジで.