今シーズン最後の氷登攀(2006/02/25, 26)


戸台川

小川さんと行こうぜ、といってた荒川であいのブライダルベールだが、 凍ってないという話なので、 戸台川に転進した。

アプローチが林道なので、せっかく用意したからと 自転車乗って行った。 小川さんは昔のMTB。 俺は昔のロード。 冬山フル装備背負ってロードで堰堤工事用の林道走るってどうよ? いや、意外と走れるもんよ。 けっこう面白い。 パリ-ルーベ風味とも申しましょうか。 しかしさすがに登りがきついと押した。 あと、ガレてるところも乗れないけど。 なんとなく、 SPD ペダルに交換してきたんだけど、 チャリ靴はいて、山靴しょって乗るのはさすがに無理なので、 山靴で乗った。 ペダルが小さくて踏みにくかった。 それよりおっかないのが帰りの下りで、 足が滑べったらでかいザックしょってブっとび確定なので、 これはさすがにびびった。

結局自転車で20分ほどの距離を登った。 帰りは下りなので最高に気分良かったね。

登ったルートは初日に歌姫の宿(70mくらい)、 ピッチグレードは判らないが、印象はIVくらい。 調子は良かった。 dartの使い方も掴み、今回は足元のスリップはゼロ。 断固絶対墜ちない自信と余裕を持って登れた。 それと矛盾する話だが、 ブライダルベールがなくなったせいで、 ぶったるんでおり、取り付きでヘルメットを滑落させてしまった。 帰りに回収して帰ったけど。 久々のノーヘルリードだった。 まぁ落氷もなく、どうってことなかったけどさ。 翌日の日曜は雨だったので、 舞姫周辺を散歩して下山。 川もまるっきり融けているし、 氷は岩との間にすきまができてる状況で、 間もなく崩壊する段取り。 こりゃもうシーズン終了ってことじゃ。

登攀自体の調子は良かった。 しかし、靴の使い勝手がよく判っておらず、くつずれができた。 それをかばって歩いたら久々に足首がおかしくなった。

シカがたくさん居た。登山道の足跡もシカの方が人より多い。 道端に立派なツノのついたシカの頭骨が祭ってあった。 シカの踏みあとは歩きやすいので、 これがあるとアプローチのルートファインディングでは助かる。

ヤマガラ、ゴジュウカラは声のみ。 土曜朝、出発時に遠くからオオタカ。 ヒガラ、コガラ、エナガ、シジュウカラの混群。 アプローチの林道でカワガラス(2羽)。 帰りの林道でミソサザイ。

今年の冬山はこれにて終了。 次は山スキーの季節じゃよ。

アイスギア シャープニング

近藤氏の新品のアイスアックスだが、とてもよく刺さったそうだ。

それより、去年の年末に彼と南アルプスに行ったわけだが、 そんとき、彼は会の計画としては「アイスクライミング見学」って申告してたらしいんだ。 「見学」ってそれ…マジでうけるんですけど。

しかも、俺が書いたその山行の記事を、近藤氏の所属クラブの人が、 なんかの拍子に読んだらしくて、「これ、ウチのコンドーの事だよな」 ということになり、 彼が先日行った会の山行の宴会の席で、 「あれ、実は見学じゃなくて登ったろ」 とか言われたそうです。

まぁこれもデジタル化社会の弊害ってやつですかね。 全てはインターネットが原因ですね。

というのは前置きで、 ピックをどう研げばよく刺さるのか、というところは、 全国1000万アイスクライマーの永遠の課題です。 全員が全員とも、必ず一回で刺さる俺様の北辰のような切れ味を 求めてやまないのは言うまでもありません。 現在、氷雪登攀用具をどう研げばよいのか、という問題を扱った文書、 「アイスギア シャープニング HOWTO」 を執筆中ですが、 もう氷の季節が終っちゃったので、多分今年は完成しないと思います。

そこで、ピックの研ぎ方だけでも紹介しときましょう。

ピックの先端は横からみるとナナメ下向きの直線という形が多いと思います。 この直線のナナメ具合は一つのキモです。

つまり、インパクトの瞬間に、ピック先端のオデコの部分が当たったり、 直線全部がヒットしちゃったりすると、 硬い氷には全然刺さりません。 また、ダガーポジション(ヘッドを握ってピックを刺す持ち方)なんかじゃ それこそヤワい氷でも絶対に刺さりません。 まぁマス大山みたいなパンチ力があれば別ですが。

ここは、振った時に先端のみがヒットする角度に改めねばなりません。

次は、ピックの厚みと先端の角度です。

要するに、丸まったブ厚いピックじゃ必要な深さを刺した時に、 氷にかかる力が大きすぎて、割れちゃうって事ですよ。 スルドく薄いピックは簡単に奥まで刺さる。 しかし、薄けりゃいいかというと、そうでもない。 薄いピックは弱いのでな。

つまりこれを強度が落ちないような形状で実現すればよいのです。

上はピックを上からみたときの、先端から手元に向かって厚さがどう変化しているか、 を描いたものです。 先端の角度が同じでも、右の研ぎ方の方が抵抗なく奥まで刺さります。 理由は自明でしょう。 日本刀の刃の断面もそんな形をしていますね。 スルドく切れて、頑丈な形は、つまり、この一種類に収束するってわけです。 買って来たばかりのピックは左の形をしているので、 氷は割れるばっかりでちーとも刺さりません。

この、側面の肉の削り加減は峰の方とギザの方で 変えると良いようです。 ピックの峰(背中?)の方は、薄く削っちゃって、ギザの方は厚みをわりかし残しておくと、 ピックに対して横向きの力がかかったときの強度を維持して スルドい刺さりを実現可能です。 この、厚みを削り始めるところの加減は、 「リードするときにここから先くらいは氷に刺さっていて欲しい」 という感覚で判断したら良いと思います。 私の場合は3つめのギザです。 下から見た時に、ここまで刺さってれば安心して次の一手を出します。

先端の角度も、多少薄めにしとくと心理的に刺さりそうで良いのですが、 あまりやると、石にぶつけたときひどく潰れたり、 極端に硬い氷で刃先が欠けたりしますので、 売ってる状態からあまり薄くするのも考えもので、 結局60度から90度くらいが良いと思います。

でもね、結局使う人の技術ってのもけっこう重要なんです。 荷重したときに抜けないよう、 ピックはやや下向きに付いてますが、 その方向と打撃のモメントを一致させる事が重要で、 ただ漫然と振り回していても、アイスアックスはなかなかうまく刺さってくれません。 また、 どこに刺してもうまく刺さるわけではなく(俺様の北辰以外は)、 氷には、よく効く場所とただ割れる一方の場所があります。

だから、近藤氏のアックスがよく刺さったとすれば、それは俺の研ぎというよりは むしろ彼の力ということになると思います。

アイスギア レビュー

このほど Petzl Charlet の dart というクラムポンを買って来たわけだが、 湯川みたいなトコじゃなくてちゃんとリードするマルチピッチ(といっても たった2ピッチだけどな〜)の、 多少傾斜があるところで使ってみたので、 その感想をば。

よくないところから。 これは些細だが、ややひっかかって歩きにくい。 2列めの歯と3列めの歯にカエシがついてるせいである。 俺はアイゼン歩行がへたくそでよくズボンに穴をあけるのだが、 この製品は強烈にスルドい歯なので、そのうち脚にも穴をあけそうだ。 というかもったいないのでできるだけ氷がでてくるまで使いたくない。 結果、キックステップで行動できる限界ギリギリまで上り詰めてしまい、 装着に難儀した。 ケチもほどほどにしないと寿命を縮める事になる。

ビンディングはいまいち使い方が良く解らなかったが、 実戦で正しい使い方を叩き込まれることになった。 実は1Pめをリードするときに、 出だしのところでクランポンが外れてることに気づいた。

画像のように、ビンディングの引っ張りレバーを巻き込んで安全ストラップを締めて おけば、このレバーがぶらぶら遊ばなくなる。 これは非常に重要な事で、このレバーが遊んでいると登攀行動中に何かにひっかかったときに、 クランポンがはずれてしまうおそれがある。 いま取扱説明書をじっくり見ると、マンガでその趣旨が描いてあるが、 浮かれて見逃していたのである。 これ、アルパインにおけるdart使用上の超重要ポイント。

出歯の性能は非常に良く、簡単に刺さる。 いわば足で使う北辰。 また2列めの出歯の配置と角度も絶妙で、これが効くと片足でも 絶対に落ちない安心感がある。

ここまでは他の縦爪製品と同様であるが、 dartの特色は3列め以降の歯の配置と形状にある。 このため、出歯を蹴り込む動作以外に、 内エッヂでのスタンスへの立ち込みや捻りを伴う動作の自由度と 安定感に非常に優れている。

ただし、それらの性能を発揮させるような登攀となると、 ピッチグレードはV以上になると思う。 そこらへんのピッチから、真価を発揮する製品という事である。 特に、傾斜が強く、かつデリケートな氷柱や岩に張り付いた薄い氷で 際だった性能を発揮すると思う。


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